反射
最終日。
袖に戻る途中。
ヒナタが、
ポケットを探ってから立ち止まる。
次の瞬間。
ステージの方へ向かって、
軽く腕を振った。
音もなく、
小さなピックが闇に消える。
ハヤテが気づいて言う。
「投げたな」
「反射」
コウタが笑う。
「客席、見てた?」
「見てない」
即答。
ハヤテが、
タオルを投げる。
「今まで一回もやってなかったよな」
「似合わないと思ってた」
「で、どうだった」
ヒナタは、
少し考えてから言う。
「……悪くなかった」
コウタが頷く。
「じゃあ、次もあるな」
ヒナタは肩をすくめる。
「調子よければ」
その言い方が、
一番ヒナタらしかった。
楽屋。
コウタが、
スマホを見たまま言う。
「……反応、来てる」
ハヤテが、
タオル越しに顔を上げる。
「もう?」
「早いな」
ヒナタは、
ケースを閉めながら聞く。
「どんな」
コウタが、
画面を読み上げる。
「急に飛んできて心臓止まった、とか」
ハヤテが、
小さく笑う。
「そりゃそうなる」
ヒナタは、
少し間を置いて言った。
「……大げさだな」
「初回だからだろ」
コウタが続ける。
「次は慣れる」
ヒナタは、
一瞬だけ考えてから、
首を振る。
「慣れなくていい」
ハヤテが頷く。
「そのほうが、
投げる側も緊張するしな」
ヒナタは何も言わず、
空になったピックケースを閉じた。




