第31話 足掻く傀儡
深夜。
草木が眠りにつき、日付も変わろうとする頃、豪奢な皇宮の1つ部屋に、照明魔法が灯っていた。
「結果がでたよ」
穿真の声に奏斗は顔を上げる。
穿真の私室には、穿真、燈司、奏斗の地球人三人組が集っていた。
彼らには既に、昼の事件を教えている。
「呪いだ。それもかなり高度なようだね。魔法の位で示すと……、精級ぐらいかな」
「それほどにか……」
「俺が知りたいのはそこじゃない」
「なに……?」
穿真が不思議そうな目で奏斗を見やる。
「お前らさ、俺に何か隠してるだろ」
「……友人といえども、隠し事程度はすると思うが?」
「そうじゃなくて、俺自身の事だ。もっと言えば、俺の両親。
さっきも言ったが、あの戦闘狂種の婆さんはこんな事を言っていた。
悪魔、復讐、抵抗……。そして俺を悪魔の息子、と言ったんだ。
俺には何のことか分からない。だが、お前らなら何か知っているんじゃないのか? 『召還者』の先輩なお前らならさ」
返事は無かった。ただ重い沈黙が部屋を満たすだけだ。
しばらくして、穿真が席を離れた。どこかから酒を持ち出してきて一言。
「長くなるからさ、酒でも飲みながら話そうか」
「……穿真、良いのか?」
「本人が知りたいのだから良いんじゃない? 別に責められることでもないし」
「……それもそうか」
軽い微笑を浮かべて言い放つ燈司。2人の顔に寂しげな雰囲気を奏斗は感じた。
「君もどうだい?」
「そりゃ飲むけど、お前らは飲めるのか?」
「多少は酔うだろうね」
「いいのかよ……」
「酔いに任せなきゃ話すこともできないさ」
用意された3つの杯に穿真は酒を注ぐ。匂いからして果実酒の類かもしれない。相当強い酒だと奏斗は予測したが穿真は薄めるつもりはないらしい。
氷すらも入れず、穿真は酒を呷る。
「そもそも、君はどうしてオルフェリアに来たんだい?」
不意の質問に奏斗はたじろいだ。
「どうして、って言われても……、ほとんど興味本位としか」
「興味だけでこの世界に来たのか。相変わらず愉快な男だね」
「愉快……だと?」
「それでもここまで生き残ってきたんだ。たいしたものだよ」
褒めているのか罵っているのか知れない言葉を発しながら、穿真は空の杯に酒を注ぐ。
「何から話そうか……。君は『召還者』がどういうものか分かっているかい?」
「いいや、まったくだ。オルフェリアを創った神々の末裔なのだろうと思っていたが……」
「今はそういう根本的な話はしない。世界中には何千人単位の『召還者』がいる。このことを頭に入れてくれ」
酒の効果が出ているのか、燈司も喋り出した。
「……無論、それだけ多いと上に立つ者が存在する。日本の場合、それは真宮家にあたる」
「俺の家が?」
「名前からしてそうだろう? 真の宮と書いて真宮。天皇よりも尊ばれるべき者だ」
「でも、」奏斗は即座に否定する。
「俺の家はそんなたいそうな扱いされていなかったぞ?」
「……その理由は大きく分けて2つある。
1つは……、戦後に日本を改革したGHQの占領。……財閥解体や軍隊廃止などの表の改革の他に、彼らは裏の改革も行っていた」
「裏の改革?」
「……『召還者』の弱体化だ。日本の『召還者』は未成年者──20歳以下しか務めることができず、初めてオルフェリアを訪れる際、他の『召還者』と行動するなと……、そういう枷をはめた」
「そのために戦後の『召還者』の数は激減したんだ。世界での発言力をだいぶ衰えた。日本の代表である真宮家が、君1人しかいないのが顕著に表しているね」
「……もう1つは、俺たちの1つ上の世代が起こした、宮裂動乱だ」
「なんだ、それ?」
ずいぶん物騒な名前だ、との感想を奏斗は持った。おそらく、その中に両親の真実があるのだろう。奏斗は生唾を飲む。
