表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Snow flakes   作者: 山吹 ことり
ヒナタ編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
192/223

結構、幸せ 

 スタジオの明かりを落とす前、

 コウタは最後に譜面を一枚ずつ、丁寧に揃えた。


「最近さ」


 誰にともなく言う。


「前より、音が怖くなくなった」


「どういう意味」


 ヒナタが聞く。


「失敗しても、

 全部自分のものだって思える」


 ハヤテが笑う。


「大人じゃん」


「たぶん」


 コウタは少し考えてから続けた。


「誰かに認められなくても、

 書きたいって思えるの、悪くない」


 椅子に腰を下ろす。


「それに」


 一拍置いて。


「好きな人が、

 俺の歌を“好き”って言ってくれる」


 ヒナタは何も言わずに頷いた。


「だから、今」


 コウタは小さく笑う。


「結構、幸せ」


 ハヤテが一瞬、目を丸くして、

 笑う。


「言うようになったな」


「茶化すな」


「で、次は?」


 コウタは少しだけ視線を落としてから言った。


「ずっと考えてた」


 ヒナタが顔を上げる。


「……仕事、辞める」


「音楽、一本でやる」


 スタジオの空気が、

 ほんの一瞬だけ静かになる。


 ハヤテが笑う。


「覚悟決めたな」


 コウタは肩をすくめる。


「まあな」


「怖くなくなったんだろ」


 ヒナタが静かに言う。


 コウタは小さく笑う。


「うん」


「だから、辞める」


 ハヤテが笑う。


「じゃあ俺、頑張って働くわ」


 コウタが吹き出す。


「なんだそれ」


「だってさ」


 ハヤテは肩をすくめる。


「俺、もう少し外を見ておきたいし」


 コウタが眉を上げる。


「外?」


「中にいるだけじゃ、

 見えないこと、結構あるだろ」


 ヒナタが小さく笑う。


「研究熱心だな」


 ハヤテも笑う。


「仕事だからな」


 スティックを指で回す。


「じゃ、行く?」


 ハヤテが、立ち上がって軽く言う。


「どこに」


「甘いの」


 一瞬。


 ヒナタが笑う。


 コウタも笑う。


「行くか」


 ケースを肩にかける。


「この流れ……

 今日は俺、奢り?」


 ハヤテが肩をすくめる。


「当然」


「ごちそうさま」


 ヒナタも、

 何でもない顔で続けた。


 三人でスタジオを出る。


 夜の空気が、少し甘かった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