報告
「……報告」
コウタが、
いつもより少し背筋を伸ばして言った。
ヒナタとハヤテが、
同時に顔を上げる。
「籍、入れた」
一拍。
ヒナタが、
最初に頷いた。
ハヤテが遅れて息を吐く。
「ほんとに来たな」
「来た」
コウタは短く答える。
「おめでとう」
ヒナタは、
迷いなく言った。
「おめでとう!」
ハヤテは少し声を上げる。
「ついに既婚者枠だぞ」
「枠で言うな」
コウタは苦笑する。
少し沈黙。
「……変わった?」
ハヤテが聞く。
「まだ」
コウタは正直だった。
「でも、
戻る場所は、できた」
ハヤテが肩を叩く。
「じゃあさ」
「今日のリハ、
既婚者初音出しな」
「やめろ」
三人の笑いが、
スタジオに戻ってくる。
「……でさ」
コウタが、
ギターケースを閉めながら言った。
「結婚式、
やることになった」
間。
「なった?」
ハヤテが即座に拾う。
コウタは肩をすくめる。
「話してたら、
気づいたら決まってた」
ヒナタは、
静かに聞いている。
ハヤテがにやっとする。
「向こうの親?」
「あと、
うちの親」
「はい完全包囲」
ハヤテ。
ヒナタが言う。
「嫌じゃない顔だな」
コウタは一瞬だけ黙ってから、
正直に答えた。
「……嫌じゃない」
「むしろ?」
ハヤテ。
「ちゃんと区切りをつけたい」
「曖昧なまま進むの、
もう終わりにしたかった」
ヒナタは、
小さく頷く。
「コウタらしい」
「で」
ハヤテが楽しそうに言う。
「式で一曲、
やるんだよな?」
「決まってない」
コウタは即座に否定する。
「まだ」
「やらないとは言ってないな」
ヒナタが、
淡々と刺す。
「……言ってない」
「定番?」
「やめろ」
「新曲?」
「やめろ!」
完全に囲まれている。
ヒナタが、
少しだけ真面目に言う。
「節目なら、
一番ちゃんと鳴る形で」
コウタはしばらく黙ってから、
ゆっくり頷いた。
「……一曲だけ」
「一曲な」
ハヤテが、
にやっとする。
「泣いたら?」
「止めない」
ヒナタ。
「最低だなお前ら」
そう言いながら、
コウタは少しだけ笑った。




