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第六十三章 百鬼夜行の文化祭 2

いつもありがとうございます!


いよいよお話も大詰め、文化祭は全メンバーで立ち向かいます!


どうなるのでしょうか…?!

開門の合図とともに、静まり返っていた学園が一気に喧騒の渦へと叩き落とされた。


学年合同十クラスという前代未聞のスケールで挑む『巨大お化け屋敷』の前には、一般開門の直後から廊下を埋め尽くすほどの長蛇の列が出来上がっている。


他校の生徒や保護者、そしてこの学園に潜り込めるだけの身分を持った名家の人々が、期待に胸を膨らませて押し寄せていた。


そんな賑やかな喧騒を他所に、受付エリアの少し裏手では、ジャージ姿の翡翠と晋が来客を出迎えていた。


「師匠! 牡丹様! カリア姉、アザミ兄も、お久しぶりです」


「…お久しぶりです」


「よお、弟子達のがんばりを見に来てやったぜ。


……それにしても、乳くせえしガキが多すぎて吐き気がするな」


嬉々として出迎える翡翠と、嫌そうな顔で渋々挨拶をする晋の向かいにいるのは、出店で買った焼き鳥の串を片手に、ふらふらと頭を掻いている死に損ないの老狐・陣内だ。


そしてその隣には、一般参加の枠を利用して堂々と乗り込んできた牡丹組の面々が揃っていた。


師匠の牡丹自らが放つ圧倒的な風格と美貌、そしてカリアとアザミのハニトラ師弟が醸し出すただ者ではないオーラ。


変装しているつもりなのだろうが、隠しきれない修羅の気配と華やかさが融合し、周囲の一般生徒たちから「芸能人か何か!?」と猛烈な注目を集めてしまっている。


「相変わらず賑やかですね……」


透亜は手元の端末から目を離さないまま、うんざりとした様子で頭を押さえた。


「あら、冷たいですわね翡翠の主君様。


わざわざお呼び立ていただきましたから、可愛い翡翠と晋のお化け役を、特等席で見に来て差し上げましたのに」


「カリア姉、私はまだ驚かし役ではなく案内係です!」


「ふふ、どちらでも可愛いわよ」


牡丹が妖艶に微笑み、アザミが翡翠と晋の頭を優しく撫でようと手を伸ばす。


──その瞬間、透亜のミリ秒脳が猛烈な嫉妬の演算を開始し、周囲の温度が急激に下がるほどの冷たいオーラが放たれた。


アザミの手がピタリと止まり、晋は今のうち、とばかりに距離をとる。


カリアたちがニヤニヤと生温かい視線を透亜に送っている。


「……おい、坊ちゃん」


主従のいつものドタバタ劇を遮るように、それまで焼き鳥を食べていた陣内がふと鼻を鳴らした。


手元の串を近くのゴミ箱へ放り込み、濁った両眸を旧校舎エリアへと向ける。


「ドブネズミの臭いがするぞ。


それも、とびきり機械油の混ざった冷てえやつだ」


「ふん、あんな無粋なことをまだやろうとしているヤツがいるなんてねぇ」


陣内と牡丹の言葉とほぼ同時に、透亜のスマートフォンが短く振動した。


画面に表示されたのは、A組のメインサーバーを監視している御子柴律からの暗号通信。  


──『旧校舎エリアの最奥部、立ち入り禁止区域の境界に不審な熱源と異常周波数を感知。


晋さんのセンサーにも引っかかったみたい』


透亜の口元に、冷酷な絶対王者の笑みが浮かぶ。


「始まったか。


いいよ、そのまま泳がせておけ。


僕たちのチェス盤へようこそと、一馬兄さんに伝えてあげたいくらいだ」










     

一般生徒や客が行き交う賑やかなエリアから完全に隔離された、お化け屋敷ルートの最奥部──


旧校舎との境界にある薄暗い通路。


祭りの喧騒が遠くで鳴り響くその死角を突くように、気配を完全に消した『プロジェクト・アイギス』の四人の怪物が、闇の中から音もなく姿を現した。


お揃いの衣服を纏い、人形のように無表情なまま、完全にシンクロした動きで周囲を観察する双子の男の子二人。


白い杖をコツリと突きながらも、一切の迷いなく正確な足取りで進む盲目の優美な青年。  


そして、己の体をピクピクと不自然に震わせながら、早くすべてを壊したくて堪らないといった狂気の笑みを貼り付けている『破壊』の狂戦士。


四人の耳元に装着された通信インカムから、ノイズ混じりに冷徹な声が響く。


『ターゲット・神城透亜の排除、および専属護衛、翡翠の抹殺』


一馬の声だった。


いつもと変わらぬ冷静沈着なエリートの声。


だが、その指示はどこまでも非情で、かつ計算高い。


『……言うまでもないが、他の財閥の子息へ被害を出すな。


ここで派手な騒ぎを起こせば、神城の名に傷がつく。


アイギスの暗殺能力をもって喧騒に紛れさせ、完全なる“心不全”または“不慮の事故”として二人を処理しろ。


失敗は許されない。


プログラムの起動準備を』


「了解──」


盲目の青年が静かに応じる。


他の誰にも気づかれることなく、標的の二人だけを確実に闇へと葬り去るために。  


四人の怪物がそれぞれの異常な能力を解放し、完全なる隠密の殺意を孕んで、お化け屋敷の巨大な闇へと侵入を開始した。


最後までお読みいただきありがとうございました。


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