緑の少女
「い、いや申し訳ない、少々取り乱したでござる。某の早とちりでござった、輝煌霊が身姿を偽装して、またしても我等が神樹に害なそうと、企みを持って来たのかと誤解してござった、まさか正真正銘の堕天殿であったとは・・・始めて見たでござる。」
ござるが素なのか、それにやっぱり堕天霊とは褒め言葉みたいだな。
それにしても相性と言うよりは普通に仲が悪いって感じだ。
まあ、今の話を聞く限り、コーコ達輝煌霊が、神樹の霊力が失われた事と関係がありそうだな、むしろ実行犯っぽい言い回しだ。
「ますたあ!違うんです!あれは上司に言われて、命令だったんです!で、でも私はみそっか・・・聖天光路のお役目で参加して無いんです、でも他の皆んなの事を誤解しないでください、悪意とかそういうのは無いんです、私達に拒否権なんか無かったんです。」
今、味噌っカスって言いそうになったな。
以前自分を、輝煌熾団の末席を汚すと紹介していたけど、謙遜じゃなかったのか。
でも、偉い精霊である事には変わらないんだから自信を持っていいんだぞ。
「貴女も人聞きの悪い事を言わないで下さい!大体こちらは、その神樹に魔物が取り付いたというので、それの解決に来たんです。貴女も緑森霊ならばきちんと務めを果たすべきでしょう!」
「そちらこそ人聞きの悪い事を言わないで欲しいでござる!そもそも誰のせいだと思っているでござるか!輝煌霊共が神樹の威光を閉ざしたのが原因ではござらんか!あれからというもの、仲間は皆生命の樹へと強制送還され、未だ列柱に座したままなのでござるぞ!某一人で今までこの神樹の森をここまで維持してきたのでござるぞ!」
「ござるござる煩いんです!別に私がやったんじゃ無いし。」
おっと、コーコも頭に血が昇って来た様だな。
「コーコ、人の喋り方をあげつらって、悪く言うのは感心しないぞ。」
いやそっちじゃ無いな。
「それから、元とはいえ仲間のやった事なんだろう?仲間を悪く思わないでくれと言っていたじゃないか、ちゃんと仲間意識を持っているんなら、経緯は知らないけど、ちゃんと謝るべきだ。」
俺は身内には厳しいのだ。
「ごめんなさい。」
早い、早いな、一応悪いとは思っていたんだろうな、やっぱりコーコは素直で良い子だ。
「む、むう、いや某も言い過ぎたでござ、言い過ぎました、堕天殿。」
気にしてるのか、“ござる”って違和感あるけど嫌いじゃない。
もっと言うと、某よりも拙者とかの方が好きだな、単なる趣味だけど。
歴史、時代劇、小説も好きだったしな。
何より拙い者だなんて、へりくだってる感が堪らない、恥ずかしくて自称は出来ないけど。
「緑森霊様も喋り方を変える事はないですよ、良いじゃないですか“ござる”って。」
「惚れたでござる、我ら緑森の口癖を褒めてもらったのは初めてでござる、その寛大さ、内なる輝き、厚かましくも某を眷属の一席に連ならせていただきとうござりまする。」
だから、早いよ。
コーコといい、緑森さんといい、精霊さんの感動ポイントがイマイチ良く分からない、褒めたというより、趣味の話なんだけどな。
「あーっ!!やっぱり狙ってたんですね!首席は私ですよ!」
「な、ち、違うでござる!某はただ、この御方の御心に触れ、感極まってしまっただけでござるよ!」
「フ、フジマサ様、私凄い場面を目撃してます!精霊様を眷属にする瞬間なんて、伝説、いえ、神話のお話です!やっぱり凄いです、本当に勇者様です!」
あのー、盛り上がってますけど、これ俺断れない雰囲気なの?
