五、プレゼント
「てことがあったんだよ~。本当、大変だった」
「羨ましいよ! 紘斗君のお兄さんと、KiRaが同級生で友達とか、家に泊まったとか。紘斗君、小さい頃から知ってたんなら、そう言ってよ~!」
月曜日の昼休みを、屋上で二人で過ごす。
誰にも邪魔されたくないから。和葉ちゃんを取られたくないから。
そんな理由で、教室にいるのが嫌になる。
二人きりになれるこの場所は、俺のお気に入り。
「お詫びになるけど、KiRaの二人から、サイン」
色紙が無かった為、俺の部屋にあったルーズリーフに、水希君と晶楽君からサインを書いてもらった。
もちろん、俺の為ではなく、和葉ちゃんの為に。
「ありがとう。一生、宝物にする!」
「よかった~! 喜んでもらえて」
「CDの発売、楽しみだね」
「予約始まってるし、次の土曜日にでもしてくる」
「まだしてなかったの? 私はもうしたよ」
「早いね、和葉ちゃん」
「ファンなら当然! ライブには行けないけど、その分、たくさん応援したいからね!」
サインのお陰なのか、いつにも増してテンションが高い和葉ちゃん。
いつも可愛いけど、テンションが高いともっと可愛くなってしまうのは、ある意味小悪魔。
昼休みが終わってしまうまで、ここで二人きりでいたい。
「こんな所で、イチャイチャしてるんじゃないぞ~」
この声に驚いた俺たちは、その声の主をすぐに確認した。
「小牧先生!? なんで、ここに?!」
「なんでって、教務室も数学準備室も、煙草吸えないからな。ここなら吸えるだろ。他の先生に見つからずに」
「そうですけど! だからって……」
小牧先生は、去年赴任してきたらしい、数学の先生。
年齢が確か二十六歳。
「てか、一ノ瀬と二木の方が問題だろ」
「どうしてですか? 私たち何もしてませんよ?」
「優等生の二木が、チャラ男で補習常連の、一ノ瀬と付き合ってるらしいって、教師間で問題になってる」
「そうなんですか!? 先生たちまでも!?」
「付き合う前くらいからの二人の会話は、何回か聞いてたけど、青春だな。うん、アオハル」
マジかよ! 小牧先生に聞かれてたのかよ!
てか、待て。俺、ここでスマホを……。
小牧先生がそこまで悪魔じゃないと、俺は思いたい。
「先生!!? どうしよ! 俺、ヤバい!」
「まぁ、応援してるからな。俺は。同じ経験をした者として」
「ホエ?」
思わず変な声が。
「俺も、昔は一ノ瀬みたいに、ナンパばかりしてた。んで、本気で好きになった子が、二木みたいに優等生で。最初の頃は、その子に嫌われてた。話しかけるようになって、共通の趣味を知って、距離が縮まって」
「それで、どうなったんですか?」
「付き合ってる。今も継続中」
「マジっすか! これからは小牧先生を『師匠』と呼んでもいいですか?」
「勝手にしてくれ。んじゃ、俺行くわ。もうすぐ予鈴がなるから、そろそろ戻れよ」




