第一話 黒うさぎとの出会い
小学生の時に両親が交通事故で他界した。
私は風見あやめ。
15歳。
現在、高校1年生だ。
両親の生命保険のおかげで、すぐ生活に困るわけじゃない。
でも、生活費は普通にかかる。
両親が死んだ頃には親戚が引き取るという話もあった。
でも、なんとなく嫌だった。
私に向けられる視線が、あまり好きじゃなかったからだ。
だから私は、一人でやることにした。
今住んでいるのは、フェアリーハイツ。
大家さんのご厚意で、月八千円で住まわせてもらっている。
朝と夕方の2回、新聞配達で生活費を稼いでいる。
そして、なんと私は魔法少女だ。
まあ、魔法少女と言っても、妖精の加護が宿ったジャージに着替えれるだけなんだけど、このジャージを着ると身体能力がちょっとだけ上がるので、すごく便利だ。
「もうすぐで夏休みか。将来に向けて、しっかりと貯金を増やさなきゃね!」
◇
夕方。
まだ日差しは強く、アスファルトからは熱気が立ち上っていた。
「……暑い」
夕方の新聞配達を終え、アパートへ戻る途中。
私は見慣れたはずの道で、不意に足を止める。
「あれ?」
「こんなところに、お社なんてあったっけ?」
毎日のように通っている道だ。
見落とすはずがない。
そこには、小さな鳥居が建ち、その両脇には狛犬ではなく、一対のうさぎが鎮座していた。
鳥居の奥には、長い年月を感じさせる古びた社。
決して大きくはないが、目を引く存在感がある。
そして、何故か不思議と奥が気になる。
こういう時は碌なことにならないんだろうけど、好奇心には勝てずに社に近づいていく。
鳥居を潜ったところで、一対のうさぎを見る。
「何だろう?作り物なのにやけにリアル」
精巧だな……。今にも動き出しそうだと思いながら、さらに奥へ進む。
社に近づくに伴い、次第に変な感覚を覚える。
「頭の中でピリピリする……」
言葉では説明できない違和感が、頭の奥に引っ掛かる。
「あれ?お社の扉が少し開いてる?」
あやめは扉の隙間から中を覗う。
「壺?蓋が開いてる?」
祀られていたのは、一つの壺。
蓋は御札で封じられていたようだ。
だが、その御札は破れ、蓋も少し開いていた。
「もしかして、中に何かいた?」
私は恐る恐る周囲を見渡した。
目に映る場所には何も居ない。
「でも、この辺りで妙な違和感があるんだけどなあ……」
その時だった。
頭の中にノイズが走る。
「ザーッ……ザ、ザザー……」
「……だ、誰か……」
「こ、声?」
でも、明らかに頭の中で。
そして、違和感は社の裏から感じる。
覗き込んで見ると
「黒い……うさぎ……?」
うさぎが倒れていた。
「息してるみたいだし生きてるよね」
「うーん、明らかに不自然。とりあえず連れて帰って専門家に聞いてみるか」
放っておくわけにもいかない。
私は倒れている黒うさぎを連れて帰ることにした。
◇
アパートへ連れて帰った。
このうさぎ……見た目と違って、めちゃくちゃ重い。
「何kgあるんだろ……」
ふと思った。
「そういえば、うさぎって食べられるんだよね」
少し考える。
「……でも、グロいのは無理」
しずくさんはまだ帰ってきていない。
話も聞けないし、どうしようかな。
しずくさんは、水森しずくさんと言って、このアパート『フェアリーハイツ』の大家さん。
副業?で妖精女王をしている人です。
「妖精界はつまらない」と言って人間界へ逃げ出してきた、素敵なお姉さんです。
実は、色々あって、今は私が名目上の現妖精女王ということになってるけど、実際の仕事は今でもしずくさん任せだ。
とにかく、困った時はいつも頼りになる人だ。
◇
「うさぎって、何食べるんだろう?」
「でも、このうさぎ、普通のうさぎとはたぶん違うよね……」
少し考えて、冷蔵庫を開ける。
「とりあえず、水と食べ物は……これでいいか」
私は寝かせた黒うさぎの横に、水を入れたボウルと、山盛りのピーマンを置いた。




