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完結済『あの時のように~いつまでも変わらない愛を~』  作者: かわなかいっぱん


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第57章 リノとの距離

それから数週間が経った。

リノも仮免許を取得し、路上教習へ進んでいた。

路上教習は、実際の試験コースで行うことになっている。和泉市にある光明池運転免許試験場の周辺一帯が、路上試験のコースだった。

そのため、生徒を迎えに行って泉北まで往復するだけでも、かなりの移動距離になる。

その日は、リノの路上教習だった。

普段、リノは難波に住んでいるが、専門学校の運動会が長居公園で行われるため、迎えはそこになっていた。

指定された時間に到着し、待っていると、リノが数人の女の子を連れてやってきた。

僕を指差して、何やら楽しそうに話している。

リノが運転席に乗り込むと、友達が「撮って!」と言って写真を何枚か撮り始めた。

なぜか、頭に赤いポンポンの付いた帽子までかぶらされた。

どうやら友達は、リノの好きな人がどんな男なのか、わざわざ見に来たらしい。

「リノの好きな人がいるから、見て!」

そんな感覚なのだろう。

……まあ、悪い気はしない。

WJDSドライビングスクールでは、仮免許を取得した生徒には、迎えに行った場所から運転してもらうことになっている。免許を取ってすぐに街中で運転できるよう、普段走る道を先に経験してもらうためだ。

つまり、今日がリノにとって初めての路上運転だった。

リノは、僕の指示に従いながら順調に走り始めた。

長居公園から光明池までは、およそ三十分から四十分。

しばらく運転が続いたところで、リノが尋ねてきた。

「大野さんから聞いた? コンパのこと?」

「ん? なにそれ?」

「今度、五対五でコンパする約束したから、タケトも五人集めといて!」

……マジか。

そんな話が、いつの間にか陰で進められていたとは。

五人か。

直樹、藤田、大野さん、僕、そして同業者で同い年の岡本。

岡本もなかなか面白い奴だ。メンバーはこれでいいだろう。

その後は、いろいろな話をした。

リノの地元のこと。僕の地元のこと。リノの元カレのこと。

そして、僕も美咲のことを話した。

「そっか~。そんなに長く続いた彼女がおったんやね……。つらい?」

リノが尋ねた。

「つらい……。正直、寂しいよ……」

そう答えると、リノは少し間を置いてから言った。

「じゃあ、あたしじゃ癒やしにならんかな……?」

「え! リノ! 俺、リノより八年も上やで! 何考えてんの?」

「年なんか関係ないし……」

リノは、前を向いたまま運転を続けていた。

「そう言われたら、そうかもしれんけど……」

僕がそう返すと、リノはさらに踏み込んできた。

「今度、タケトの部屋、遊びに行っていい?」

……困った。

こんな中途半端な気持ちのまま、リノを部屋に呼んでいいのだろうか。

僕が返事に迷っていると、リノは笑みを浮かべた。

「冗談! でも、またそのうち行く」

かわいい。

そのことは否定できなかった。

ただ、リノが冗談で言っているのか、本気なのかは分からない。

地方から出てきた若い子が、軽い気持ちで男と遊びたいだけなのかもしれない。

美咲だって、もう彼氏ができている可能性はある。

少し遊んだところで、結婚するわけでもあるまいし……。

久しぶりに、僕の中の悪魔が目を覚まそうとしていた。

そんなことを考えながら、なんとか路上教習を終え、リノを送り届けた。

その日は、久しぶりに早く帰ることができた。

時刻は、まだ午後七時。

僕はソファに倒れ込んだ。

このソファでは、以前、美咲と愛し合った。

そのことを思い出し、僕は急いでパソコンの画面を開いた。

「You've Got Mail」

メールの通知音が鳴った。

もしかして……。

期待しながらメールを開くと、やはり美咲からだった。

どうやら、届いたばかりらしい。

『ダーへ……

お~い、生きてるか~ww。

私は今、絶賛花嫁修業中~!

ダーは? 元気?

リオデジャネイロとは? どうなった?

あまり遊びまくってたら病気うつされるで! リオデジャネイロやし!

salut misaki』

なんちゅうメールだ。

中身は薄っぺらいし、リオデジャネイロって……悪意ありすぎやろ!

そう思いながらも、少し笑ってしまった。

僕は返信した。

『花嫁修業?

お前なんか、嫁にもらってくれる人見つかったんか!?

それに、リオデジャネイロって何なん? わからんし!』

数分後、返事が来た。

『ダーへ……

嫁の行き手は引っ張りだこや!

わたしやで!

リオデジャネイロと付き合ってるんちゃうんか!

salut misaki』

「付き合ってるんちゃうんか……」

付き合ってはいない。

けれど、気になっているのは確かだった。

でも、こいつに言う必要なんてない!

僕はすぐに返信した。

『ハイエナ美咲へ……

嫁の行き手? 引っ張りだこ?

わらえる!

卵焼きも作れん奴がよう言うわ。

大体、リオデジャネイロちゃうし、リノやし!

付き合ってないし!

付き合っても言わんし!』

五分も経たないうちに、また返事が来た。

『クソやろーへ……

誰のために花嫁修業してると思ってるねん!

なにが「リノ」じゃ!

「リオデジャネイロ」で十分じゃ!

salut misaki』

……誰のために?

僕は慌てて返信した。

『みーへ……

花嫁修業って……僕の為?』

すぐに返事が来た。

『ダーへ……うぬぼれるな!世の男性達のためや!

リオデジャネイロでもどこでも行ってこい!salut misaki』

……僕のためじゃないんかい!

思わず、心の中で突っ込んでしまった。

もう返信する気にもなれず、僕は風呂に入ることにした。

湯船につかり、ゆっくりと身体を温める。

ふと浴室の折戸を見ると、今にも美咲が服を着たまま入ってきそうな気がした。

いや、入ってきてほしかった。

あのときは興奮したな……。

どこへ行っても、何をしていても、美咲の存在が頭から離れない。

どうすれば、この気持ちは収まるのだろう。

ほかの女性を抱いたら、忘れられるのだろうか。

リノでも抱いたら、何かが変わるのだろうか。

分からない。

そんなことを考えながら、僕は湯船に潜った。

頭の中で秒数を数え続ける。

百秒を超えた。

そして――。

百十八秒!

限界だった。

「おっし! 新記録や!」

僕は叫びながら風呂から上がり、全裸のまま部屋を歩き回って、そのまま寝てしまった。



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