表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
突撃!コール隊 〜推しがウザイ!なら世界を変えるまでだ  作者: 鷹雄アキル


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

325/340

325 そして、ふたたび。


【視点:コール】


「あいつ、やっても やっても蘇ってくるのよ」

 

 呆れたように肩をすくめ、アリスが指差す。

 視線の先では──粉砕されたはずの腕の肉片が、どす黒い粘液を引きずりながら、ぞろりと本体へ戻っていく。

 

 肉片が、集まる。

 繋がる。

 再生する。


 ……悪夢みたいな光景だ。

 確かに異常な再生力だが──俺の意識は、別の“違和感”に引っかかっていた。

 地面。木々。バケモノの残骸。

 すべてが、赤く濡れている。

 まるで、この一帯だけ──おびただしい量の『血の雨』が降ったみたいに。


「なぁ、この血の海はいったい……?」


「あれは……」

 

 俺の問いに、アリスが一瞬言い淀み、ちらりと隣を見る。

 カルアは、気まずそうにすっと目を逸らした。


 ……おい、なんだその反応。


「……あれは、私の血」


 ──は?


「……カルアの、血!?」


 俺は思わず一歩引いた。

 いやいやいやいや。

 この量、おかしいだろ。地面一面だぞ!?


「お、お前……大丈夫なのか!?」


 慌てて問いかけると、カルアは頬を掻きながら、ちょっと恥ずかしそうに俯いた。


「な、新しい『()り方』なのよ。ちょっと事前に抜いて、ストックしておいただけだし……」


 ……いや、“だけ”で済む話じゃない。

 いったいどれだけ抜いたんだよ。

 相変わらず、命の扱いが軽すぎる。無茶ばかりする奴だ。


 でも──。

 それでも、こいつがちゃんとここにいる。

 それだけで、胸の奥が少し軽くなった。


「なあ、コール! 感動の再会中に悪いが、私は自軍が心配だ! ここは任せるぞ!」


 不意に、横でアイドリング音を響かせていた装甲車の運転席から、皇帝陛下が身を乗り出して声を張った。


「え、あ、はい! 助かりました!」


 俺が頷いた瞬間。


「ではな!」


 片手をひらり。

 次の瞬間──。


 ギャリィィィィィィンッ!!

 ドガァァァァァッ!!


 盛大なタイヤの摩擦音と土煙を撒き散らしながら、黒鉄の塊が弾丸みたいに飛び出していく。


 ……速ぇなオイ。

 嵐かよ。


 そのぶっ飛んだ去り際を、呆然と見送っていたカルアがぽつりとこぼした。


「ねえ、コール。あの破天荒な運転手さん……誰?」


 俺は、遠ざかる土煙を見つめながらため息交じりに答えた。


「あの人は──グリッド帝国の初代皇帝だ」


「「「…………はぁ!?」」」


 カルア、アリス、トビー。

 見事な三重奏の絶叫が、夜の森に反響した。


 

 ▽▽▽


「皇帝!? 義兄さん、帝国でいったい何やってたの!」


 次の瞬間、我に返ったクラリスが猛然と突進してきた。

 ガシッと腕を掴まれ、そのままぐいっと引き寄せられる。


「おさるさん倒したり!? 村の人と朝まで飲んだり!? 皇帝とおしゃべりしたり!?」

 

 ……情報の切り取り方が雑すぎる。


「ふざけてばっかり……!」


 クラリスの目が潤む。


「どれだけ、どれだけみんな心配したと思ってるの……!」


 そのまま、俺の服の胸ぐらをぎゅっと握りしめる。

 細い腕が、小さく震えていた。


「……もう、絶対──置いてきぼりにしないで」


「……ごめん」

 

 俺は短く答えて、俯く彼女の頭をそっと撫でた。

 言い訳は──いらない。

 

 そこへ。


「コール! 大事な肝を落としてるニャ!!」


 俺の後ろから、すっかり車酔いから復活した元気な声。

 振り向くと──。


「みんなお久だニャ!」


 ラスクが、ドヤ顔で胸を張って登場してきた。

 ……なんだその登場の仕方。

 俺は深いため息を一つ吐く。

 

「何をだ、このゲロ猫」

 

「ボノラッテは最高ニャ」

 

 ぐっと親指を立てる。ウインク付き。

 

 ……殴っていいか?


「はいはい。あんたもコールと一緒にいたなら、すぐに通信で報告しなさいよ」

 

 呆れ顔で、アリスが冷たくツッコむ。


「『おしゃべりさん』は壊れてたから捨てたニャ。てへ」 


 こいつ、ほんと自由だな。

 その後ろから──。


「副隊……ご心配おかけして、すいません」


 おずおずと、ルクスが顔を出した。


「副隊って……あんた、今はカルア隊でしょ!」


「あっ……そうでした!」


 慌てて口を押さえるルクス。


 それを見て、カルアが肩をすくめる。


「いいのよ。こいつがいるならそっちの方が自然でしょ」


 そして──彼女が一歩、前へ。


 空気が、切り替わる。


「これより──カルア隊はコールの指揮下に復帰する!」

 

 凛とした声。


 その言葉に、全員の顔が変わる。

 悪ガキみたいな顔だ。


 ……来たな。

 

 ジェフとアッシュはまだ来ていないが──

 それでも、十分すぎる。


 最高の仲間だ。


「で? コール隊長。次のミッションは?」


 カルアが不敵に笑う。


 俺は、前を見る。


 蠢く巨大な化け物。

 血の海。

 まだ終わっていない戦場。

 

 背中に、仲間がいる。


「決まってる」

 

 息を吸う。


「──あのバケモンを完全に叩き潰す」

 

 視線を巡らせる。


「各自、全力を叩き込め! 作戦名は『臨機応変』。ミッションは──『いのち大事に』だ!」

 

 胸の奥が、熱い。

 剣を抜き放ち、夜空へ掲げる。


「全部、ぶつけろ!」


 そして──。


「いくぞ!」

 

 拳を握る。


「突撃──コール隊!!」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