「さっき言ったけど、日本の『召還者』は初めてオルフェリアを訪れる際は単独で、という決まりだ。加えて、真宮家にはオルフェリアを訪れるその日まで『召還者』である事を伏す、と決められている。
君もそうだったろう? おかげでファンタジーな物語の始まりを体験している気分になるらしいね」
「そこまで浮かれていたつもりは……」
「……お前はまだマシな方だ。お前よりも前の世代では……、ほとんどがズブの素人。死亡率80%越えという地獄だったそうだ……」
「なかでも大変だったのが僕らの一つ上、親の世代だ。ここからが宮裂動乱の話になるんだけど……」
「簡単にいえば……、愛と勇気の壮大なラブストーリー、だ」
「は?」
目を白黒させる奏斗に構わず彼らは続ける。
「大体30年くらい前かな。
真宮家には適正な『召還者』が2人しかいなかった。真宮将吾と真宮莉子の兄弟だ。
当時の日本は『召還者』としての影響力が衰えていた。先進国とは思えないほどにね」
「……そこで真宮家は、真宮莉子を英国の名門召還者一族ブライトン家に嫁がせようとした。名門とのパイプを作り……、影響力を少しでも強くしたかったのだろうな……」
「国内の反応は上々。けど、1人だけ反対の意を唱える者がいたんだ」
会話の合間に、彼らは少しずつ杯を傾けていた。酒瓶は空になり、穿真は一旦席を外す。
「……真宮将吾だ。彼は真宮家が妹の考えを無視していると……、真宮家に正義はないと声高々に主張した。なまじ真宮家の人間の言葉だ……、感化され彼の味方につく者も多く、……あっという間に日本の『召還者』は二分されることになる」
「ずいぶんとかっこいい真似をするじゃないか、その将吾さんって人。まさしく主人公だな」
「ここまでなら、そうだろうね」
穿真が戻ってきた。彼は持てるだけ持ってきた酒瓶を、テーブルにコツコツと置きながら語る。
「この後に、彼は英国に向かおうとしていた真宮莉子を拉致、賛同者と共にオルフェリアに避難するという……、物語の主人公級な活躍をするんだ。
真宮将吾の判断は正しかったよ。オルフェリアは広さで言えば地球よりも狭いけれど、未開拓な土地であふれている。東西南北どれかの未踏地に行って、開拓を進める冒険者に紛れていれば、見つかる可能性は限りなくゼロに近いだろうね」
にもかかわらず、と酒瓶の栓を開けながら穿真は、
「真宮家は何の迷いもなく彼ら2人を追った。その必要は無いというのにね。
だってそうだろう? 後継者が欲しいというのなら、真宮家の誰かが子供を産めば良い話だ。賛同者を取り返したいのなら、早急に真宮将吾と和解すればいい。
2人がオルフェリアに逃げ込んだ時点で、この騒ぎは終わっても良かったんだ」
「……だが現実に、真宮家は2人を追った。
今となっては知る由もないが……、英国の後押しがあったと見るのが主流だ」
「英国が?」
奏斗の疑問に、会話が止まった。穿真は酒瓶から琥珀色の液体を杯に注ぎ、水で薄める。その間に奏斗はタバコに火をつけ、魔力を大量に含む煙を吸い込んだ。香草(ホントは魔草というらしい)のスッキリとした香りが、奏斗の体から眠気を駆逐する。
「真宮将吾が真宮莉子を拉致したことで、英国が対立したのさ。真宮側につくという形でね。影響力の強い英国の言葉を日本は無視することはできない。日本の20歳以上の『召還者』がオルフェリアに行けたのも、英国が許可したから、らしいよ。
こうして日本は、まんまと英国の言いなりになってしまったんだ」
酒を少し飲んでみると、奏斗には前の酒よりも甘く感じられた。下に残る独特の余韻からして、蜂蜜酒だ。相当薄くしている。
「穿真、俺の分もうちょっと濃くしてもいいぞ」
「いいのかい?」
「このままでも良いけど……、やっぱ薄いな」
短くなったタバコの火を消し、携帯灰皿へ。タバコを吸う人間には必需品だ。
「話を戻そう。
