第46章 みー母攻略作戦
翌日から、「みー母攻略大作戦」が始まった。
まずは、美咲自身から、もう一度お母さんを説得してもらうことにした。
しかし、結果は予想どおりだった。
「会いません!」
お母さんは、取りつく島もなく、そう言い張った。
それどころか、
「まだそんなわけの分からん人と付き合ってるの?」
と、逆に釘を刺される始末だった。
まあ、ここまでは予想どおりの反応だ。
問題は、ここからどうするかだった。
その日の夜、僕たちは田島家で食事を済ませ、僕の部屋で二人きりの作戦会議を開いていた。
「じゃあ、周りから攻めてみるのはどう? 例えば、お父さんからとか?」
僕が提案すると、美咲は首を横に振った。
「お父さんに発言権はないねん……」
(何ちゅう家族や……)
心の中でツッコミを入れながら、僕は次の案を出した。
「じゃあ、お兄さんは?」
美咲には、二つ年上のお兄さんがいるはずだった。
「お兄ちゃんは、そんなの全然興味ないねん」
美咲は悔しそうに肩を落とした。
そうか……。
となると、やっぱりお母さんに直接ぶつかるしかない。
僕は腕を組み、しばらく考えた。
そして、ふと思いついた。
「お母さんと、ばったり会う作戦はどう?」
「はっ!」
美咲は何かひらめいたような顔をして、身を乗り出した。
「それ、どんなん!?」
「お母さんがいつも買い物に行くスーパーで待ち伏せするねん。そこに俺たち二人が通りかかる。そしたら、『あれ? お母さん?』『あ、こんにちは!』みたいな感じで、自然に会うねん。どう?」
「うん! それ、いいかも!」
美咲も乗り気になった。
さっそく週末に向けて、お母さんの動向を探り、予定を聞き出した。
どうやら週末の午後から、お父さんと一緒に近くのショッピングセンターへ行くらしい。
よし、チャンスだ。
僕たちは、その週末に作戦を決行することにした。
決行当日。
僕たち二人は、お母さんが現れるというショッピングセンターの駐車場入口付近で待ち伏せしていた。
狙いは、お父さんが運転する白いクラウンだ。
ただひたすら、その車が入ってくるのを待ち続ける。
一時間。
二時間。
時間だけが、むなしく過ぎていった。
車内では、美咲が身を乗り出し、クラウンが入ってこないか、目を皿のようにして見張っている。
(美咲の情報やし、もしかして聞き間違いなんちゃうか……?)
僕が密かにため息をついた、そのときだった。
美咲がこちらを向き、鋭い視線を飛ばしてきた。
「なによ!」
どうやら、僕のため息を察したらしい。
「いや……可愛いなぁって思ってただけや」
慌ててごまかすと、美咲は得意げに胸を張った。
「当たり前やん!」
……ほんま、調子のええ奴や。
ところが、それをきっかけにしたかのように、美咲は突然、別の話を始めた。
「そうそう! この前、電車に乗ってたらさ……」
(また痴漢か……?)
僕は内心、冷や汗をかきながら聞き耳を立てた。
美咲は以前から、こういう話をときどきしてくる。
今度はいったい何があったんや……。
「私、座っててんけど、ちょっと離れたところに学生くらいの男の子が三人おってん。なんか、こそこそ話してるから聞き耳立てたら、『あの女の人、めちゃくちゃ綺麗じゃない?』って、三人で盛り上がっててん!」
美咲は、嬉しそうに話を続けた。
「だから私もちょっと調子乗って、髪とかかき上げたり、いろんなポーズ取ってみたりしてん! そしたら、『めっちゃ綺麗〜!』って聞こえてきてん!」
……おいおい。
わざわざポーズまで取ったんかい。
僕は思わず笑いそうになったが、確かに、美咲は年齢を重ねるにつれて、「可愛い」から「綺麗」へと、その魅力を変化させつつあった。
間違いなく、街を歩けば誰もが振り返るほどの容姿だった。
以前にも書いたことがあるが、現在でいうなら、佐藤ありさにそっくりだった。
後の話になるが、兄貴の嫁のあかりちゃんから、
「みーちゃんがテレビに出てる!」
と、大騒ぎで電話がかかってきたことさえある。
それほど、美咲はよく似ていたのだ。
そんな話をしていた、そのときだった。
「きた! きた! ダー! きた!」
美咲が突然、声を弾ませた。
僕も前方に目を向けた。
白いクラウンだ!
