Episode 4 Dominion Reforge【再鍛造される支配】
今回の話は、組織の内部で静かに積み重なってきたものが、
形として現れ始める章です。
淡々と進みますが、確実に空気が変わります。
旧ヨーロッパ某所。
地下都市の廃墟に、獣型改造人間を主力とする秘密結社が潜んでいた。
Providence Accord の支配を脅かす残党。
アリアはロクスタを単独で送り込んだ。
理由はひとつ。
(組織内でさらに上へ行くために、より強大な力を示す必要があるからだ)
地下都市の広場。
ロクスタの前に、獣型改造人間たちが姿を現した。
トラ型。
ライオン型。
ジャガー型。
鷲型。
狼型。
それぞれが異なる生体モチーフを持ち、筋肉は金属線維で補強され、爪は刃物のように光り、牙は鋼鉄を噛み砕く強度を持つ。
「たった一人?
まさか……
Providence の怪物?!
……そうだとしても、一人とは。
舐めるな!!」
トラ型が地面を蹴った。
床が砕けるほどの踏み込み。
ロクスタは静かに息を吸った。
「……起動」
甲殻が盛り上がり、複眼が光を吸い込む。
強化装甲が展開し、ロクスタの体を覆う。
トラ型の拳がロクスタの胸部装甲に直撃した。
ガンッ!!
金属がぶつかる重い音。
ロクスタは微動だにしない。
「なっ……!」
ロクスタはトラ型の腕を掴んだ。
そのまま床に叩きつける。
ドガッ!!
床が陥没し、トラ型が呻く。
ライオン型が背後から飛びかかる。
鋭い爪がロクスタの首元を狙う。
ロクスタは振り返らない。
右肘を後ろへ突き出した。
ゴッ!!
ライオン型の顎が砕け、吹き飛ぶ。
ジャガー型が低い姿勢で接近し、
高速の連撃を叩き込む。
ロクスタはすべて受けた。
装甲に火花が散る。
そして――
ロクスタはジャガー型の拳を掴んだ。
「……遅い」
ロクスタは拳を握り潰し、
そのまま膝蹴りを叩き込む。
バキッ!!
ジャガー型の胸部装甲が割れ、地面に崩れ落ちた。
鷲型が空中から急降下する。
翼の金属刃がロクスタの頭部を狙う。
ロクスタは左手を上げた。
鷲型の翼を受け止める。
ギギギギ……
金属が軋む音。
「離せぇぇ!」
鷲型が力を込めるが、ロクスタは微動だにしない。
ロクスタは鷲型の翼を引き寄せ、
そのまま地面へ叩きつけた。
ドガアッ!!
鷲型の翼が折れ、悲鳴が響く。
狼型が背後から噛みつこうとする。
ロクスタは振り返り、狼型の頭を片手で掴んだ。
「……終わりだ」
ロクスタは狼型を床に叩きつけ、
そのまま頭部を押し潰した。
広場には、獣型改造人間たちの残骸が散らばっていた。
ロクスタは静かに立っている。
アリアは遠隔映像を見ながら、
冷たい瞳で呟いた。
「……私に逆らおうって連中も、この映像で理解できたかしら?」
・
・
・
Providence Accord 本部。
数日後、任務を終え帰還したアリアは、更なる地位を手にした。
幹部の中で頭一つ抜けたアリアに、表立って対立する者はいなくなった。
そして、数日が過ぎたとき、アリアの居住区に刺客が現れる。
鳥類型改造人間。
鷲のような鋭い翼を持ち、爪は金属の刃のように光る。
「アリア・ハーシェル……死ね!」
鷲型が翼を広げ、アリアへ飛びかかる。
その瞬間――
ロクスタが変身した。
「起動ォ!!」
甲殻が盛り上がり、複眼が光を吸い込む。
強化装甲が展開し、ロクスタの体を覆う。
アリアを守るために前に出る。
アリアを襲おうとした鷲型の爪がロクスタの胸部に当たり、火花が散る。
「クッ、クソッ!!!」
ロクスタは鷲型の足を掴んで引き寄せると、翼を掴む。
「はっ、放せッ!」
そのまま振りかぶり、鷲型を床に叩きつけた。
ドガッ!!