数年にわたってオルフェリアで繰り広げられた戦闘は、一方的だったらしい。真宮将吾1人が数千人の『召還者』を相手にして、その半分を屠ったんだ」
「無双かよ……」
「その表現が一番適切だろうね。
真宮家が壊滅寸前まで追い詰められて、やっと英国は手を引いた。真宮家側は急いで真宮将吾と和解し、ある条件を作ってこの動乱は幕を閉じたのさ」
「力関係が逆転したのか……。で、ある条件って?」
「一つは、真宮将吾と真宮莉子の2人のみが真宮家本家であるとし、それと対立したいわば“旧”真宮家は為宮家と姓を変えること。
もう一つは、真宮家本家の後継者──要は一番早く産まれた子を日本に残すこと」
「ふぅん……。ということは、俺の親をどちらかはオルフェリアの人間なのか?」確信を得て弾き出した答えは、
「いや、違う」寸分も置かずに否定された。
「え? それじゃ……」
そして、解答が告げられる。
「君の親は真宮将吾と真宮莉子。
つまり君は、禁じられた近親相姦の末に産まれた子で、『召還者』の血が僕らよりも濃いんだ」
言葉が、出なかった。
脳は驚愕で思考が停止し、舌は鉄塊を縫いつけられたように動かず、喉は干上がって震わすことが能わない。
「なん……で、だ。その兄弟は互いに愛し合ってでもいたのか?」
かろうじて出てきたのは疑問。答えが何であったとしても、奏斗には尋ねることしかできない。
「正確には、NOかな。
俗っぽい言い方で悪いけど、真宮将吾が重度のシスコンというのでね。真宮莉子は大方、兄の愛とやらにあてられて洗脳でもされたんだろう」
ただただ、唖然とするよりほかなかった。
いかに奏斗が幼少期から修業を受け、肉体をどれほど鍛えても、中身は所詮、21世紀に生きる高校生だ。彼の頭に刷り込まれた『常識』では、到底理解することなどできない。
「狂ってる……」
「君がどう思おうが勝手だけど、結果として君が産まれて此処にいるのは事実だからね。両親はともかく、自分まで否定していいのかな?」
奏斗はうつむいた。穿真の言葉通りだった。
強い忌避感に苛まれるが、それは同時に自分をも責めている。相反する感情がせめぎ合い、真宮奏斗という存在が揺らいでいた。
「心情察するけど、君には覚えていてほしいことがある」
「まだあるのか……?」
「動乱の結果、日本の『召還者』がうけた被害は甚大だ。対立する2つの勢力ができて、国内の『召還者』の数が減少。日本の地位は以前よりも墜ちてしまったんだよ」
「……被害は日本だけに留まらず、オルフェリアにまで及んだ。数え上げればきりがないが……、あえて例をあげるとすれば、戦闘狂種の虐殺だろうな」
「虐殺、だと?」
「おそらくだけど、君の呪いもそれに起因してるんじゃないかな。
まぁ、とにかく君の両親は色々と“やらかした”」
穿真は杯の蜂蜜酒を飲み干して、
「親の損失は、子供が払うのが義務ってものさ。君には、2つの世界に尽くす理由がある。
分かるかい? 君の人生はもう設計済みなんだよ」
●
──黒の月シェニの9日
決闘当日のその日は、冬だというのに雲一つ無い青空だった。久方ぶりの陽光が、寒さにかじかむ皇都を暖かく照らす。
だというのに、奏斗の心はまったく晴れなかった。
ティナや仁菜、シスカから励ましの言を貰ったが、奏斗の頭には昨夜の会話がこびりついて離れない。
自分とは一体どういう存在なのだろう、とふと奏斗は思う。
日本でも、オルフェリアでも彼はできうる限り精一杯生きて、人生を楽しんできた。辛いこともあったし、人間の闇を見たこともあったが、それでも生きることは楽しいと奏斗は胸を張って言えた。
だが、今は違う。自分の人生が、仕組まれていたものと知ってしまったのだ。経験してきた喜びも苦しみもすべて嘘。幻想。もとから利用される為だけに生かされてきた。
1人になりたい、と奏斗は願う。今の彼には信用できるものが何一つ無かった。事実、穿真と燈司は意図的に奏斗の友人になったとあの後聞いている。
