第六十四章 百鬼夜行の文化祭 3
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プロジェクトアイギスの刺客達を迎え撃つ透亜達!
お化け屋敷にはどんな仕掛けがあるのでしょうか?!
お化け屋敷ルートの最奥部――
旧校舎との境界線に足を踏み入れた『プロジェクト・アイギス』の四人の怪物たち。
一般客の騒ぎを避けるため、彼らは一馬の緻密な指示通り、人目のない非常用通路へと足を進めていた。
「……違和感」
白い杖を突く盲目の青年が、ピタリと足を止める。
「足元の振動、空気の流れる方向……壁の位置が、事前に入手した設計図とわずかに食い違っている」
「…ヒヒっ!どうでもいい。
壊せば一緒だぜぇ…!」
「命令は『神城透亜と翡翠の不審死』。
無駄な破壊は一馬様の意向に反する。
……このまま迂回路を通る」
無表情な双子が寸分違わぬ動きで指し示したのは、お化け屋敷のメインルートを避けるように伸びる、薄暗い一本の曲がり角だった。
熱源も、人の気配もない。
まさに刺客にとって完璧な隠密ルート――
四人がその曲がり角へと足を踏み入れ、完全に逃げ場のない「箱庭」の中央に到達した――
まさに、その瞬間だった。
ガシャン!! ガコンッ!!
前後の通路を遮断するように、旧校舎の重厚な防音壁と、透亜が設計した可動式の巨大迷路パネルが爆音と共に天井から滑り落ちた。
「なに……!?」
盲目の青年の五感が、周囲の空間構造が一瞬にして「書き換えられた」ことを感知する。
通路が格子状に遮断され、4人の刺客たちは分厚い仕切り壁によって、物理的に完全に分断された。
彼らが踏み込んだその通路は、すでに神城透亜の計算によって作り替えられた「巨大迷宮」の内部そのものだったのだ。
一馬からのインカム通信に、猛烈なノイズが走る。
『……ッ!? 応答しろ、何が起きた! 回線が切り離されて――』
一馬の焦燥混じりの声は、御子柴律の超高速ハッキングによって完全に遮断された。
巨大迷宮の暗闇に、スピーカーから透亜の透き通るような、しかし絶対零度の声が響き渡る。
『僕たちのチェス盤へようこそ、刺客の皆さん。
この巨大迷宮はね、ただ客を怖がらせるためのものじゃない。
自ら罠の奥へと進んでくれたお粗末な侵入者を一人ずつ隔離し、効率よくハメ殺すための“捕獲網”だ』
「くっ……!」
分断されたそれぞれの暗闇の部屋で、怪物たちが武器を構える。
(翡翠に武力で対抗する為に、絶対にアイギスを実戦投入してくると思ったよ、兄さん…!)
一馬の計画をあざ笑うように、透亜の完璧な計算によって用意された「最悪の天敵たち」が、すでに暗闇の中で待ち構えていた。
【エリアA:ハニトラの部屋】
盲目の青年 vs カリア & アザミ
遮断された狭い空間で、盲目の青年は白い杖を静かに構え、音と熱源に集中しようとした。
だが――
シュぅぅ……と甘く妖艶な香りが、仕込まれたダクトから部屋いっぱいに噴射される。
「なっ……匂い……!?」
「ふふ、熱と音だけに頼るなんて、ハニトラの基本ができていませんわねぇ」
暗闇から滑り出してきたのは、カリアとアザミ。
青年が感知しようとする「空気の微動」や「体温」は、カリアが撒き散らす特殊な毒香『香香』と、アザミが巧みに繰り出す残影の舞によって完全に撹乱された。
「僕たちの五感ジャック、じっくり味わっていきなよ」
音も熱も意味をなさない「幻惑の密室」。
刺客の研ぎ澄まされた感覚は、ただ自身を死へと追い込む刃へと変貌していった。
【エリアB:怪物の部屋】
狂戦士 vs 死に損ないの老狐・陣内
「ヒヒッ……壊す……!
分断されようが、壁ごと壊せば同じだぁぁっ!」
体を不自然に痙攣させ、狂気の笑みを浮かべる狂戦士。
その鉄球のような拳が可動壁を打ち破ろうとした瞬間、暗闇から酒の臭いをプンプンさせた影がヌッと現れた。
「壊すのが楽しい、だと?
……おいガキ、本物の『怪物の壊し合い』ってやつを教えてやろうか」
着物の隙間から無数の傷跡を覗かせ、氷のように冷たく視線をアイギスの狂戦士に向ける陣内。
「キャッハーー!
壊れて死ねぇぇっ!」
狂戦士が肉体を異常発達させて襲い掛かる。
だが、陣内は一歩も引かない。
体をわずか数ミリ傾けて拳をかわすと、錆びついた短刀の柄で狂戦士の関節を叩き折り、間髪入れずにえげつない暗殺術の連打を叩き込む。
どれだけ殴られても笑う狂戦士を、陣内は文字通り圧倒的な「暴力」と「ハメ殺しの間合い」で壁へとめり込ませていった。
【エリアC:兄妹弟子の部屋】
双子 vs 翡翠 & 晋
そして、一番広い中央区画に閉じ込められた無表情な双子。
二人は寸分違わぬ精密な連携で刃を抜き、影のように佇む二人組――
翡翠と晋へ向かって跳躍した。
「息はぴったりだけどさぁ……
機械みたいな連携じゃ、俺たちには勝てないよ?」
ジャージを着た晋が、軽やかな足さばきで双子の連撃を受け流す。
「晋、左!」
「はいよ」
翡翠と晋。
地獄の修行を共にした「兄妹弟子」の呼吸が、暗闇の中で完璧にシンクロする。
双子の「プログラムされた最適化」に対し、二人の連動は「互いを信じ切った本能の最適化」。
互いしかいなかった修行時代を過ごした二人にとって、双子の動きは『なんかむかつく』のだった。
サササササンッ!!
と闇を疾走した翡翠の連撃が、双子の一人の得物を正確に撃ち落とし、晋の強烈な回し蹴りがもう一人の体勢を完全に崩した。
「……っ!?」
顔は無表情なままだが、明らかに狼狽している双子。
透亜が構築した巨大迷宮の暗闇の中で、一馬が送り込んだ4人の怪物たちは、完全に逃げ場を失い、追い詰められていくのだった――!
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