鷲型の翼が折れ、悲鳴が響く。
ロクスタは拳を振り下ろす。
鷲型の頭部が砕けた。
アリアはその光景を見て、静かに言った。
「ご苦労さま」
ロクスタは、変身を解く。
「……相手は、隠す気はないようだな」
「そうね。
本部の居住区に刺客を送ってくるなんてね」
「……俺は、お前から離れない」
「フフ、ありがとね、ロクスタ。
さて……贈り物のお返しは、なにがいいかしら」
アリアは、ロクスタに微笑んだ。
・
・
・
数日後――
刺客を送った幹部の屋敷に、ロクスタが現れた。
夜の静寂。
風の音。
その中に、甲殻が軋む音が混ざる。
「来るな……来るな……!」
幹部は叫びながら後退した。
ロクスタは歩く。
ただ歩く。
アリアに害を及ぼした者を排除するために。
「やめろ!
私は……私はアリアを殺すつもりじゃ、そうだ、おどろかせるつもりで――」
「お前が、正解か」
アリアから教えられた容疑者候補を何人かを襲撃したが、4件目で正解にたどり着いた。
やる事は変わらない。
「拳を振り上げ……」
「や、やめて!
金なら、金ならいくらでも――」
「拳を下すだけだ」
ドガッ!!
幹部の体が壁に叩きつけられ、
そのまま動かなくなった。
・
・
・
アリアは出世した。
敵対幹部は次々と失脚し、まあ失踪者や不審死した者も多いが、兎に角、表立ってアリアに逆らう者はいなくなった。
ロクスタという絶対的な力。
その存在が、Providence Accord の幹部たちを沈黙させた。
「……やりすぎじゃないのか?」
「上にあがる為に必要なことよ」
「目的は、理解している。
だが、お前が危険な――」
「いいから!
心配する暇が合ったら、一人でも敵を殺しなさい!
私は、もっと上に上がらないといけないんだから!」
「……お前が望むなら、いくらでもやる。
ただ……それでも、お前が心配だ」
「だまれ、だまれ、だまれ!
私の手は、もう血で汚れている。
戻る事なんて、出来ないのよ!
心配されたところで……
もう、進むしかないのよ!」
ロクスタはわずかに視線を落とした。
「ロクスタ。
命令よ。
この前のリスト、今から全員始末しなさい」
そう言い残すと、アリアその場を立ち去った。
ロクスタは、アリアの心が少しずつ遠ざかっていくのを感じていた。
・
・
・
ロクスタに暗殺指示をだした後、アリアは、予定通りProvidence Accordの仕事の為、改造人間プラントへの視察に向かう為の車中にいた。
その時!
車列の前に襲撃者が現れた。
アリアは、襲撃者の姿に驚愕する。
「あ、アレって……
開発中だった新型改造人間じゃない……完成していたの?」
黒い甲殻。
鋭い四肢。
複眼が赤く光る。
昆虫でも獣でも鳥でもない。
複数の生体モチーフを混合した“複合型”。
Providence Accord の最新型。
「早く出して!
逃げるのよ!
奴は、ロクスタと同等の力をもっているのよ、死にたいの!」
声を荒げて運転手に指示を出すアリア。
「は、はい!」
慌てて、アクセルを踏もうと運転手が行動した時、
「アリア・ハーシェル……ここで終わりだ」
新型が跳躍し、アリアの車を切り裂いた。
アリアは吹き飛び、地面に叩きつけられる。
「ぐっ……!」
骨が軋む音。
呼吸が乱れる。
その瞬間――
遠くからエンジン音が響いた。
「……この音……」
アリアがかつて、ロクスタに与えた専用装備のひとつ。
離れることはないから、使うことはないと言いつつ、後ろに乗せてもらって走ったバイク。
辛い時、嫌な事が合った時、ロクスタが連れ出してくれたバイクの音。
「……ロクスタ」
ブオオオオオオーーン!!