逃げ出したい。全部をかなぐり捨てて、どこかに行きたい。
それは、絶対に叶うことはない。奏斗は誰かの手のひらで踊ることしかできないのだから。
初めから終わりまで設計済みの人生。敷かれたレールを走るなんてものではない。
生きる意味が、今更分からなくなった。
けれども、彼は進まなければならない。立ち止まることは許されない。ましてや、振り返ることも。今だってそうだ。兵士に案内され、奏斗は闘技場へと足を踏み入れる。
観客の歓声が、酒に毒された脳を揺らす。頭痛と軽い吐き気を感じたが、それだけだ。不快感に耐えながら、顔に期待の念をうかべた熱狂的な観客を見渡してみると、ある疑問が彼の頭に浮かんだ。
(この状況も、“仕組まれたもの”なのか?)
そうとは考えられない。根拠はある。勇者との決闘が決まったあの瞬間、“仕組んでいる側”の穿真と燈司は明らかに焦っていた。
“仕組んでいる側”からすれば、事態はイレギュラーな方向に向かっているのではないのだろうか。
(この決闘の結果次第で、今後の運命が変わってくる)
奏斗は確信した。疑いようがなかった。となれば、道は2つ。
(勇者に負けるか、勝つかの2択だ)
前者を取っても、状況は変わりないだろう。しかし、後者ならば、
(ほぼ無名の俺が勇者に勝てば……、世界の流れが変わるかもしれない)
世界の流れが変われば、さらにイレギュラーな事態が起こり得る。仕組まれた人生から抜け出せる可能性が高くなるのだ。
(上等……!)
超えるべき壁はあまりにも高い。もし超えたとしても、その先に広がる道は間違いなく茨に覆われていることだろう。
奏斗のしようとしている行動は、ひどく自分勝手だ。日本やオルフェリアの事情は完全に度外視されている。
だとしても、彼は行動を止めない。今から始まる決闘は自分を取り戻す戦いの狼煙だ。
(目標ってものは良いな。生きる活力が沸いてくる)
自然と口元が緩む。いつの間にか彼は笑っていた。意志を確認するように彼は呟く。
「俺は、俺自身を取り戻す」
その言葉は歓声にかき消されてしまったが、自らを奮い立たせるには十分だった。
歓声が爆発する。
勇者のご登場だ。謁見で見た豪華な鎧や武器は無いが、それでも勇者の姿は勇ましいの一言に尽きる。顔つきは神話の英雄を彷彿とさせ、筋肉で包まれた肉体は一種の芸術品だ。
この男が世界を救うと言い出しても、馬鹿にする者はいないだろう。むしろ、適役だ。英雄という言葉をその身をもって体現している。
決闘の詳しいルールを皇自らが説明する。武器は木剣のみ。その他の防具や魔装は禁止。ただし魔法は有効。戦闘不能と判断されるまで、決闘は終わらない。
身震いするような恐ろしいルールだが、まだマシだと奏斗は思う。あの厳つい鎧がデカい大剣2つでこられたら、勝ち目どころか命だって無くなりそうだ。
「構えっ!!」
木剣を構える奏斗。だが、勇者は構えようともしない。自然体だ。
(無形、ってやつか)
関心する間もなく、
「始めっ!!」
決闘の開始が告げられた。
奏斗は何の迷いもなく勇者は懐へと突っ込む。勇者が驚いたような顔をするが、奏斗は気づかない。
間合いが詰まり、奏斗は一閃。振り上げられた木剣が、勇者の脳天に振り下ろされる。剣道の面に似た剣筋だ。
「危ねっ!」
勇者は後ろに下がってこれを回避。が、奏斗の動きは終わらない。
振り下ろした勢いを利用して、奏斗は地面すれすれまで沈み込む。
地面を叩く音が響いた。下がっていた左足が、体重を乗せて前に踏み出された音だ。同時に奏斗は手首を返し、木剣を勇者の右すねめがけて振り抜く。
「痛ってー!!」
勇者の情けない悲鳴と、何かが折れた音が鳴った。しかし、発声の元は勇者の右脚でなく、奏斗が手にしていた木剣だ。
(なっ……!?)
