判断が早い
連絡が重なった。
確認して、返して、次。
スタジオに来て、
機材を並べる。
音を出す。
直す。
もう一度。
時間を見る。
「次、これで行ける?」
「行ける」
理由は言わない。
決めて、動く。
次の日も、
スタジオに入ると、
すでに電源は入っていた。
ハヤテがケーブルをまとめ、
コウタがペダルを踏む。
ヒナタは何も言わず、
譜面を置く。
「昨日の続き?」
「うん」
それだけ。
音を出す。
一度で止める。
「ここ、少しだけ」
指示は短い。
説明はない。
合わせる。
直る。
「OK」
早い。
コウタが、
一瞬だけヒナタを見る。
何か言いかけて、
やめる。
代わりに、
チューナーを切る。
「次、どうする?」
一拍。
「今日は、ここまででいい」
誰も異を唱えない。
片づけが始まる。
ケースが閉じる音の中で、
コウタがぽつりと言った。
「……共有、後ででいい?」
「まとめて送る」
「了解」
外は、
もう暗かった。
翌日。
集合は、いつもより少し早い。
理由は言わない。
全員、分かっている。
ヒナタが先に音を出す。
カウントは省略。
合わせる。
止める。
「ここ、前倒しで」
ハヤテが頷く。
コウタも黙って合わせる。
修正は早い。
音は整う。
「これで行けるな」
「行ける」
即答。
少し遅れて、
コウタが口を開く。
「……それ、先に共有してた?」
「今するつもりだった」
「そっか」
それ以上は続かない。
時計を見る。
予定より、少し早い。
「今日は、ここまで」
ヒナタが言う。
「最近、判断早いな」
ハヤテが軽く言う。
「助かる」
コウタは何も言わず、
ケーブルを巻く。
ヒナタは、
振り向かなかった。




