第十五話 切ってはいけないもの
「とりあえず、神楽の確認は後にするね」
「おう、そうだな」
「神楽の効果があったら、検証にならないかもしれないしな」
「そういうこと」
「まずは、飛んでみるね」
「飛べるのか?」
「さあ?」
「飛べるらしいって、しずくさんが言ってたし」
では、と魔力を衣装へ流し込む。
「おおー、すんなり魔力が通る」
「でも、何層か膜がある感じかも」
「一番通りがいいのは、しずくさんの加護かな?」
「あと、すっごく薄いのがあるけど……これは私の加護?」
「他の膜は歴代妖精女王様の分かな。でも、全体的にはそれなりに魔力は通ってる感じがする」
「……」
「どうした?」
「いや、これからどうするのかなと?」
「……」
「とりあえず、飛べと念じてみるとかか?」
「そうだね……」
「やってみる」
「……………………」
長く無言になったかと思うと、
ぴょん。
ぴょん、ぴょん。
ぴょん、ぴょん、ぴょん。
その場で跳ねた。
「……」
タタタッ。
ぴょーーん。
助走を付けて、跳び上がる。
着地。
駆け出す。
タタタッ。
ぴょーーん。
そして、着地すると、その場で立ち尽くすあやめ。
「……」
無言になる。
「どうした? 飛ばないのか?」
「人間は空を飛べない」
「……」
「何度イメージしても、跳ねたりしても、飛ぶ感じが一切しない」
「でも、しずくがたぶん飛べるとか言ってたぞ?」
「きっと、それは飛べる人だから!」
「しずくさんは妖精だしっ」
「わたしは人間だから飛べないの!」
◇
「落ち着いたか?」
「まだ」
「でも、なんとなくだけど」
「飛べないけど、空に上がることは出来そうな気がしてきた」
「問題は着地かな」
「さっき、服に魔力を流したけど、たぶん、防御力がすごく上がった」
「ふむ、それで?」
「空に上がったあと、落ちた時の防御は完璧?」
「ふむ?」
「で、空に上がる方法だけど」
「風の魔法が使えるようになって、走る時の加速に後ろから風で押せたんだよ」
「ふむふむ」
「それとエアマットみたいなものを作れるから緩衝材的に使える」
「それで?」
「足の裏にエアマットみたいなものをイメージして」
「下から風で押し上げる感じかな」
「落ちないように支えて……と」
「こんなふうに!」
「よっ!」
ぴょーん
「おおっ!」
ザッ
「一瞬だけど跳ねれるね!」
「続けると飛べそうだな」
「でしょ!」
「じゃあ、こんな感じかな」
少し離れたところから助走する。
タタタッ
「よっ!」
ぴょーん
「ほっ!」
ぴょーん
「はっ!」
ぴょーん
「うわっ、ちょっと高い!」
「エアマット!」
ぽふっ
ドシャッ!
「おおっ!」
「ずいぶんと跳んだな!」
「へへーん」
「こんなもんです!」
「飛ぶのをあきらめて、跳ぶことを手に入れたよ!」
◇
「跳ぶのはこんなもんかな」
「そうだな」
「あとは慣れだろ」
「だねー」
「次はー」
「やっぱり、これかな」
「魔力刀!」
ブォン
「おおっ」
「いいでしょう!」
「おう、日本刀みたいで格好いいな!」
「でしょでしょ!」
「私の想像力も捨てたもんじゃないねー」
「で、それからどうするんだ?」
「この間はぶっつけ本番で斬りつけたから、同じことが出来るのかなって?」
「ふむ」
「で、どうやったんだ?」
「風で鋭い刃をイメージして、魔力刀に移して、魔力を込めて斬りつけただったかな?」
「ほおー」
「まあ、やってみる」
イメージ、イメージ、イメージ……
「よし!」
「風よ!」
フォオオォ!
「なんか風が舞ってる感じだな」
「うん」
「ここから魔力刀に魔力を込める」
ブォン!
「おおー、勢いが増した」
「だねー」
「そんで、ここから、さらに……」
「魔力を込めていくと……」
ブォォォォ……
「……おい?」
ブオオオオォォォ……
「おい……」
「これに魔力をさらに……」
「せーのーでーー!」
「えいっ」
ブオオオオォォォォンンンン!!!!!
「おい!」
周囲が震える。
「おまっ!!」
しかも激しく。
「ちょっ!!!」
容赦の欠片もなく振動を続ける。
「ま、まて、まて、まて、まてぃ!!!!」
「で、ここからーー」
魔力刀を上段に振りかぶってから……
「よいっしょっ!」
「っと!」
ブンッ!!!!!
ザシュ!!!!!!
「あっ」
「………………」
「おまえなぁ……」
「なんか、切れてはいけないものを切っちゃった?」
「どこのどいつが何もないところに切れ目を入れれるんだ……」
「その切れ目……」
「奥はなんか闇みたいなのが広がってるぞ……」
「あはははは!」
そして、
少し放っておくと勝手に切れ目は閉じた。




