14. 距離と探知
「って、出てきたはいいけどさ」
「何さ。今更不満でも?」じとりと目が向けられる。
「違う違う」顔の前で両手を振る。「そうじゃなくてさあ」
「分かんの?向こうの居る場所」
そういうの、まだ聞いてないんだが。
「分かるよ」軽く笑う。「ていうか、今更じゃない」
「まあ、出てから聞く事じゃないな」
もう既に向かっているんだろうな。先行するルシャージャを見て思う。
「分かってるじゃない」意外だと目を見開く。
「馬鹿にしすぎ。俺は賢かないけど馬鹿じゃねえの」
「知ってるよ。襲撃の時の奴」
それがヒントか。
「あ、気絶してる奴に何かしてたあれか?」ぽんと手を打つ。
多分あってると思う。というか、外れたら困る。ルイスの心当たりはこれしかない。
「おー、正解」
「だろ?つーか、俺が思いつくのなんてそれだけだしな」
にしても、と続ける。
「一体、何したんだ?気になってたんだよ」
聞けるのが楽しみで、わくわくしてる。
多分、ルシャージャの目には子供みたいな顔をしたルイスが映っているだろう。
ルシャージャが呆れてるから間違いない。
「はぁ。分かったったら。その顔止めて」しっし、と面倒臭そうな顔で手を振る。
よっしゃ。
「魔力を付けておいたの」
「魔力」
ほんとこいつ言葉足りねえな。
「私の魔力を、気絶してる内の一人に付けた」
どういう事だ。
「もうちょい詳しく」
これだと理解してる内に日が暮れる。
めんどくさ、って・・・思ってても声に出すなよ。
「魔力探知は解るね」確認される。
やっぱり馬鹿にされてる気がする。まあ、ルイスは魔法関連に疎いから仕方が無いのかもしれないが。
「おう」
範囲内の魔力の反応が分かるってやつだろ。
「それを使ったのか」
この流れでそれが出てくるなら、それしかない。
「そう」軽く頷く。「この街全体にね」
思わず足が止まった。
「どうしたの?」
気付いたルシャージャも、足を止める。
「お前、何やってんだ!?」思わず、声を荒げた。
肩を掴んで強引にルイスの方を向かせる。
「え、何」怪訝そうな顔だ。
「何、じゃねえよ」手に力がこもるのが分かった。
「ねえ、痛いんだけど」
顔を顰めるが、正直気にしている余裕は無い。
普通は2~3mくらいで、ルシャージャは元から滅茶苦茶に広いらしい。魔法使う奴等が驚いてた。全員腰を抜かすもんだから、印象に残ってて憶えてる。
「体、平気か」
「はあ?本当にどうしたの」
「範囲を広くすると頭が痛くなる、って言ってただろ」
誰だって魔力は持ってる。ルイスも、少ないが持ってはいる。
魔力探知はその範囲内の人間・・・というか生物がどこに居るか、常に頭に流れ込んでくる。
自分の処理量によってその範囲は変わる。
処理量を超えたりすると頭が痛くなるらしい。ルイスが実際に試した事はないが。
偶に、無理をし過ぎて脳が焼き切れる人も居るとかなんとか。
「嗚呼、それか」一人納得したように頷く。
「それか、じゃないんだって。大丈夫なのか?」
この街全体、なんて幾らルシャージャでも処理しきれないだろう。
「大丈夫だよ」
「範囲を広げたらどうなるかなんて、分かってるよ。だから、条件付きにした。それ以外は関知しないようにね」
――流石に、この街の生物全部を把握するのは無理。
当たり前だ。出来る方が可笑しい。というか、あり得ない。
「その、条件ってのは?」少し落ち着いた。
「感知するのは私の魔力だけ」
ルシャージャの?
「いつからだ?」
「魔力を付けた後から」
「ずっと?」
「ずっと」
また省エネか。考え事してんのか?邪魔しないようにしとかねえとな。ルイスの身の為にも。
想像して身震いをした。
「お前の体に、影響は?」
「ないよ。寧ろ、感知するのは自分の魔力だけだからリソースは殆ど割いてない」
「ああ、そうか。反応が出るのはお前と、魔力付けられた奴だけだもんな」
納得だ。
「そういう事」
「分かったら離れてくれないかな」
あ、
「悪い」慌てて手を放す。
もう殆ど力は入っていなかったが、落ち着かないだろう。
「あ~もう、皺になっちゃったじゃん」肩の部分を軽く払い、シャツを伸ばす。
「すまん」頭を下げる。
「・・・別にいいよ。私も、言い方が悪かった」
ごめん、と言う声は今にも消え入りそうだった。
驚いて顔を上げると、困ったように顔を逸らして頬をかいていた。
「・・・何さ」
思わず口を開けて固まっていると、怪訝そうに顔を覗き込んでくる。
「いや、・・・お前、謝れたんだな」
無言で睨まれる。
「ごめんって」
「失礼」黒の手袋に覆われた細い指が、ルイスの額を弾く。
「痛っ」
ルシャージャは非力だから大して痛くなかった。条件反射だ。
「もう、行くよ」
「あ、おい」
さっさと歩き出したルシャージャを追う。
「結局、場所が分かるのはルシャージャの魔力が付いてるから、でいいのか?」隣に並び、顔を覗き込む。
「うん」
視線が合わない。また考え事をしているらしい。
角を曲がる。
「反応は?」
「移動して、全員同じ場所で止まってる」
「そこがアジトなのか?攫われた子供も居んの?」
「子供が居るのかは分からないけど、暫く動いていないから多分アジト」
日が沈みかけている。
「急ごう」
「了解」
揃って駆け出した。
次話は17日20時に投稿。
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