戦闘開始
アイスブルーの瞳の男性は私を先導して赤いカーペットを歩いていく。
「ここで止まってください。」
豪奢な玉座に座った国王夫妻の顔がかろうじて見える位置に来ると私の歩みを止めさせた。
そして、彼自身は赤いカーペットの上をスタスタと進んでいき、国王夫妻の脇で立ち止まった。
彼は魔王城でいうところの宰相のエリックと同じような役割を担っているのかもしれない。
国王夫妻と私は互いに視線を交わらせたが両者とも口を開かずに見つめ合うだけだった。
張り詰めた空気の中、先に口を開いたのは国王だった。
「貴女は2年半ほど前に我が国最東端の村、ジーチで行方不明になったイレーナで相違ないか?」
言葉をひとつひとつ選ぶように言っていく国王の面持ちは、緊張しているのか強ばっていた。
そして、こんな時に思うなんて不謹慎かもしれないが、国王夫妻は私が想像していたよりも若く、美しかった。
「間違いありません。」
真っ直ぐに国王の瞳をみつめ、必要最低限のことだけを淡々と述べる。
私が行方不明だったイレーナであったことが分かると、国王夫妻は嬉しそうな顔をして顔を見合わせていたが、複雑そうな表情を浮かべて私を見つめてきた。
「貴女は、無理矢理魔界に連れていかれたのですか?」
少し小さいがはっきりとした声で、王妃が尋ねてきた。
「私は…」
答えようとした時、ものすごい破壊音がした。
振り返ると、重厚な扉は見る影もなく粉々になっていた。
粉々になった扉を見つめて呆然としていると、不意に後ろから抱きしめられた。
「イレーナ…無事で良かった…」
私を抱きしめるアランの手は小刻みに震えていた。
震えているアランの手を握り、「ごめんなさい…」と小さな声で言う。
アランが私に微笑んで何かを言おうとした時、近衛兵がアランに突撃してきた。
アランはため息をつくと、私を抱き上げると何かを呟いた。
刹那、玉座の間に近衛兵の氷漬けのオブジェがひとつできた。
氷漬けのオブジェができたことを皮切りに、フィリプ達が攻撃を仕掛けてくる。
ひらりと複数人からの攻撃をかわすアランは本当に恰好いい。
しかし、私を片手に抱きかかえて闘うのは辛いのか私をルーチェの傍に降ろした。
「おい女、イレーナに何かしたら命はないかと思え。」
鋭さを少しも隠さずに、アランはルーチェに淡々と告げる。
ルーチェは、こくこくと頷く。
それを確認したアランは、何やら叫びながら攻撃してくる勇者に対応するために、私達から離れた。




