第十三話 気合いと想像力
血を流し地面に転がる女性。
そして、その前には、
「トカゲもどき……」
あやめは自転車から降りる。
「大きい」
「怖い……」
倒れている女性を見る。
「でも、そうも言ってられないか」
「魔力刀!」
魔力刀を出すと同時に駆け出すあやめ。
「えええぃいいっ!」
トカゲもどきに斬りかかる。
ザシュ
が、僅かに傷が付いただけ。
「ガァァァッ!」
咆えるトカゲもどき。
そして、こちらを見据える。
怖い、怖い、怖い、怖い、怖い……
心のなかではパニック寸前。
黒兎はよくこんなのと戦えるなー
とは言っても、ここにはあやめしかいない。
自分で自分に喝を入れる。
「覚悟を決めろ、あやめ!」
「こっちだ!トカゲ!」
兎に角、距離を。
トカゲもどきを倒れてる人から遠ざけなきゃ。
睨みながら少しずつ後ろに下がる。
トカゲもどきはその行動に焦れたのか、突進してきた。
「ガァァァッ!」
ヒュッ
あやめは間一髪転がりながら避ける。
つくづく思う、この間はよくこんな怪物をよく倒せたな……と。
『使い方は工夫次第』
『気合いと想像力』
でしたっけ、ゆいちゃん!
「気合いを入れろ!あやめ!」
イメージしろ!
鋭くよく切れるヤイバを刀に!
「風よ!」
フォオオォ!
イメージした風を刀に纏わせる。
「魔力刀!」
掛け声と共に魔力刀に魔力を込める。
ブォン!
同時に駆け出すあやめ。
そして、風の魔法で加速する。
「くらえ!」
「ぶっつけ本番!」
さらに斬りつける寸前、めいっぱい魔力を込める。
「これが私の全力!!
風のヤイバアアァッ!!!」
ブオオオオォォォォンンン!!!!!
可視化するほどに魔力を帯びた風は、刀身を包み込む巨大な刃と化す。
上段より一気に振り下ろされた一撃は、トカゲもどきを一刀のもとに斬り裂いた。
グオオオォォォ……
トカゲもどきは唸り声と共に黒い影のようになり霞のように霧散していった。
「か、勝った……?」
あやめは安心したのか力が抜けへなへなと地面に座り込んだ。
◇
「あ、ヤバい」
「こんなことしてる場合じゃない」
あやめは立ち上がり、近くの民家に走って行く。
ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン
「はーい」
「どなた?」
「すいません!」
「あら、新聞配達の子ね、どうしたの?」
「はい」
「すぐそこで女の人が血だらけで倒れているんです!」
「救急車を呼んでもらえませんか!」
◇
「と、いうことが朝からあったんですよ」
「怪我人を放ってもおけないので、救急車が来るまでいましたし」
「警察にも事情聴取されるし」
「配達は少し遅れて、お小言を頂いたし」
「もう踏んだり蹴ったりですよ……」
しずくが訪ねて来たので、朝の顛末を説明するあやめ。
たまたま、黒兎もいたのでついでに説明する。
「お前、すごいな」
「あれを一人で倒したのか」
感心する黒兎。
だが、
「あやめちゃん」
ダメた、声がすでに座っている。
危機感を覚えるあやめは怒られてもいいモードに。
「あなた、なんで変身してないの!!!」
激おこである。
「昨日の今日でしょう!」
「なんのために、衣装を渡したと思ってるのよ!」
「あなたが心配だからでしょう!」
ごもっともである。
言い訳のしようがない。
「ごめんなさい!」
とりあえず謝っておこう。
ここは素直に謝る作戦である。
頭もしっかり深く下げる。
この世の処世術である。
「あーやーめーちーゃーん」
「とりあえず、謝っておこうとか思ってないわよね?」
ギクリ
「あやめちゃんは元が素直だから、顔に出るのよね」
「誤魔化せないわよ!」
「……」
「ちゃんと反省してる?」
「はい……」
「海より深く……」
「これ以上叱っても逆効果だろうし、この辺で収めるけど」
「しっかりと反省すること!」
「はい……」
それと、と続ける。
「魔法少女あやめちゃん、爆誕!なんでしょう?」
「ほんとにもう、ちゃんと変身してよね」
「な、なぜそれを……」
「昨日、部屋が光ったから」
「変身してるんだなと思ったら、その後に聞こえたのよ」
「部屋の外までね」
しずくはニヨニヨしながら言った。
「魔法少女って何だ?」
黒兎が追い討ちを掛ける。
あやめはがっくりと項垂れた。




