第16章 強気な彼女
居酒屋から出て、みんなで少し立ち話をした。
僕としてはZARDのカラオケを聞いてみたかったのだが、京都まで帰らなければいけないとのことだったので、ここで解散となった。
ZARDは、古巣の店の駐車場に車を停めていた。
すると、お酒を飲んでいない店長(京子ちゃんも飲んでいない)が、僕というか……美咲に気を使ってくれたのだろう。
店長:「美咲ちゃん以外はみんな送っていくから、みんなハイエース乗って!」
最初はみんな「えっ!?」という感じだったが、すぐに場の空気を読んだのだろう。
ハイエースにすし詰め状態になりながら、全員が一気に乗り込んで帰っていった。
夜の駐車場に残されたのは、僕と美咲の二人だけ。
僕:「時間、大丈夫?」
美咲:「今日は『友達と遊びに行く』って言って出てきたから大丈夫!」
美咲は満面の笑みで答えた。
とりあえず車に乗り込んだものの、特にあてもなかったので、美咲の自宅方面へとゆっくり車を走らせた。
静かな車内の中で、僕はずっと気になっていたことをストレートに尋ねてみた。
僕:「なぁ……この前、確かに『付き合って』って言ったけどや……」
美咲:「『付き合ってください!』やろ?(笑)」
すかさず、からかい口調で乗っかってくる。
僕:「そやけど! でも……あの時、『考えとく』って言ったやん」
美咲:「考えたよ」
僕:「え? 聞いてないけど……」
美咲:「うん、言ってないから」
僕:「……え?」
美咲:「みーが考えて、考え終わったからそれでいいの」
僕:「……そうなん? 『いいよ』とかの返事はナシなん?」
美咲:「今日言ったやん」
僕:「そらそうやけど……」
美咲:「……なにか?」
チラリと見た美咲は、なぜかすごく強気な表情をしていた。
出会った頃の美咲とは全然違う。初めて身体の繋がりを持った時の、あの儚げで不安そうだった彼女とも違う。
(……こいつ、成長したんか……?)
そう思うほど、今の美咲からは迷いが消えていた。
ちょっと意地悪をしてからかってやろうと思い、僕は軽く言ってみた。
僕:「じゃあ、付き合ったことやし……今からホテルでも行くか!」
すると、美咲から間髪入れずに返ってきた言葉は――
美咲:「ええよ〜! 行こ! 行こ!」
(……まじか!!)
内心驚いたが、「いい」と言うのなら行ってやろうじゃないか!
ということで、その日はホテルに泊まることにした。
だが、前回のホテルとは全く違っていた。
気まずい緊張感なんて一切なく、一緒にお風呂に入って、お互いにいちゃいちゃと甘い時間を過ごした。
夜中、ふと目が覚めて気になり、隣で眠る美咲の様子を覗き込んだ。
前みたいにお腹を痛めて苦しんでいる様子もなく、彼女は規則正しい寝息を立てながら、すやすやと眠っていた。
(……ノーメイクでも綺麗な横顔だな……)
薄暗くてもよく見えた彼女の顔は本当に綺麗で、ずっと見ていてもまったく飽きなかった。
この子を、自分が守っていくんだ――。
すやすやと眠る彼女の横顔を見つめながら、僕は静かにそう心に誓っていた。