黒い車体が闇を裂き、マフラーが火を噴き、ロクスタはバイクを跳躍させた。
「許さんぞ、貴様ぁ!
ッ起動ォォォオオオ!!」」
空中で甲殻が盛り上がり、装甲が展開する。
変身したロクスタが、新型へ拳を叩き込む。
ドガアアア!!
衝撃で地面が陥没する。
新型の腕が折れ、甲殻が砕ける。
「やっと現れたな!
楽しませてくれよ、ロクスターー!!」
新型も反撃する。
ロクスタの胸部装甲に爪が食い込み、火花が散る。
互角だった。
初めての、互角の敵。
「ロクスタ!」
アリアが叫ぶ。
ロクスタは振り返らない。
余裕がない。
拳の打ち合い、蹴り、高速の攻防、集中。
ただ、互いを倒すために二つの化け物が攻撃を続けている。
死闘は数分続く。
邪魔にならないように離れているアリア。
ロクスタはアリアに被害が出ないように細心の注意を払う。
「フハハハ、いいぞ、いいぞロクスタ!
想像以上だ!
もっと、もっとだ、こい!」
「おしゃべりな奴だ。
ちょっと黙ってろ!」
殴りあう両者。
攻撃がとまらない。
「どうして、力を開放しない!
お前ももっとやれるんだろう?」
ロクスタも自覚していた。
しかし、今の第一優先は、アリアを無事に家に帰すこととロクスタは決めていた。
「黙れ、今殺すから」
ロクスタが、フェイントを入れてのローを放つが、相手もローを返す。
「……俺が、お前の枷をはずしてやるよ」
そう言うと、ロクスタに背を向けアリアに向けて走り出した!
「貴様!」
ロクスタはすぐ追うが、距離が縮まらない。
ケガを負うアリアが逃げようとするが、走れない。
その時、本部からヘリと数台の装甲車が新型怪人とアリアの間に割って入る。
「……遅いのよ」
戦いが始まって、本部に連絡していたアリア。
救援部隊が駆け付けたのだ。
変身する部隊の隊員達。
銃を向ける部隊。
空からも新型怪人を狙っている。
「やめだ、やめ。
ロクスタ。
邪魔が入って、やる気が無くなったから帰るぞ、俺は」
やる気をなくした新型怪人がロクスタの方を向いて言った。
「……帰れるとでも?」
アリアを傷つけられ、頭に来ているロクスタ。
「焦んなよ、ロクスタ。
俺は、Apex
Apex Judicatorだ。
覚えとけ、また、遊んでやるからよ」
そう言うと、エイペックスは逃げ出した。
直ぐにロクスタは追おうとしたが、
アリアの生命兆候が乱れたため、追撃を中断した。
・
・
・
病院。
アリアは横になっていた。
体は傷だらけだった。
ロクスタがそばに座る。
アリアは弱い声で言った。
「……ロクスタ……
あなたが……来てくれて……よかった……」
ロクスタは静かにアリアを抱き寄せた。
アリアはその胸に顔を埋めた。
「……離れないで……」
「離れないから……ずっと、一緒だ」
ロクスタは答えた。
その声は、どこか人間に近かった。
・
・
・
数年後――
アリアは Providence Accord の大幹部となった。
中枢メンバーの一人。
世界国家の頂点が見えた。
復讐は、もうすぐ達成する。
手が届くところまで来た。
アリアは深く息を吸い、
大幹部会議室のドアを開けた。
読んでくださり、ありがとうございます。
この章では、組織の“内側の温度”を少しだけ描きました。
物語はまだ静かですが、確実に次へ向かっています。
もし楽しんでいただけたら、評価やブクマで応援していただけると嬉しいです。