「よし!」
僕は気合を入れた。
ついに、お目当ての車がやってきたのだ。
「みー。とりあえず、車から降りるのを待とう。店の中に入ってから追いかけるぞ!」
「ラジャー!」
美咲は右手をピンと立て、元気よく敬礼した。
……ほんまに、分かってるんやろうな。
僕たちは車内から様子をうかがった。
お父さんとお母さんが車を降り、店内へ入っていく。
それを確認してから、僕たちも車を降り、二人の後を追った。
お父さんとお母さんは、食料品売り場へ入っていった。
休日だというのに、店内には人影がまばらだった。
このショッピングセンターは、僕が小学生の頃からあった。建物の造りも、当時とほとんど変わっていない。
三階建てで、中央には大きな吹き抜けがあり、その周囲に専門店が並んでいる。一階が食品売り場になっていた。
実は、このショッピングセンターには、僕にとって苦い思い出がある。
小学生の頃、ここにあるおもちゃ屋で万引きをして、捕まったのだ。
当時、僕たちは三人グループだった。
当然、全員が捕まり、事務所へ連れていかれた。
一緒にいた友達二人は、名前も住所も連絡先も正直に話した。すると、親が迎えに来て、そのまま解放された。
しかし、僕だけは違った。
黙秘を貫いたのだ。
理由は一つ。
オカンにだけは、絶対にバレたくなかった。
ところが、いつまでたっても口を割らない僕に、店長も困り果てたのだろう。とうとう警察を呼ばれ、近くの交番へ連れていかれた。
それでも僕は、頑として口を開かなかった。
警察官も、さすがに手を焼いたらしい。
最終的には、一緒に捕まった友達から学校名を聞き出し、小学校の先生を通じて、オカンに連絡がいった。
そして、飛んできたオカンに、こっぴどく雷を落とされたわけだ。
……今思えば、何のために、あそこまで意地になって黙秘を貫いたのか、自分でもよく分からない。
あそこまで口を割らない小学生は、後にも先にも、そうそういなかっただろう。
そんな昔の苦い記憶が、ふと脳裏をよぎった。
しかし、今はそれどころではない。
僕は気持ちを切り替え、美咲と一緒にお母さんたちの後を追った。
食品売り場で偶然会うというのも、冷静に考えれば不自然な話だ。
それでも、背に腹は代えられない。
美咲は背後からすっと距離を詰めると、お母さんの肩をポンポンと叩いた。
もちろん、僕もすぐ横に立っている。
この日のために髪を整え、服装も清潔感のあるものを選んできた。
第一印象くらいは、きちんと見てもらいたかったのだ。
お母さんが振り向いた。
「あら、美咲、こんな……」
そこまで言いかけたところで、お母さんの視線が僕に移った。
「こんにち……」
僕が挨拶を言い終えるよりも早く、お母さんの顔が強張った。
そして、何も言わずに、くるりと踵を返した。
「早く帰っておいで」
美咲に冷たく言い放つと、まるで僕たちから逃げるかのように、早足で遠ざかっていく。
お父さんも気まずそうな顔をしながら、お母さんの後を追うように歩き出した。
「お母さん! ちょっと待ってよ!」
美咲は諦めなかった。
店内中に響き渡る声で叫びながら、必死に追いかけていく。
僕も慌てて、その後を追った。
美咲はお母さんの左手をつかみ、何とか引き留めようとした。
しかし、お母さんはこちらを振り返ろうともしない。
「なんでよ! 話、聞いてや!」
感情を爆発させる美咲。
それでも、お母さんは振り向かなかった。
「そんな人と居らんと、はよ帰って来なさい!」
吐き捨てるように言うと、美咲が握っていた左手を、冷たく振り払った。
そして、そのまま店の外へと去っていった。
お父さんは申し訳なさそうに、僕たちへペコッと頭を下げると、後を追っていった。
広い食品売り場に、僕と美咲だけが取り残された。
周囲の客や店員の視線が、一斉に僕たちへ突き刺さる。
