最愛の人(魔王side) 訂正済み
物音一つすらしない玉座の間で魔王である俺は、静かに苛立っていた。
玉座の間にいる者達は、俺の機嫌の悪さを察して、待ち人が来るまで機嫌を損ねないように、ひたすら静かにすることにしたらしい。
コンコン…
控えめなノックが玉座の間に響いた。
「マイヤでございます。」
「入れ。」
マイヤが玉座の間に入り、扉が閉まったのを見届けて俺は静かに妻であるイレーナの現在地を尋ねた。
「イレーナ様は現在、メイド達と共に図書室にいらっしゃいます。」
「そうか、では計画を実行しよう。付近の住民の避難は?」
「はっ、完了しております。」
七大貴族の1人「憤怒」のラースが答える。
「宜しい。マイヤ、スロウス、始めろ。」
マイヤが呪文を唱えると、澄み渡っていた空に暗雲が立ちこめ雨が降り始めた。
雨に向けてスロウスが手をかざして呪文を唱えると紫色の雨が降り出した。
ちなみに、スロウスは七大貴族の1人「怠惰」だ。
雨が猛毒の雨に変わったのを見届けたスロウスは速攻で眠りに着いた。
スロウスが寝てしまったので、マイヤが俺達に雨についての説明をする。
「この雨は猛毒の雨です。人間なら触れた瞬間、死にます。」
「そうか、下がっていいぞ。」
手をひらひらと振りながら告げると、マイヤは一礼して玉座の間から退出して行った。
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「陛下、やりすぎでは?」
マイヤが出て行くと、七大貴族の1人「色欲」のルクスリアが控えめに言ってきた。
「あぁ?俺のイレーナを誑かしたんだから死んで当然だろ。」
俺の地のそこから響くような低い声に、ルクスリアが小さく叫んで椅子から落ちた。
俺がこんなに怒るのは当然だと思う。
3年も人間界に通い、先月結婚した愛してやまない俺のイレーナを勇者が誑かしたのだ。
そんな不届き者の勇者は猛毒の雨を浴びて罰を受けるべきである。
しかし、まさか勇者がピンピンしていて、魔王城に乗り込んで来るなんてこの時の俺は思いもしなかった。




