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Snow flakes   作者: 山吹 ことり
スノーフレークス編

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166/216

音は揃っている

 スタジオの片隅で、

 ヒナタはスマートフォンを耳に当てていた。


「はい。……ええ」


 少し間を置く。


「日程、問題ありません」


 メモも取らない。

 頭の中で整理している。


「条件も、聞いてます」


 一拍。


「大丈夫です。

 こちらで引き受けます」


 短く、はっきり。


 通話が切れる。


 その音に気づいて、

 ハヤテが振り返った。


「決まった?」


「うん」


 ヒナタは端末を伏せる。


「先方、急ぎだった」


 コウタが顔を上げる。


「内容は?」


「悪くない」


 即答。


「日程も被らないし、

 音の自由度もある」


 ハヤテが頷く。


「そうか」


「先に返事しといた」


 ヒナタはそう言って、

 ギターケースを肩にかけた。


 一瞬だけ、間。


 コウタが、確認するように言う。


「……共有、後でってこと?」


「そうだけど」


 ヒナタは立ち止まらない。


「判断、早い方がよかった」


「条件、問題ないし」


 説明は簡潔だった。


 ハヤテが、軽く笑う。


「助かるわ」


「こういう判断、

 ヒナタは早いからな」


 コウタは何も言わず、

 一度だけ頷いた。


「……了解」


 否定はできなかった。


 ヒナタは、

 それを確認してから言う。


「細かいところ、

 あとで詰めよう」


「今日は音、出す?」


 ハヤテ。


「軽くな」


 ヒナタが答える。


 三人が位置につく。


 カウントは、いつも通り。


 音は、揃った。


 悪くない。

 むしろ、いい。


 ――揃いすぎている。


 コウタは、わずかに指を止める。


 一瞬だけ。


 その遅れを埋めるように、

 音はそのまま続いた。


 ズレない。


 何事もなかったみたいに。


 曲が終わる。


「うん」


 ハヤテが頷いた。


「流れ、きれい」


 コウタも頷く。


「……うん」


 ヒナタは、

 アンプの電源を落としながら言った。


「じゃあ、これでいこう」


 誰も、異を唱えなかった。


 音は、揃っている。


 コウタは、わずかに視線を落とす。


 その揃い方が、

 どこか一つ分だけ、重なっている気がした。

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