22. 関係
「君は――奴隷商と関わりがあるの?取引相手、とかさ」
「本当、頭の回転が速いんだねぇ」
――奴隷商だとは思わないんだ。目が細められた。
あははと笑うが、表情は全く変わらない。変わらずの無表情。
不気味だった。
表情も変わらず、声にも抑揚が無い。なのによく笑うというのは、アンバランスで。
「先程、仲間ではないと言っていたから」
事も無げに言うルシャージャ。
「そ。・・・答えはノー。関係者ではないよぉ」
信じられる訳が無い。だが、今ルイスが口を挟んでもルシャージャの邪魔をするだけだ。
黙って聞いているしかない。何か不審な行動をしたらすぐに抑えられるように構えておいた方が良いだろう。出来る事を。
「そう。では、奴隷商と無関係ではない。これは?」
「そう、なるねぇ」
男は肯定する。
「うん。無関係じゃあないよぉ」
「は?」
一体どういう。それに、
(さっき、関係者ではないって・・・)
「全く関係が無い、って事はぁ」
――無いかなぁ。
試す様に言う男に対し、ルシャージャはいたって冷静だった。
息を吞む。
取引相手ではない。それは否定していた。奴隷商で働いている、という事も無いだろう。それだと関係者になる。
そこまで考えた時、ルシャージャが口を開いた。
「では・・・もう一つ」
――いいか。伺うように、ルシャージャは男に視線を向けた。
「どぉぞ」
躊躇う事なく言う。
その場から動く様子も無く、不審な仕草も無い。唇を噛んだり視線が泳ぐ事も。特に動揺も無く、余裕の態度を崩さない男。
(ここまで何もしないのなら・・・)
警戒を解いてもいいのかもしれない。だが、解いた瞬間に動くかもしれない。ルイスなら間に合うだろうが・・・必ずとは言い切れない。
こういう可能性は実際に見てきたものだから、簡単に浮かぶ。喜べばいいのか、悲しめばいいのか。役に立っているのだから喜ぶべき、なのか。
「君は――」
言葉を区切り、息を吐いた。
「被害者の、関係者か」
彼女の言葉は、どこか確信めいていた。
「・・・・・・あはっ」
男の口から笑いが漏れる。
「あははははは」
「っ」
ルシャージャの腕を引き下がらせる。
「は・・・?」
驚いたような、困惑したルシャージャの声が聞こえた。
「あっははははははははは」
変わらずの無表情。声にも感情が無い。それなのに堰を切ったように大笑いし始めて。
(気でも狂ったか?)
というか、感情が入らずに笑うって器用だなおい。
はーっ、と上を向いて息を吐き切った男は、ルシャージャを見据えた。
「すごいねぇ・・・分かっちゃうんだ」
無表情で抑揚の無い声、笑い出す前の男に戻っている。
先程まで笑っていたとは全く思えない。
「正解、か」
ルイスの隣に並ぶ。
「そうだよぉ。気付くだろうなとは思っていたけど・・・まさか、ここまで早いとはねぇ。流石は――」
――タンテイさん。
体が強張る。
何で、此奴がルシャージャの事を・・・。
「へえ」
ルシャージャの目が鋭くなる。
「君、一体どこまで知っているのかな?」
腕を組んで問う。
「ふふ、さあね。どうだろぉ」
態とらしく首を傾げる。
――見つけてごらんよ、タンテイさぁん。
独特の間伸びは、ルイスの苛立ちを募らせた。
限界だ。これ以上此奴を放置するのは危険だろう。
「お前、いい加減に――」
「――いいよ」
しろよ、ルイスの言葉を、静かな声が遮った。
(は・・・?)
「ルシャージャ、お前」
どういうつもりだ、そう言おうとして黙る。
ルシャージャは、笑っていた。
やってやろうと。好戦的に口角を上げて。
短いので次話も続けて投稿。
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