執務室(魔王side)
「はぁ…」
今日何度目か分からないため息をつく。
疲れた。
なんでこんなに書類仕事が多いのだろう…
机には沢山の書類がうず高く積まれている。
しかし、机だけにはとどまらず、床にもところ狭しと書類が積み上げられていた。
「はぁ…」
イレーナは何をしているのだろうか。
会いたくてたまらない…
机に頬杖をついて、考えていると頭に鈍い衝撃が走った。
顔を上げると、分厚いファイルを持った笑顔のエリックが仁王立ちしていた。
「魔王様…私がこの部屋を出てから書類仕事が進んでいないようですね?」
笑顔に見えたが、エリックの額には青筋が浮かんでいた。
「エリック、怒ると寿命が縮むぞ?」
俺が雰囲気を和ませようと、冗談めかして言ってみる。
「はぁ…貴方がちゃんと仕事をしてくだされば、私の寿命は縮まないのですがね…」
エリックはため息をつくと、「仕事をしろ」と言いたげな顔で、分厚いファイルを机に置いた。
余程重いのか、机に置いた瞬間ドスンと音がした。
「エリック…お前、こんな恐ろしい凶器で俺の頭を叩いたのか…」
「魔王様…こんなことでは死なないでしょう?」
いや、死なないけど…
仮にも俺はお前の上司だぞ!
「ほら、イレーナ様に会いたいならお仕事してください。ね?」
真っ黒な笑みを浮かべたエリックは、自分の席に戻るとものすごい勢いで書類仕事を始めた。
もし、前世があるとしたら、エリックは絶対働き者だったと思う。
そんなことを考えていると、不意に扉が開いた。
「も、申し上げます。イレーナ様がいなくなりました!」
イザベルは美しい細工のされた小瓶をぎゅっと抱えて、震えた声で叫んだ。
顔は血の気がなく陶器のように白くなっていて、目には涙が溜まっていた。
「最後に見たのは?」
静かに問いかけると、イザベルがビクリと震えた。
「す、数分前です。」
どもりながら、やっとのことでイザベルが答える。
言い終わると、瞳からポタポタととめどなく涙がこぼれ落ちる。
「イザベル、座ってください。」
エリックがイザベルを座らせ、背中をさすって落ち着かせた。
しばらくエリックに背中をさすられ、落ち着いたイザベルが、俺の方をみて「ごめんなさい」と消えてしまいそうなほど小さな声で謝った。
俺はため息をひとつつき、「怒ってない」と短く告げる。
イザベルのことをエリックに任せ、自室に向かう。
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自室に着くと、大きなため息をついた。
あれだけイレーナに、城の外に出ていったり、知らないメイドとかにはついて行かないように言っておいたのに…
まあ、そういうところも含めて大好きなんだけど。
イレーナがふにゃりと笑う姿を思い浮かべ、笑みが零れる。
イレーナが危ない目に会う前に迎えに行かなければ。
イレーナを探すために、自室にある水晶に手をかざす。
本来、この水晶は電話の役割を担う代物だ。
しかし、魂が結びついている結婚相手や眷属の魔力を辿って、今の状態を水晶に写して確認することができる。
イレーナの魔力を水晶に込めるとすぐにイレーナが写った。
イレーナは怪我した様子もひどい扱いを受けている様子がなく、ほっとして笑顔が零れる。
しかし、イレーナがいる場所を見て一瞬で笑顔が消える。
水晶で自室からエリックとイザベルのいる執務室に連絡をとる。
「エリック、いるか?」
少し経ってから、エリックが水晶に写る。
「はい。どうなさいましたか?」
「少し出かける。」
「分かりました。イレーナ様をちゃんと連れて帰ってきて下さいね。あ、暴れすぎないように。」
「嗚呼、分かってる。」
くすりと笑い、水晶での通信を切る。
指を鳴らし、イレーナのいる王宮への空間の道を繋げる。
待ってろイレーナ。
今すぐ助けに行くから。