けれど、その視線よりも何よりも、自分自身の無力さと情けなさが、胸をえぐっていた。
僕は何もできなかった。
ただ、そこに立っていただけだった。
美咲は、その場に崩れ落ちるようにしゃがみ込み、ボロボロと涙を流した。
悔しかった。
僕も目頭が熱くなり、今にもあふれ出しそうな涙を必死にこらえた。
そっと美咲の両肩を抱きかかえる。
「行こう……。また、何か別の方法を考えよう」
覇気のない声で、そう言うのが精いっぱいだった。
僕は美咲の肩を支えながら、静かに店を出た。
駐車場には、あの白いクラウンの姿はもうなかった。
泣きじゃくる美咲を助手席に乗せ、僕はその右手を強く握りしめた。
「大丈夫! 絶対大丈夫やから!」
何の根拠もない言葉だった。
それでも、今の僕には、それくらいしか言えることがなかった。
美咲はしゃくり上げながら、何度も何度も謝り続けた。
「ダー……ごめん……ごめんなさい……ごめん……」
「何言ってるねん! 俺が何とかするから! 美咲は悪くないよ」
僕は、できる限り優しい声で言い続けた。
そして、車を走らせた。
その後の記憶は、あまりはっきりしていない。
ただ、自分に対する苛立ちと情けなさに打ちひしがれながら、助手席で泣き続ける美咲を乗せ、あてもなく走り続けていた。
いったい、どこへ向かえばいいのか。
何をすれば、美咲を笑顔に戻せるのか。
答えは、どこにも見つからなかった。
結局、たどり着いたのは僕の実家だった。
時計を見ると、すでに19時を回っていた。
……いったい、何時間走り続けていたんだろう。
僕たちは車を降り、二人で実家のドアを開けた。
すると、いつもの元気なオカンの声が響いた。
「おかえり〜! 美咲、今日は……」
そこまで言いかけたオカンだったが、美咲の真っ赤な目に気づいた。
そして、ただならぬ空気を察したのだろう。
一瞬で表情を変え、僕を睨みつけた。
「美咲? どうしたん!?」
「ちょっと……いろいろあって……」
僕が歯切れ悪く答えると、オカンの声が一段と大きくなった。
「いろいろって何やの! 美咲泣かして、いろいろって何やの!!」
容赦ない猛攻撃が飛んできた。
……いや、ちょっと待ってくれ。
僕かて、好きで泣かせたわけちゃうねん。
そんなことを言える雰囲気ではなかった。
そこへ、泣き顔の美咲が割り込んできた。
「お母さん……ちがうねん……私が……私が悪いから……」
そう言った途端、美咲は再びその場にうずくまり、泣き出してしまった。
食卓には、いつものメンバーが集まっていた。
しかし、全員がただならぬ雰囲気に気づき、立ち尽くしている。
オカンは、さっきまでの勢いが嘘のように優しく美咲の肩を抱いた。
「とりあえず、座り……」
そう言って、食卓の椅子に座らせる。
「何があったん?」
オカンが静かに尋ねた。
僕は、美咲の家が代々お見合い結婚であること、そして今日、ショッピングセンターで何が起きたのかを、包み隠さずすべて話した。
いつもなら騒がしい田島家の食卓が、重苦しい静寂に包まれた。
「そんなことがあってんな……。美咲もつらいわな……」
オカンが、ぽつりとつぶやいた。
すると、長男が突然声を上げた。
「そんなん、駆け落ちしたれ!」
すかさず、嫁のあかりちゃんが長男を一喝した。
「もう! そんな簡単なことちゃうねん!」
長男は、ぐうの音も出ない。
その一方で、泣きじゃくる美咲を心配した姪っ子のかりんが、トコトコと歩み寄ってきた。
そして、美咲の膝の上に、ちょこんと乗った。
「みさき、どうしたん? ヨシヨシしてあげる」
幼い手で、美咲の頭を優しく撫でている。
その姿を見て、僕の胸が締めつけられた。
かりんなりに、美咲が悲しんでいることを感じ取ったのだろう。
次男は、こんなときにもかかわらず、
「そんな金持ちやったんや……」
と、空気を読まない独り言をつぶやいた。
……お前、今それ言うか?
