第十二話 風の加護
「なかなかよく切れそうね」
あやめの魔力刀を見てしずくが言う。
「あやめちゃんは神聖属性みたいね」
「……神聖属性」
「かなり珍しいわよ」
「私が今までに見たことがないくらいにはね」
「……」
ところでと切り返す。
「しずくさんは何属性なんですか?」
「私?私は聖属性ね」
「これも結構珍しいんだから」
「へえー」
感心するあやめ。
そこへ。
ピンポーン
ガチャ
「あやめー、いるー?」
「うわっ」
相変わらず、いきなり来て、いきなり開けて、驚くゆい。
「また、神域張ってるし!」
「ゆいちゃん、おかえりー」
「ゆいさん……」
普通に迎えるあやめ。呆れるしずく。
「あやめ、その服着てるんだ……」
「うん」
「しずくさんが散々愚痴って嫌がってた服……」
ゆいがしずくを見るとしずくは気まずそうに目を逸らした。
「まあいいや!」
「何やってるの?」
「本契約?」
「ああ、あやめちゃんは仮契約だったもんね」
「そうだったみたいですね」
「で、何属性だったの?」
「神聖属性だそうです」
「へえー」
「せっかく神域あるし、私も加護つける!」
「加護?」
「そうそう、私は若いから大した加護は付けれないけど、それでもなにかの役には立つでしょう!」
「じゃあ、加護の儀式やるから手出して」
あやめは右手を差し出す。
ゆいは手を握ると、
「私、木村ゆいは彼の者に加護を与える」
そして祝詞のような聞き取れない呪文を唱える。
やがて、柔らかい光があやめの身体を包み込む。
「…彼の者に幸あれ」
最後の一言とともに、光はゆっくりと収まった。
「優しい光だね」
「そうでしょう!ゆいちゃんは優しいのだ!」
「もっと褒め称えて!」
「調子に乗ってないで、ちゃんと説明しなさい」
しずくに怒られるゆい。
「はーい」
「私の加護は風の加護」
「背中を押して速く走ったり」
「敵との間に風を入れて間合いを空けたり出来るよ」
「カマイタチって知ってる?」
「そういう攻撃も慣れれば出来る」
「使い方は工夫次第」
「力自体は小さいけど、それはあくまでもきっかけ」
「本当の力の強さは結局は本人次第なんだよ」
「気合いと想像力」
「それで乗り切るといいよ」
「ゆいちゃん、ありがとう!」
◇
じゃあ、続き行くわよ
としずくさん。
「その衣装の説明ね」
「その衣装は代々の妖精女王があやめちゃんの年頃の時に着てた衣装で」
「長く着ることによって加護が付いた代物なの」
「簡単に言えば、あやめちゃんが着ているジャージの何倍も強いし、防御力もすごい服よ」
「あやめちゃんはジャージを長く使ってるからいきなりでも使えると思うけど」
「身体能力も何倍も強くなってるから徐々に加減を覚えてね」
「あと、神域の中なら飛べる」
「えっ、飛べるの!」
「うん」
「飛べるけど、神域内だけね」
「神域を張ってないなら、ただのジャージの強化版だから気をつけてね」
「そうなんだー」
「わかったー」
「魔法と加護と衣装についてはこんなものかな」
「妖精が直接加護をつける制限のこととかあるけど今はいいかな」
「時間があったら川原ででも神域を張って練習してね」
「はーい」
◇
皆が帰ってから一人、姿見を前に。
「変身!」
あやめの身体が光り衣装が変わる。
くるりと回りながら新しい衣装へ。
光が収まるとそこには白を基調としたフリルのミニドレスを纏ったあやめがいた。
そして、ポーズを決める。
「魔法少女あやめちゃん!爆誕!!」
あやめは満足そうな笑みを浮かべた。
◇
次の日の朝、新聞配達に出掛ける。
「ふぁー」
「ねむ……」
「昨日はちょっと興奮してあまり寝れなかったな」
もう少しで配達は終わるし、あとで川原に行って、変身を試してみようと考えながら移動していると、
「きゃあああーー!」
進行方向から悲鳴が聞こえる。
あやめは迷わず自転車で声のほうへ向かう。
急ぎ、曲がり角を曲がる。
視界に入る。
なにか影。
そこで見たものは、
血を流し地面に転がる女性。
そして、その前には、
「トカゲもどき……」




