四、続々 KiRaと紘斗
「悪かったって。紘斗~」
「サイン書くからさ~。出てきてよ~。ひーろーとーくーん」
その後、自室に籠った俺。
たとえファンであろうと、小さい頃からの知り合いだからね。
サインなんて、サインなんて。
ん!? サイン!?
いやいや。ここで出てしまったら、二人の思うつぼ。
ピロン。
ベッドに置いていたスマホが鳴った。
見ると、和葉ちゃんから。
『今、空いてるかな? 新作を書いてみたんだけど、紘斗君に読んでもらいたくて。時間があったら、感想ください』
部屋の外は騒がしく、兄貴は何をしているんだと、思ってしまう。
どうせ、ゲームしてんだろうな。
「続きは後で話すから、今はほっといてくれる?」
部屋の外に聞こえるように叫ぶと、一気に静かになった。
『KiRa』の二人は、かなり薄情だよな~。いつも思うけど。
和葉ちゃんが書いた小説は、高校生のラブコメだった。
ヒロインが残念なほどに厨病で、それにツッコミを入れるのが、主人公の設定。
暗黒魔界神? とかなんとか、厨病らしい言葉がたくさん。
こんな作品まで書けるとか、和葉ちゃんスゲー!
「俺より才能ありすぎだよ~。和葉ちゃん」
独り言を言ったその時、部屋のドアが勢いよく開かれた。
「うわぁっ!!」
「彼女と電話かぁ? 紘斗」
「俺たちが見ていない所で、イチャイチャすんな!」
水希君と晶楽君が、部屋にズカズカ入って来るなり、開口一番の文句。
「電話じゃなくて、メールだし。イチャイチャなんてしてないから」
「そんじゃ、話の続きを聞かせて」
「話の続きを聞かない限り、俺ら帰らないからな!」
もう、俺は疲れたよ。パトラッシュ。
和葉ちゃんに返信したら、部屋に籠っていたいよ。
「紘斗。話してくれたら、次のCD、買ってやるよ?」
「水希がCDなら、俺はライブのグッズ、買ってやる」
聞く気ないくせに。まったく。
「どこまで話したっけ?」
「学校ではチャラ男を演じている紘斗が、教室で黄昏てたとこ」
「あー、そうだ。で、そこに、和葉ちゃんが入ってきたわけ」
「まさか、そのまま、襲った……!?」
「襲ってません! 一人で何するのか知りたくて、俺の方から話しかけた。そうしたら、ネットで小説書いてるらしくて。読みたいって言ったら、サイトとユーザーIDを教えてくれた」
「それだけか?」
「俺も同じサイトで書いてることを伝えたし、和葉ちゃんのペンケースにさ、KiRaのエンブレムアクキーが付いてて。俺もKiRaのファンだって、伝えた」
それからのことを、話せる範囲で話すと、水希君も晶楽君も満足した様子。
「和葉ちゃんさ、KiRaのファンなんだよ。ネットラジオも毎週聞いてて、ふつおたを送ったこともあるらしいよ」
「和葉ちゃんにサイン書くから、渡しといて」
「エンブレムアクキーとか、メジャーデビューした年に造って、その年限定でオフィシャルサイトで販売してたやつじゃん! ふつおたも送ってくれるとか、紘斗より律儀な子だよね~」
こうして俺は、KiRaの尋問から解放されたのだった。




