第二十三話 結婚する?
暗くなった頃、あかねは戻って来た。
「あかねさん、おかえりー」
「ただいまー」
「黒兎と話せた?」
「まあ、大体はね」
「当然と言えば当然なんだけど、全然変わってなかったよ」
「まあ、壺の中でずっと寝てたみたいだしね」
「あかねさん、お腹空いてる?」
「ええ、朝から何も食べて無いからペコペコかも」
「でも、何が食べれます?」
「うさぎと同じ?」
「どうか、この姿の時は人間と同じものでお願いします!」
切実にお願いするあかね。
「そうなんだ」
「じゃー、すぐに何か作るね」
台所に立つあやめ。
今日の献立を考える。
野菜の肉炒めでいいか、それにお味噌汁を付けるかなと、調理を始めるあやめ。
そして、ふと気になる。
「あかねさん」
「何?あやめちゃん」
「目的の黒兎は目覚めた訳なんだけど、これからどうするんですか?」
「先のことは考えてなかったんだよね」
「だから、黒兎を見に行った時にいなくて、つい、取り乱してしまって……」
「ごめんなさい」
「もう、それはいいんですけど、黒兎と一緒に妖も目覚めてるんですよね」
「そうみたいなんだけど、私にもよくわからないの」
「白面の豊穣神様が『目覚めるかもしれない』とおっしゃっていたから、そうなんだと思うけどね」
「そっかー」
「この間も和鰐ってのが出たし、確認したほうがいいよね」
「え、和鰐?」
「知ってる限りでは、2回出ましたよ」
「2回も!?」
「どっちも倒しましたが」
「私聞いてない」
「黒兎は結構抜けてるから、聞かれたことしか答えてないんじゃない?」
「そうかも」
「昔から大事なことは自分から言わなくてね……」
「まあ、再会出来たんだし良かったね」
「……ありがとう」
◇
「さあ、どうぞ」
「有り合わせでパッパッと作ったから、こんなもんで」
野菜の肉炒めと豆腐のお味噌汁、それにご飯。
「いただきます」
あかねは手を合わせて食べ始める。
「どうぞー」
口に入れて噛み締める。
「美味しーー!!」
そのまま掻き込む。
手が止まらない。
そして、全部食べ終わる。
「ごちそうさまでした……」
と言葉を発したと思うと。
「私、あやめちゃんと結婚する!」
「は?」
「もう、黒兎なんかどうでもいい!!」
「……えぇぇ」
「これだけ長く生きるとね」
「色気より食い気よ」
「もう、美味しいもの食べるくらいしか生き甲斐がないのよ」
「だから、あやめちゃん、結婚しよう!」
「はぁー……」
「女の子同士で結婚なんて、しーまーせーん」
「さっさと黒兎を連れて帰ってください」
「嫌よ」
「黒兎なんて、草を食べとけばいいのよ」
「……ひどい」
「でも、うさぎだから、それはそれでいい……のか……?」
「これだけ長い間、待ったんだから」
「もう、私の好きに生きてもいいのよ!」
「そこは同意するけど……あかねさんが壊れたよ……」
◇
「私、新聞配達があるから、もう寝ますね」
「あやめちゃん、修行僧みたいな生活ね」
「学校行きながら働くとなると、こうなってしまうんですよね」
「いい労働条件の場所って、あっても長期の募集って、あんまりないんですよね」
「あかねさん、あんまりないけど、適当にそこらの雑誌でも見ながら寝てくださいね」
「わかったー」
「電気スタンドを使わせてもらうね」
「あんまり現世の物を見る機会は少ないから見れるのは嬉しい」
◇
ジリリリ
カチリ
素早く目覚し時計を止める。
「あかねさんは起こさなかったかな……」
スースーと寝息を立てて寝ているあかね。
少し覗き見る。
やっぱり、お母さんにそっくりだなと思うあやめ。
軽く気合いを入れる。
「よしっ」
「ささっと終わらせて、あかねさんのご飯でも作りますかー」
作り置きのおにぎりを食べて新聞配達に出掛けるあやめ。
「行ってきます」
誰かが一緒にいるのもいいなと思うあやめであった。




