第六十六章 百鬼夜行の文化祭 5
いつもありがとうございます!
今回からは、いつものコメディーに戻ります!
文化祭というお祭りを心から楽しむ面々をご覧下さい!
「ひ、一時間半待ちぃぃぃっ!?」
「列が校庭まで伸びてるってマジかよ!」
緊迫した裏の戦闘が完全に終結した旧校舎の表側では、神城透亜が設計した『立体駆動型・巨大迷宮お化け屋敷』が、文化祭史上最大の歴史的大ヒットを記録していた。
御子柴律が裏で制御する「自動で組み替わる壁」と、カリアやアザミが仕掛けた「五感を狂わせる香りと錯覚演出」、さらには仕留めた狂戦士の片付けを終えた陣内がリアルな生首(橘綜一郎が手配した特注品)を持って暗闇から現れる怪演を見せ、客の悲鳴と興奮は最高潮に達していた。
「晋…!次右…!」
「はいよ」
ジャージ姿の晋と、和装で前髪を上げた翡翠の「兄妹弟子コンビ」も、驚かし役としてその身体能力を駆使し、息の合った連携で客を綺麗に誘導しつつ、文化祭という「お祭り」を心から楽しんでいた。
一方その頃。
透亜の圧倒的なクオリティに対抗すべく、莫大な予算を投じて作られた九条麗華プロデュースの『ラグジュアリー・ゴシックお化け屋敷エリア』では――。
「おーっほっほ!! お皿が一枚、一枚足りませんわぁ〜〜〜っ!!」
不気味な洋風の井戸から、おどろおどろしいお岩さんの格好(ただし衣装は超高級シルク)で飛び出してきた九条麗華が、旧校舎に響き渡るような高飛車な高笑いを炸裂させていた。
「キャー……?」
「九条麗華様……!こ、こわーい…」
あまりの空気の読めなさと、恐怖が完全にログアウトしたハイクオリティな高笑いに、お化け屋敷を見に来ていたお客様たちはドン引きしてじりじりと距離を取っていく。
「……姉さん……壊滅的に幽霊に向いてないよ……」
迷路の様子を見に来ていた弟の聖夜が、あまりの惨状に深く、深くため息をつきながら頭を抱えて突っ込んだ。
その様子を、驚かしの合間にこっそり覗き見していた晋は、プルプルと肩を震わせる。
(ぶっ……!
麗華お嬢様、さすが、絶好調だな……!)
必死に口を覆い、腹筋を崩壊させながら笑いを堪える晋だった。
「……ふぅ。
これで全ルートの入場規制と、売上計算は完璧だ」
受付デスクで超高速で端末を叩き、人員配置の最適化をミリ秒で終わらせた透亜が、小さく息を吐く。
その隣では、橘、千歳、羽鳥の腹心たちが、一馬の件が終わったので街から呼んだ有名店のクレープを並べていた。
「神城。
役員会および警察上層部からの『一馬氏の身柄確保』の最終報告書が届いた」
綜一郎が静かに耳打ちする。
「……そう。
もうあの男のデータはデリートしたよ。
それより凪、このクレープの糖分は僕の疲労回復計算において――」
「はいはい、栄養学的計算に合致しない、って?
でも美味しいから食べなよ。
倒れるよ!」
凪に笑顔でスプーンを口元に突きつけられ、透亜は眉をひそめながらも大人しくクレープを口に運んだ。
「……うん、甘すぎる。
……けど、悪くないな」
裏の盤面を完全に制し、表の文化祭でも圧倒的な頂点に立つ。これ以上ない、完璧な勝利のリザルトだった。
一方その頃、お化け屋敷の受付裏で一息ついていた一ノ瀬雛子は、偶然ゴミ箱の近くに落ちていた一枚の用紙を拾い上げた。
「こ……これは……っ!」
一ノ瀬雛子お嬢様が、文化祭というお祭りに大人しく参加しているはずが無かった。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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