一方、親父は鼻息を荒くして言った。
「美咲はもう、うちの家族や! 駆け落ちでも何でもええから、家出てきたらええ! こっちで全部面倒みたる!」
親父らしい、まっすぐな言葉だった。
オカンは、かりんを抱きしめる美咲の目を、真剣な眼差しで見つめた。
「美咲……本当にこの子と一緒になる覚悟はあるん?」
僕を指して、そう尋ねた。
美咲は即座に答えた。
「うん! 結婚したい! ダーとずっと一緒にいたい! 離れたくない!」
そう言った美咲の目から、また涙があふれた。
その様子を見ていた次男が、再び口を挟んだ。
「じゃあ、できちゃった婚しかないやん!」
しかし、オカンは間髪入れずに一蹴した。
「それやったら、美咲的にスッキリせえへんから迷ってるんやろ! あんたアホか! 美咲は、お父さんとお母さんにちゃんと認めてほしいねんよね?」
美咲は、コクリと深くうなずいた。
そうなのだ。
美咲が望んでいるのは、ただ結婚することではない。
自分を育ててくれた両親に、僕という人間を認めてもらい、祝福されて一緒になることだった。
それが分かっていたからこそ、僕たちは簡単に答えを出せずにいた。
しばらく考え込んでいたオカンが、決意を秘めた声で言った。
「美咲、実家の電話番号教えて。あたしがお母さんと話してみる」
美咲は、目を丸くした。
「お母さんと話してくれるの!? 私のお母さんと??」
オカンは力強く二度うなずいた。
美咲は、テーブルの端にあったチラシの裏を手に取り、あかりちゃんから渡されたボールペンで、震える手で電話番号を書いた。
オカンはそれを受け取ると、何も言わずに電話の子機を取りに行った。
(え? 今から!? 今から電話すんの……!?)
僕は、あぜんとしながら、その姿を見守った。
オカンは番号を一つずつ慎重に押し、子機を耳に当てた。
誰も、一言もしゃべらない。
こんなに静かな田島家の食卓は、後にも先にも見たことがなかった。
四回、五回と呼び出し音が鳴った。
そして、カチャッと音がして、相手が電話に出た。
「いつもお世話になっています。田島の母です。いつも美咲ちゃんにはお世話になっていて……一度ご挨拶をと思いまして、ご連絡させていただきました」
電話に出たのは、美咲のお母さんのようだった。
オカンは丁寧な口調で、何とか話を続けようとしていた。
「いや……そういうつもりではなく、ただご挨拶を……」
ところが、その途中で、オカンの顔色がサッと変わった。
子機を耳から離し、しまった、というような顔で、みんなを見回した。
「切られたわ……」
その一言を聞いた瞬間、美咲の表情が崩れた。
「お母さん……! ごめん〜〜……ごめん〜〜……!」
再び声を上げ、泣き崩れる。
「大丈夫、大丈夫! 美咲、そんな泣きなさんな! わたしは別に、何言われても何ともないから!!」
オカンは慌てて美咲を抱きしめ、必死にフォローした。
僕は、その姿を見つめていた。
こんなオカンを見るのは初めてだった。
それだけ美咲のことを、本当の娘のように大切に思ってくれているのだ。
張り詰めた空気の中、今度は親父が助け船を出した。
「とりあえず今日はもう、泊まっていったらどうや、美咲? かりんもおることやし」
長男もすかさず乗っかった。
「せや! 外泊して意思を見せつけたれ! 向こうも、自分の娘がお前と一緒におるって知ってるんやろ?」
すると、かりんまで嬉しそうにはしゃぎ始めた。
「きょうは、みさきといっしょにねる!」
その言葉に、美咲は涙を拭った。
「うん! 泊まっていく!」
あかりちゃんも、すぐに提案してくれた。
「じゃあ、後から一緒に着替えの下着とか買いに行こう!」
