第二十話 白兎あかね
「ひっどーーーーいっ!」
「あんまりよ!」
「あんなに一緒だったのに!」
白うさぎは大層不満気だ。
「そんなこと言われても、お前など知らん」
「なんで、わからないのよ!」
話が進まないのであやめは聞いてみた。
「黒兎、本当に知らないの?」
「あゝ、全く心当たりが無い」
「黒兎もわからないと言ってるし、ところで、あなたはどなた?」
あやめに促され白うさぎは答えた。
「私は!あかね!」
「白兎あかね!」
「へ?」
黒兎は素っ頓狂な返事をした。
「だーかーらー」
「しーらーとーあーかーねーー!」
「は?」
「あなたの幼馴染のあかねよ!」
「……」
「本当にあかね?」
「そうよ!」
「……」
「色々と疑問はあるが……」
「なんで、うさぎに?」
「お前も呪いを受けたのか?」
「呪いなんて受けてないわよ」
「この姿は仮初めの姿というか何というか」
歯切れの悪いあかね。
「今はある御方のところで、神使として働いてるの」
◇
「あの、ところで、そこのあなた」
「そろそろ、この縛り上げられてるのはどうにか成りませんか?」
「……」
「普通にどうにもなりませんけど?」
「え?」
「……あかねさん?でいいですよね」
「はい……」
「あなた、わたしに何をしたのか、忘れたとは言わせませんよ?」
「あなたはわたしからしたら、ただの襲撃者です」
「……はい」
「あと、まだ、何の謝罪も受けてませんし」
「何なら、このまま調理しても?」
「……」
「その節はあなた様に大変なご無礼を働き、本当に申し訳ございませんでした」
「深く反省をいたしますので、なにとぞ、寛大なご判断を承りたく存じます……」
「誠に申し訳ございませんでした」
どうやら、本当に反省したようだ。
「今回は大目に見るけど次あったら……」
「魔力刀!」
魔力刀を呼び出してあかねに見せる。
「ハリセンではなく……」
「こっちを使うからね」
「ひぃっ!」
なんだかんだで、あやめは切れていた。
◇
あかねは吊るされた状態から、降ろされ拘束を解かれていた。
「お、降ろしてくれて、ありがとうございます……」
しおらしくなっていた。
「話を聞いてくれていたら、こんなことにはならなかったんだけどね」
「面目ない……」
「それでは、あかねさんが一番、状況を理解してそうなので聞きますね」
「まず一つ目。黒兎は、どうして封印されていたんですか?」
「それは、私が封印しました」
「えっ」
黒兎が驚きの声を上げる。
「私が戻った時には、黒兎は深手を負っていて、このままでは妖として消えてしまう状態でした」
「だから、傷が癒えるまでの時間を稼ぐために封印したんです」
「なるほど……」
「二つ目。あのお社は何です?」
「普段は見当たらないんですけど?」
「あのお社は、白兎一族に頼んで建ててもらいました」
「黒兎に掛けられた呪いは、あの妖が残したものです」
「かなり強力な妖なので、再び目覚めれば大きな被害が出ます」
「そして、あの妖が目覚める時、黒兎の呪いも活性化し、封印が解けると考えました」
「その監視も兼ねて、あのお社を建てたんです」
「普段見えないのは結界が張ってあるからです」
「中にいる白兎の者と、外から来た白兎。その二人が揃うことで中へ入れる仕組みになっています」
「つまり、中に黒兎がいれば、外から守り人である白兎が入れるようになっているんです」
「結界は私が張ったものなので、私は一人でも入れます」
「つまり、あの時、あなたが中にいたから、わたしも入れたってこと?」
「そ、そうかなー」
「つまり、わたしも関係者?」
(お母さんが守っていたお社って、あそこだったんだ……)
「あはは……」
あかねは笑って誤魔化した。
「あと最後に、神使って何です?」
「あの時、黒兎が消えかけているところへ、一柱の神様が現れました」
「妖を撃退した功績を認めてくださった」
「そして、このままでは黒兎は消えてしまうから、封印して傷を癒やしてはどうかと教えてくださいました」
「また、神使にならないかと声を掛けられたんです」
「ただ、黒兎の傷が癒えるにも、妖が再び目覚めるにも、とても長い時間が掛かります」
「その時を待つには、人の寿命では足りません」
「だから私は、もう一度黒兎に会うために、神使になることを選びました」
「さっき、この姿は仮初めの姿と言いましたが――」
「これが、本来の姿です」
そう言うと、あかねの体が淡い光に包まれた。
そして――




