第十七話 誰?
「さて、どうするか……」
項垂れる黒兎。
「神域で行けるところまで行く?」
「そうなるか……」
「裸でうろつけないしな」
「まあ、神域が解けたら張り直すよ」
「よろしく頼む」
そうして二人で歩き出すのであった。
◇
「ねぇ!黒兎」
「何だ?」
「こうして、冷静に見ると」
「見ると?」
「なんか、間抜けだね!」
「誰のせいだ!」
「そう言われても、裸の男の子が股間を手で隠してトボトボと歩いているんだよ?」
「笑わないだけマシだと思って」
「……」
「まあ、そうだな……」
「あやめ」
「ん、何?」
「あれだけ暴れたのに冷静だな」
「んーー、なんか、もう慣れた」
黒兎は再びがっくりと項垂れる。
そうこう会話をしているうちにフェアリーハイツに到着した。
◇
「神域から出なかったな」
「だねー」
「感覚なんだけど、たぶん、私を中心に神域が移動してるっぽい」
「なるほど」
「じゃー、神域を解くね」
「わかった」
「では」
「解!」
あやめが強く念じながら言葉を発すると神域は消え去った。
それと同時に、
ポンッ!
「あれ?」
「黒兎」
「何だ?」
「うさぎに戻ってるよ」
「なぬ?」
黒兎は自分の身体を見て安心したように言った。
「戻った……」
「戻ったねー」
「でも、それでいいの?」
「あゝ」
「今はこっちの方が便利だって気付いたしな」
「なら、いいけど」
◇
「あら、二人ともおかえりなさい」
「ただいまー」
「おう」
フェアリーハイツの庭で黒兎と話しているとしずくさんが出てきた。
「川原で色々と確認してきたんでしょ?」
「どうだった?」
「そうですねー」
「神楽は、『神域の舞』、『力の舞』、『守護の舞』、『豊穣の舞』、『浄化の舞』だったよ」
「それと、あかねさんが使ってたのと、たぶん、同じみたい」
「ただ、あかねさんが使ってたやつより効果が強いって黒兎が言ってた」
「そうなの?黒兎くん」
「あゝ」
「俺は神楽が専門では無いからな、確実とは言えないが、あかねが舞っていた舞と同じだと思う」
「そっかー」
「まぁ、あやめちゃんは元々かなりの魔力の持ち主だし、神聖属性だもんね」
「そういうことがあっても不思議ではないか」
「それに」
「それに?」
「渡した衣装を使うようになってから、さらに魔力が増えてるわよ」
「えっ!」
「あやめちゃんと波長が合っちゃったのかもね」
「あはははは」
笑って誤魔化すしずく。
◇
「あ、しずくさん」
「何?」
忘れてたとあやめ。
「黒兎の呪いが解けたよ」
「ほんと?」
「少しの間だったけど」
「神域内で、『浄化の舞』を使ったら解けたんだけど、神域消したら、また、うさぎに戻っちゃた」
「何でかしらね?」
「まぁ、呪いだしね」
「遅かれ早かれ解けたと思うわよ」
「そうなんですか?」
「だって、あやめちゃんは神聖属性だしね」
「近くにいるだけで邪を祓うのよ」
「あと、あやめちゃんの魔力が込められたピーマンを食べてるし」
「いずれ、解けたわよ」
「なるほど?」
「だから、この間、生活に支障が出るかもとか言ってたんですね」
「まぁ、そういうこと」
そうだったんだ……とか黒兎は小声でブツブツ言ってるけど放っておこう。
「でも、人にすぐ戻せる手段を手に入れたわね」
「そうですね」
「黒兎が希望すれば戻します」
◇
「今日は夕刊のシフトじゃないから買い物でも行こうかな」
「今からならタイムセールに間に合いそうだし」
あやめは近くのスーパーに買い物に出た。
そして帰り。
「また、お社があったりしてね」
あやめは黒兎と出会ったお社のあった通りになんとなく回り道して見ると……
「あるし!」
今日に限ってか、お社があった。
「とりあえず、覗いてみよう」
鳥居を潜り中に入るあやめ。
そして、社の前に行くと、
「黒兎をどこにやった!!!」
完全に不意打ちである。
それは、やしろの影から飛びかかって来た。




