21. ちぐはぐ
「まだ寝てんのか」
そろそろ起きてるかと思った。
「気絶させたのがルイスだからね」
馬鹿力だしと笑う。
一々貶さないと話せないのか此奴は。
(追求するだけ無駄だな・・・)
そういや、と声を漏らす。
怪訝そうなルシャージャの顔が此方を向いた。
「ルシャージャ」
「何」
「此奴等、どうする?」
視線の先には魔法で拘束されている襲ってきた奴等が。
「通報でしょ。善良な一般市民として当然の選択」
当たり前の事だろうと言う。
善良・・・なのか。いやまあ、一応そうなるのか。
「一般市民なのかお前?」
「一般市民です」
強めに言い切った。
「そうか・・・」
(納得いかねー)
「通報・・・帰り詰所寄るか」
「そうだね。面倒だけど」
魔法掛けたし先に帰る訳にはいかないと溜息を吐いて見せた。溜息もだが憂鬱そうな顔も態とらしく感じる。だがまあ、実際手続き等が発生するのだから憂鬱になるだろうなとは思う。
「あ~あ」
変に間延びした声がした。
「っ」
息を吞む。
何処だ。記憶にない、聞き覚えの無い声。新手か。
ルシャージャを壁に寄らせ、前に立つ。庇える体制を取る。
「誰」
ルシャージャの目が鋭くなった。
「やっぱり駄目だったかぁ。ざぁんねん」
残念、と言いつつ楽しそうな声色。
靴音が部屋に響く。出所に目をやると窓から差し込む光に照らされた一人の男が立っていた。
すらりとした体躯、体の重心、その立ち姿から鍛えているのが分かる。見た目は・・・20代程だろうか。
光を受けた渋い焦げ茶色の髪がどうにも印象的だった。
「ああ、そんなに警戒しないで?今は敵対するつもり、無いしさぁ」
変にねっとりとした、耳に残る特徴的な話し方。
「はっ、お仲間を助けに来たってか?」
男を睨みつける。
「お仲間・・・?」
不思議そうに首を傾げる男。少しして納得したように頷いた。
「ふふ、別に仲間じゃないよぉ?」
袖で口元を隠し、くすくすと笑う。
仕草がどこか幼い男だ。
(仲間じゃない・・・?)
「んな事信じられると思うか?」
ここ居要る時点で、関係者ではある筈だ。
「待って」
今にも飛び出しそうなルイスをルシャージャが制止する。
「ルシャージャ?」
なんだ。
「話を聞きたい。攻撃しないで」
「話?なんで」
本当のことを話すとは思えない。
「あは、警戒心の強いナイトだねぇ」
けらけら笑う。
「何が可笑しい」
「噛み付くな」
強めに言われた。
こんな奴の話を聞くなんて、どういうつもりなんだルシャージャ。
「‘‘今は敵対するつもりは無い‘‘。そう言っていただろう」
「嘘かもしんねえ」
「だったら‘‘今は‘‘なんて付ける必要無い。後から敵対する、その可能性があるという事になる」
まあ、とルシャージャは続ける。
「真実を混ぜているだけかもしれないが」
「おい」
駄目じゃねえか。
「でも、判断するのは話を聞いてからでも遅くない」
(それは・・・)
そうなのだが。
ルシャージャの魔力を追ってきたが、ここはダミーだった。これ以上の手掛かりが無いのも事実。
ルシャージャは持っているだろうか。男が居る所で聞く訳にはいかないが。
「話、聞いてくれる気になったぁ?」
「ああ」
ルシャージャが答える。
「待たせた様で」
「別にいいよぉ?」
やっと分かった。男がどこか不気味な理由。ずっと無表情なのだ。表情が全く変わらない。声にも抑揚が無かった。それなのに間延びした声は、ちぐはぐに感じた。
「質問、どうぞ~」
「お言葉に甘えて。君は――」
次話は15日20時に投稿。
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