そりゃ、断る理由は特に無いと言えば無い。
でもあまり大所帯になってくると俺の責任が増えるな。
戦力の拡大と言えば良い様に聞こえるけど、俺は野球部時代も別にキャプテンをやってた訳でも無いし、人を使う事に慣れてないんだ。
それに来るものを拒まずではきりが無い。
「堕天殿、実体化とは一体どの様な気分でござるか?」
「凄く良いですよ!筆舌に尽くしがたいです!全身の、存在の全てをますたあに支配され、認められ、甘受されている恍惚感!これを手放す時はますたあの為に死ぬ時です!」
「おお、昂ぶるでござるな!」
「光の精霊様に神樹の精霊様・・・こんな方々と共にいられるなんて・・・身に余りすぎです。」
・・・・・。
「そこまで言うなら・・・、認めよう。」
無理でした。
土台俺に断る事なんか出来やしないんだ。
俺はNOと言えない、空気に弱い日本人なんだから。
くそ、どうして俺は欧米人に生まれてこなかったんだ?あ、でも欧米には甲子園が無いな、やっぱり日本人でいいや、つまり断れないのは運命なんだ。
「おおおお!!感涙の極みでござる!本地本懐ここに極まれりでござる!身に溢れる光栄でござる!貴方様のご慈悲に深い感謝を。」
本当に泣いちゃったよ。
ミレイちゃんがキャーキャー言ってる。
コーコは然もありなんって風情だ。
まあそうだな、こちらの目的は神樹の魔物退治なのだから、神樹の精霊の力というのは必要だったのかも知れない。
眷属になっちゃったら、もう神樹の精霊じゃなくなっちゃうのかもしれないけど、コーコの様に。
そうか、名前も付けなきゃいけないんだったか?
あれ?別にいけないことはないんだっけか?
まあ、不便だしなんか考えるか。
えーっと、緑、森、みどり、りょく、もり・・・。
「じゃあ、今から君の名前はリーコだ。」
一瞬リョーコとか言いそうになった、さすがにそれはダメだ。
「ぬおお!この上更に名を授けて頂けるとは!!」
あ、だんだん透明感が薄れてハッキリしてきた。
緑の靄少女がマリモ少女みたいになってきて、更にどんどん人間に近付いていく。
深く落ち着いた緑色の髪は黒髪に近いといっても良いくらいで、同じ色の瞳には懐かしさすら覚える。
歳の頃はコーコと同じくらいで、身長もほぼ同じ、そしてその顔立ちは・・・。
「りょおおおこおおお!!」
ダメだった、我慢出来なかった。
気付いた時には飛び掛かって抱き締めてしまっていた。
俺のシスコン疑惑が晴れて、確実になってしまった瞬間であった。
だって仕方無いのだ、涼子とはお互いに死に別れたみたいな状況だった。
その後の事も何も分からないままだった。
ただ女神を信じる他は無かった。
別人なのは分かっている。
それでも衝動は抑えられない。
「ちょ、ま、ますたあ!いきなりどうしたでござる!・・・う、うへ、うへへ。」
「あー!!ますたあ!?そんなズルい!私にだってまだそんな事してくれてないじゃないですかー!!ちょっとリーコ!?なんですかその勝ち誇った顔は!はーなーれーろー!」
コーコに引き剥がされて、我に返った。
しまった!つい衝動に駆られて初対面の少女に抱きつくという暴挙を・・・。
よく見れば、当然だが涼子とは違う、三倍は可愛いだろう。
あ、ごめん涼子、殴らないで、俺は身内には厳しいのだ。
脳内涼子に怯えながらも、言い訳を考えねば・・・。
「す、すまない、取り乱してしまった、その、リーコが、俺の大事な、もう二度と会えない人に、その、似てて。」
天涯孤独設定なんだから、妹に似ているとは言えない。
いや待てよ?死んだ妹がいたって事なら別に大丈夫なのか?
ダメだな、例え言い訳でも涼子を殺す訳にはいかない。
あいつはまだ生きている、俺は信じているのだ。
「フジマサ様・・・よほどお辛い過去があったのですね。」
「ますたあ!私にもやって下さい!」
「催促とは、はしたないでござるよ、コーコ」
お前ら、ミレイちゃんを見倣えよ。
ブックマークが二桁になりました。
読んでくださってる方々、ありがとうございます。
なかなか話が進みませんが、のんびりお付き合いください。




