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31. くだらない支え
「キルシャ」
小柄な彼を抱き寄せる。自分の体に縋るように抱き着くキルシャの背を、優しく擦った。
声、震えていないといいんだけど・・・無理、だろうな。せめて、キルシャが気付かないようにと考えた。全く、無意味な祈り。
「リサト、君・・・」
怯えた声。
頭を莉里の胸元に押し付け、肩を震わせていた。
「来な」
呼ばれた。
肩が微かに跳ねたけれど、キルシャは気付かない。
その様子に、安心してしまった。
恐怖が莉里を蝕む。怖くて、怖くて。堪らないけれど。決して、倒れる事も発狂する事も無かった。
ちっぽけでつまらないプライドだけが、莉里を立たせていたから。
息を呑む。喉が動いたのが分かる。
震えた息を吐いて、歩き出した。
部屋から人が消える。
焦げ臭い煙だけが、薄く無人の部屋に充満して消えないままで。
嫌悪を覚えさせる渋い焦げ茶の髪が、目に焼き付いて離れなかった。
次話は29日20時に投稿。
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