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Snow flakes   作者: 山吹 ことり
スノーフレークス編

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今日は、ここまでで

 スタジオを出たところで、

 ハヤテが言った。


「コンビニ寄ってく?」


「寄る」


 ヒナタは即答した。


「コーヒー切れてる」


「だろうな」


 コウタが笑う。


 夜のコンビニは、

 昼より少し静かだ。


 蛍光灯の下、

 三人は自然に散る。


 ヒナタは棚の前で立ち止まり、

 一瞬だけ迷ってから、

 いつもの缶を取った。


 ハヤテはスイーツコーナーを見ている。


「これ、新作らしい」


 ひとつ、かごに入れる。


「また?」


「だって書いてある」


 コウタはレジ横で、

 何も買わずに立っていた。


「……買わないの?」


 ハヤテが振り向く。


「あとでいい」


 短く答える。


 スタジオに戻ると、

 空気が少し変わっていた。


「……あれ」


 ハヤテが声を落とす。


 アンプのランプが

 点いたり消えたりしている。


「接触かな」


 ヒナタがしゃがみ込み、

 ケーブルを一本ずつ確認する。


 コウタは無言で、

 別のケーブルを差し替えた。


 少しして、

 音が安定する。


「助かった」


 ハヤテが言う。


「まだ鳴らしてない」


 ヒナタは立ち上がる。


「準備だけ」


 誰も、

 急がせない。


 チューニングの音が、

 順番に重なる。


 コウタがベースを鳴らし、

 ヒナタが一音、返す。


 ハヤテはスティックを回してから、

 軽くリムを叩いた。


 カウントは出さない。


 目だけで、

 合図する。


 最初の音が出る。


 少しズレて、

 すぐ揃う。


「……今の」


 ハヤテが言う。


「悪くない」


「うん」


 コウタが短く返す。


 ヒナタは何も言わず、

 アンプのつまみを、

 ほんの少しだけ動かした。


 もう一度、

 音を出す。


 今度は、

 迷わなかった。


「今日は、ここまでで」


 ハヤテが軽く手を上げる。


「おつかれ」


 コウタがベースを下ろす。


 ヒナタも、小さくうなづく。


 スタジオを出る。


 外の空気は、

 少しだけ冷えていた。


 ヒナタは玄関先で立ち止まり、

 スマートフォンを見る。


 未読通知。


 仕事。

 連絡。

 短い言葉。


 視線を上げる。


 少し先を歩く、

 二人の後ろ姿が見えた。


 並んで、

 何か話している。


 笑い声。


 そのまま、

 ゆっくり遠ざかっていく。


 ヒナタは、

 静かに画面を閉じた。


 一瞬だけ、

 考える。


 ――どこに帰るか。


 でも、

 答えは出ない。


 ヒナタは踵を返し、

 もう一度スタジオのドアを開けた。


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