28. 潜入と誤算
「大分ざわついてんな・・・」
ルシャージャと別れたルイスは、一人様子を窺っていた。勿論、姿は見えないように隠れてはいるが。
足音が聞こえた。
壁に身を隠し、構える。
「おい、なんかバタバタしてないか?」
「何かあったのかね」
「仕事増えんのかな、面倒くせぇ」
「つーか、機嫌悪くなってたりしたら最悪じゃん」
「当たられるかもってこと?確かに嫌だわ」
「近付きたくねえ・・・」
「同意~」
声、足音、気配。数は多くない。
二人か。
なら、問題無いな。
角を曲るタイミングで、男達を引き込む。
口を押さえ、足払いを掛ける。
くぐもった声が重なった。
片方を頭突きで黙らせ、唸っている隙に片手を離す。
首へ手刀、頭部を揺らすと体から力が抜けるのが分かった。
気絶したらしい。
手を離して、未だ唸っているもう一人を引き寄せる。手刀を落とし、同じように頭部を揺らした。
周囲を確認するが、近寄ってくる気配は無い。気付かれていないようだ。
息を吐き、眼鏡を取り出す。
掛けるが、矢張り落ち着かない。
度は入っていない為、よく見られたら気付かれるだろうが・・・。短時間なら問題無いか。
前髪が視界に入り込む。
見慣れた金茶ではない。今は赤茶色になっていた。
魔法は染まるのが速く綺麗な為、偽物だとは気付かれなさそうだ。ルシャージャに言ったら否定されるだろうが。
「ル、イスせんぱ・・・い!」
後輩の声がした。
振り返ると、此方へと駆けて来る一人の男が。
「せ、んぱっ・・・っはあ、はあ」
膝に両手をつけ、後輩は荒い呼吸を繰り返す。
「うぉ、どうした?一旦呼吸な」
背中をさすってやる、少しして落ち着いてきたらしく背を起こした。
「あのっ、囮!囮の奴が」
「あいつが?」
「居たんです」
「見つかったか。どこに居る?手口含め、確認しておきたいからな」
「いえ、あの・・・。そっちじゃなくて」
「おう?」
「店に、居たんです」
「は、店に?」
「なんか、誘拐犯を待ってたらしいんですけど・・・」
困ったように頬を掻いた。
「現れなかった、らしくて」
ルイスの目が鋭くなる。
「巡回してる時に見つけて、それまでずっと待ってたそうで」
「そうか」
一体何で。攫われる子供の傾向に合わせて、一番小柄で童顔の奴を囮として採用したのだが・・・。元々若いのもあるし、服装や化粧次第で幾らでも若く見せる事が出来るから、特に問題は無い筈。
「あ、ってか・・・え、先輩?ですよね?」
ルイスの髪を見つめ、困惑を露わにする。
今更気付いたらしい。
「俺だから心配すんな。偽物じゃねえよ」
「はい、すいません・・・以後気をつけます」
「おう。それより、此奴等任せていいか?」
気絶している奴等を顎で示す。
「はい。大丈夫です」
「ん、よろしくな」
軽く髪を崩し、ジャケットを脱いだ。
ルイスは顔を知られている可能性が高い。どの程度かは分からないが一先ずはこれでいいだろう。
あくまでもその場しのぎではあるが。
一瞬でも誤認させる事が出来れば無力化が可能だから。
ジャケットで気絶している二人を縛って転がした。
何もしないよりはマシ。
シャツの袖を土で少し汚し、ずれた眼鏡を直す。
「行くか」
「気を付けて下さいね、先輩」
「ああ」
お前もなと返し、建物の中へ足を進めた。
次話は26日20時に投稿。
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