驚く暇はない。
「コノヤロッ!」
勇者の木剣が、奏斗に突きを放ってきたのだ。
急いで奏斗は《ストロン》で左後方に跳躍。観客の盛り上がりは最高潮だ。
奏斗の背に冷たい汗がつたう。
(折れるとはね……)
木剣の断面を見やる。鋭く尖った断面で突き刺せば効果があるかもしれないが、剣としての役割は果たせそうにない。
ふざけた野郎だ、と奏斗は毒をつく。魔法を使われていた感覚は無かったし、剣を通した感触も生身のそれだ。ということは、勇者の肉体は強化加工された木剣よりも硬いことになる。
(はじめから勝ち目ナシか)
奏斗は木剣を放り捨てた。武器が役に立たない以上、自身の肉体で闘うしかない。
その時だった。勇者に動きがあったのは。
左手を払うような動作だ。奏斗の頭は、瞬時にして魔法の発動を悟った。遠距離で繰り出される魔法となると、ある程度威力の高い魔法に限られる。小細工ナシの大胆な攻撃である。
奏斗は勇者の視線を観察して、“狙い”を探ろうとするが、
(左指先?)
どういうわけか、視線の先に奏斗はいなかった。自分の手の先を見つめている。
訝しく思う必要はなかった。直後に答えが出たからだ。
勇者が軽く振った指先に、四角い枠が表示された。一瞬『ホログラム』という言葉が思いつくが、奏斗はすぐに否定する。ここはオルフェリア。21世紀の地球ではない。
勇者は四角い枠の中で指先を動かしている。闘いの場ではひどく違和感があるが、その動きは奏斗に見覚えのあるものだった。
(スマートフォンの操作……?)
日本で広く使われている携帯端末の操作法だ。だとしたら、勇者は“何か”を操作している。自分が見慣れたやり方で。
疑問が疑問を呼ぶが、すべてを解決する事はできなかった。勇者が奏斗にニヤリと微笑み、握りしめた左手で枠を殴ったのだ。
直後に勇者の体が白く光り出した。光の中には「equipment」との文字が見える。
「『equipment』……? 『装備品』?」
奏斗には、訳が分からなかった。聖句として漢字が使われているのは知っているが、アルファベットは初耳だ。
まずい、と奏斗は直感で判断する。何がどうなっているか知れないが、あの光は、「equipment」という文字は、不吉な予感をはらんでいる。
奏斗は勇者へと突っ込んだ。肉体はもう白属庶級:《ストロン》で強化済みだ。速度のままに蹴りを放てば、勇者とて何らかのダメージを得るだろう。
しかし、その判断は遅すぎた。両者の間合いが詰まるその前に、白い光は弾け、勇者の全貌が明らかとなる。
その光景に、奏斗は進むことを止めた。
「嘘……、だろ。嘘だろ!?」
先程まで木剣に質素な綿の服装だった勇者は、巨きな大剣2つを手に持ち、魔金と魔銀の豪奢な鎧を身にまとっていた。謁見で見た、あの雄々しい勇姿だ。
観客の興奮が限界までに達した。
「さぁここからだぜ、加護者ぁ!!」
雄々しい勇者の雄叫びが闘技場に木霊する。
「勘弁してくれ……」
絶望に震える奏斗は、弱々しく呟くことしかできなかった。




