第五十三章 学生の仕事はお勉強 前編
いつもありがとうございます!
今回はみんなでテスト勉強!
誰の家で行うのか?
お楽しみいただけましたら幸いです。
「ハイちゅうもーく!
体育祭の次は――
豪華絢爛! ハロウィンパーティーを開催しまーす!」
放課後のサロンに、一ノ瀬雛子の突き抜けた高音ボイスが響き渡った。
バン、と勢いよく机を叩き、瞳をキラキラと輝かせる雛子。
体育祭の熱気がまだ冷めやらぬ学園内で、彼女の脳内はすでに次の楽しいイベントへとシフトしているらしい。
しかし、その夢は一瞬で現実の冷徹な壁にぶち当たることになる。
腕を組んでソファーに深く腰掛けていた神城透亜が、切れ長の目をミリ単位も動かさずにピシャリと言い放った。
「……その前に定期テストだ。
赤点を取れば文化祭の準備期間に補習が組まれる。
パーティーなど論外だ」
「ハイそう!
そうなのぉー! テストなの!
でもね神城、後に楽しみがないと頑張れないのが人間ってもんじゃない!?」
「僕に人間の定義を語るな」
「パーティーのために、みんなで赤点回避だよー!」
全く悪びれない雛子の謎理論と鶴の一声により、その場にいた全員強制参加の「合同勉強会」が秒で決定した。
その決定の裏で、一人だけ
(絶対に嫌ですわ!!)
と心の中で絶叫していた人物がいた。
体育祭での失恋以来、どんよりとしたオーラを纏っていた九条麗華である。
(な、なぜ私が、よりによって透亜様のいる空間で……それも、みっともなく勉強で頭を抱える姿など晒さねばなりませんの!?)
失恋の痛手から、できる限り透亜との接触を避けたかった麗華。
しかし、彼女の抵抗は一瞬で無に帰した。
遠くJ組から、
「麗華様も絶対ね!」
と雛子に物理的に両脇を抱えられて連行され、さらに背後からは専属執事の晋に
「お嬢様、赤点を取って補習にでもなれば、九条家の名が泣きます」(面白そうだからついていこう)
と優雅に耳打ちされ、退路を完全に断たれたのだ。
何より、
(透亜様に『失恋のショックで学業まで放棄したか』などと見下されることだけは、地球が滅びても御免被りますわ……!)
という九条家としての苛烈なプライドが、彼女の背筋を無理やり直立させていた。
問題は、その会場をどこにするかだった。
「神城家、あるいは千歳家はどうだ?」
橘綜一郎が提案するが、透亜は即座に眉をひそめて却下した。
「神城の監視(お偉いさん方への情報漏洩リスク)と、僕の精神衛生上の観点から不可だ」
「じゃあ、御子柴の家は?」
雛子と凪が期待の視線を向けるが、律の常に無表情で底知れない雰囲気を思い出し、「なんか改造されそうで怖い……」と二人で身震いして却下。
律は反論することもなく、無言でパチリと首を傾げるだけだった。
「なら、うちに来るか? 歓迎するぞ」
綜一郎が手を挙げたが、これも透亜の冷淡な一言に沈む。
「お前のところは下に兄弟が多すぎて、勉強にならないだろ」
「私の家は……」
雛子が言いかけるが、「誘惑(ゲームや娯楽)が多すぎる」という満場一致の空気により秒で却下。
「九条家は?」
という声も、神城家と同じく「政治・財界の監視の目がうるさい」という理由で透亜が弾いた。
残された選択肢は、ただ一つ。
メディア王の息子である羽鳥晃が、頬を掻きながら苦笑交じりに提案した。
「うーん……じゃあ、ウチにする?
結構みんな有名人だから、表から来ると面倒だし……裏口から入ってよ」
こうして、白羽の矢は羽鳥家へと突き刺さったのだった。
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