第十八話 白うさぎ
「黒兎をどこにやった!!!」
完全に不意打ちである。
それは、やしろの影から飛びかかって来た。
あやめは咄嗟に避ける。
「なに!?」
過ぎ去ったものを見る。
そこには、白いうさぎがいた。
毛が逆立って尋常ではない雰囲気。
しかも、しゃべるうさぎ。
ここであやめの危機管理が仕事をした。
「変身」
掛け声とともにジャージに着替える。
「あなたは何?」
「うるさい!」
「黒兎はどこ!」
「封印が解けたみたいだから来てみたら」
「黒兎がいない」
「あなたから黒兎の気配を感じる」
「黒兎をどこにやったの!」
「突然、衣装を変えるは人ならざるものの所業……」
「あなた妖ね」
「さあ、黒兎を出しなさい!」
矢継ぎ早にまくし立てる白うさぎ。
「ちょっと落ち着いて」
「話を聞いて……」
「うるさい!」
「あなたの話なんて聞かない!」
「黒兎の居場所を吐きなさい!」
聞く耳を持たない白うさぎ。
どうしたものかと考えるあやめ。
すると白うさぎが、
「どうやら教える気は無いようね」
「もう手段は選んでられない」
「もう力付くで吐かせるしかないわね!」
「お覚悟!」
と、また、突進してきた。
避けても避けても何度でも突っ込んでくる白うさぎ。
「仕方ないか……」
あやめはイメージした。
白うさぎを倒す武器を。
そして、
「発現!」
言葉を発すると、あやめの手に武器が現れた。
その名も、
「お仕置きハリセン!」
あやめはハリセンに魔力を込める。
すると、いい感じの大きさになる。
「あなた、なかなかやるわね!」
と言いながら、白うさぎはなおも攻撃を続ける。
「本当に勘弁して……」
そして、
「このっ、いい加減にしろ!」
バシンッ
ハリセンが白うさぎの額に綺麗に命中した。
「きゅー……」
白うさぎはその場で伸びた。
◇
「はーーっ」
「黒兎の関係者みたいだし」
「仕方ない……」
「連れて帰るか……」
「……」
「おっもっ!」
「このうさぎ共……」
「なんで、この姿でこの重さ……」
「ほんっとっ!おかしい!!」
「いったい、何キロあるのよ!!!」
◇
「あーーっ、疲れた……」
「黒兎ー、いるー?」
辺りを見渡すが黒兎はいなかった。
「関係者だと思って、持って帰ってきたけどいないのか……」
あやめはやっとのことで持ち帰った荷物を見ながら脱力した。
「仕方ない」
「こんな危険物は放置出来ない」
「たしか……」
あやめは以前にゆいと見た映画の中に、凶悪犯罪者は確かこんな感じだったなーと、記憶をもとに、
「まずは代わりにバスタオル」
「そして、巻き寿司の要領で簀巻きにして」
「あとはこれでいいか」
「洗濯物ロープ」
「これをこうして、あーして……と」
「転がって反撃されても面倒だし、吊っておこう」
「逃げられても困るしね」
「よしっ、これでいいか」
「なんということでしょう。」
匠の手によって——
あの、凶悪な白うさぎは、しっかり簀巻きにされ、その装いは、まるでみの虫のごとく。
もうこれで、すっかり安心ですね
「って、こんなことで満足してないで、黒兎探さなきゃ」
「あっ、しずくさんのほうが先かな?」
◇
「黒兎ー、戻ってる?」
「おう、いるぞ」
「よかった、いた」
「どうした?何かあったのか?」
「あったよ……訳のわからないことがね」
めずらしく疲れた顔をしているあやめ。
「しずくさん呼んでくるから、私の部屋で待ってて」
◇
ピンポーン
「しずくさーん」
「はーい」
「どうしたの?」
「ちょっと私もよくわからないので、私の部屋まで来てくれますか」
「わかったわ」
◇
部屋に戻ると黒兎の態度がおかしい。
「あやめ」
「ん?」
「これ、食うのか?」
「もしかして、俺を食うための練習か?」
「俺に不満があるなら直すから、ちょっと考え直してくれないか……」
真剣な顔して吊るされた白うさぎとわたしを交互に見ながら言った。
「え、そうなの?え?」
しずくさんは動揺している。
「もし、食べるならわたしも食べるから思い悩んだらダメよ……」
そして、何か覚悟を決めていた。