みんなが、何とか美咲を励まそうとしていた。
何とか守ってやりたい。
少しでも元気を取り戻してほしい。
そして、これからどうすればいいのか、一緒に考えようとしてくれていた。
僕は、その光景を見ながら思った。
この夜の温かさを、僕は忘れないだろう。
食事の後片付けをオカンに任せ、あかりちゃんと美咲は着替えを買いに出かけた。
「あんたが買いなさい!」
あかりちゃんの一言で、長男が車を出すことになり、三人は店へ向かった。
家の中が少し落ち着いた頃、僕は一人、自分の部屋にこもっていた。
右手には、電話の子機をしっかりと握りしめている。
美咲のお母さんと、もう一度話をするためだ。
僕はリダイヤルボタンを押した。
呼び出し音が鳴る。
やがて、相手が出た。
「もしもし、御堂でございます」
さっき聞いた声だった。
美咲のお母さんの声だ。
僕は、できるだけ落ち着いた口調で名乗った。
「夜分に申し訳ありません。私、武人と申します」
受話器の向こうは、しんと静まり返っていた。
僕は続けた。
「美咲さんとは、お付き合いしてもう七年になります。この先のことを考えて……」
「認めていませんから!」
その言葉が、僕の話を遮った。
ガチャリ。
冷たく電話を切られた。
……くそっ。
しかし、ここで引き下がるわけにはいかなかった。
僕はすぐさま、もう一度リダイヤルボタンを押した。
再び呼び出し音が鳴り、やがて相手が出る。
「もしもし、御堂でございます」
先ほどとまったく変わらないトーンだった。
僕は、もう一度名乗った。
「田島です。まだ話の途中だったんですが、美咲さんは今日はうちに泊まります」
すると、お母さんの声が一気に険しくなった。
「ずいぶん勝手なことしてくれるんですね! うちの大事な娘を! あなたが何をしようが私は認めませんから、もう二度と電話してくださらないようにお願いします!」
そして、そのまま一方的に電話を切られた。
ツーツー……。
耳元で、無機質な電子音が鳴り続ける。
僕はしばらく、ぼうっと立ち尽くしていた。
二度も電話を切られた。
普通なら、心が折れてもおかしくない状況だった。
それでも、僕は一つのことに気づいていた。
一回目の電話では、一瞬で切られて、会話すらできなかった。
しかし、二回目は違った。
ほんのわずかとはいえ、言葉を交わすことができた。
そして、「美咲が今夜うちに泊まる」という事実だけは伝えられた。
……よし。
この調子で、毎日少しずつ距離を縮めていくしかない!
僕は胸の奥で固く誓い、子機を静かに台へ戻した。
そんなやり取りを、僕は毎日のように繰り返すことになった。
美咲は知らないと思うが、僕はその後、ほとんど毎日のように美咲の実家へ電話するようになった。
もう、こうなったら根競べだ。
何度拒絶されようが、簡単には諦めない。
時には、
「あなたみたいな人に、うちの子は釣り合いません」
とののしられた。
またあるときには、
「いい加減にしないと、警察に通報しますよ!」
とまで言われた。
それでも、僕は電話をかけ続けた。
美咲のお母さんと、僕との攻防は、こうして始まったのだった。
もちろん、すぐに状況が変わるわけではない。
電話をかけたからといって、相手の気持ちが簡単に変わるはずもなかった。
それでも、僕は諦めなかった。
そんな中でも、僕たちは毎日会い、二人の愛情を少しずつ深めていった。
先の見えない不安はあった。
何度も傷つくことになるかもしれない。
それでも、僕たちは一緒にいた。
そして僕は、美咲と二人で歩いていく未来を、決して諦めるつもりはなかった。




