表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
突撃!コール隊 〜推しがウザイ!なら世界を変えるまでだ  作者: 鷹雄アキル


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

324/340

324 最強ドライブ


【視点:コール】


 時間を、数時間ほど巻き戻す──。


「お客様。出発してよろしいでしょうか? なお、舌を噛む恐れがありますので、運転中のおしゃべりはお控えくださいませ」


 ハンドルを握る皇帝陛下が、言い終わるや否やクスリと笑う。


 ……いや、その注意、自分で言うやつか?

 助手席の俺は、ひどく嫌な予感がして、ドア上のアシストグリップを全力で握り込んだ。


 後部座席では、ルクスとラスク、そしてツナグが、前世の軍用車両みたいなこの内装が珍しいのか、キャッキャとはしゃいで車内を見回している。


「では──発車いたしまーす!!」


 ギュイイイイイイイイィィィンッ!!


 次の瞬間、アクセルベタ踏み。

 タイヤが激しく空転して悲鳴を上げ、分厚い車体が左右に暴れる。


 そして溜め込んだ力を解き放つように、黒い鉄の塊が猛烈な勢いで前へと弾け飛んだ!


「ヒャッハー!!」


 皇帝が気勢を上げる。

 同時に、後部座席からは悲鳴が上がった。


 ──ヤバい! この人、ハンドル握ると性格変わるタイプだ!

 いや、むしろこっちが本性か!?


 後ろを振り返ると、おでこを押さえて涙目になっているラスクとルクス。さっきの急発進の衝撃で、どこかにぶつけたのだろう。

 その間に挟まれたツナグが、「なに? 何が起きたの?」と目をまん丸に見開いて固まっている。


 バックミラーを覗く。

 この車の後ろから、もう一回り長いタイプの装甲車が土煙を上げて追従してきている。

 運転席はグース、助手席にはジュリアの姿が見えた。


「コールよ! 乗り心地はどうだ?」


 爆音の中、心底楽しそうに聞いてくる皇帝。


「マジで、ドキドキしてますよ!」


「だろ? ワクワクするよな!」


 ──ワクワクじゃねぇ! 命の危機にドキドキしてんだよ!!


「目的地までは距離もある。最短ルートで行くぞ!!」


 そう言って、皇帝はこともあろうに道なき森の中へと車を突っ込ませた。


「あぶない!! 木、木、木ッ!」


 真正面に巨大な木が迫る。

 あわや激突!! と身構えた瞬間、車体はするりと鮮やかなハンドリングで木を(かわ)していく。


「何か言ったか? キ、キ、キって」


 ──コイツ! 陛下じゃなきゃ一発殴ってるとこだ。

 いや、それにしても。

 ハンドリングが異常すぎる。呆れるほど器用に、笑いながら木々の隙間を縫って爆走しているのだ。


「実はなコール。前世ではF1レーサーだったんだ!」


「マジですか!?」


「なりたかった職業だがな!!」


「──ですよね!!」


 はい、知ってた。

 皇帝。完全に調子こいてます。


 ……けど。

 今だけは、この無茶苦茶なスピードがありがたい。


 (待ってろよ、みんな……)

 

 俺は誰にともなく、心の中で強く呟いた。

 車は止まらない。

 悪路も、段差も、全部まとめて踏み潰して突き進む。

 

 その後ろを土煙を上げながら、しっかりと追従してくるグースの車。

 俺がバックミラー越しに後続車を気にしていることに気づき、皇帝はクスリと笑った。


「あの男もよくやる。私と違って、前世の知識があるわけでもないのにな」


 嬉しそうにバックミラーへ目を遣る皇帝。


「それに、誰の影響か知らんが、『赤の諜報団』の団長の席を用意してやった時には、部下は自分で探すと言って、こっちが用意した人員リストを全部無視しやがった」


 口では文句を言いながらも、目を細めて真っ直ぐ前を見つめる皇帝は、なんだかとても楽しそうだった。


「お前のところもなかなかの個性派揃いと聞くが、あいつの部下も負けず劣らずだ。今、戦場にいるハリンツ部隊……そう簡単にはやられやせんよ」


 フン、と鼻を鳴らす。


「ハリンツ部隊も一筋縄ではいかない連中でな。中でも、あそこの副隊長は生意気でな。一時は牢獄に放り込んでいたのを、あいつらが引っ張り出してきたんだ。さぞや今頃、暴れまくってるだろうよ」


 副隊長……か。

 

 一瞬、脳裏にカルアの顔が浮かぶ。

 ぐっと、歯を食いしばる。


 そんな俺を見て、皇帝はニヤリと笑い──。

 さらにアクセルを奥深くまで踏み抜いた。


 グォォォォォンッ!!

 

 エンジンが咆哮する。


(頼む……間に合ってくれ!)


 祈りを乗せて。

 鉄の獣は夜の帳を切り裂き、戦場へと一直線に突き進んでいく。

 

 ▽▽▽


 辺りはすっかり暗くなり、今はヘッドライトに照らされた前方の空間だけが、切り抜かれているように見える。


「そろそろだな」


 皇帝がそう呟いた、その時だった。


 ドズドゴォオオオオオオンッ!!


 走る車の中に居ても、激しい揺れを感じるほどの凄まじい衝撃と爆音。

 目の前の木々の隙間から、真っ赤に輝く爆炎が上がるのが見えた。


「もうおっ始まってるようだな」


 皇帝の目が、獲物を見つけた獣のように光る。


 木々がまばらになり、視界が開けたそこには……巨大なバケモノと、その足元で追い詰められている濃紺の隊服があった。


 今まさに、目の前のデカブツが凶悪な腕を振り上げ、眼下の獲物をすり潰そうとしている。


 万事休す。

 そう思わせるほどの、ギリギリの死地。


 あれは──カルア!?

 

「時間がない! このまま突っ込むぞ!!」


 躊躇はない。

 皇帝が迷うことなくアクセルをベタ踏みする。


 すり鉢状にぽっかりと口を開けた大穴の縁から──車は跳んだ。

 宙を裂き、そのままの勢いでバケモノの腕へと激突。

 骨ごと粉砕し、反対側の斜面へと豪快に着地する。


 皇帝が目一杯ハンドルを切り、ブレーキを乱暴に踏み込んだ。


 ギャリィィィィィィィン!!


 土煙を上げて車が止まる。

 もはや、座席から体が飛び上がり宙に浮いていた俺は、車が完全に止まりきる前に横腹のドアを蹴り破り、一直線に飛び出していた。


「カルア! 大丈夫か!!」


 手を伸ばす。

 彼女が、その手を両手でしっかりと掴む。

 逆光で見えなかった彼女の顔。

 その大きな瞳が、俺を見てぐしゃりと歪む。


「遅いんだから……!」


 込み上げるものを必死にこらえるような、震える声。


「バカコール……ッ!!」


 俺は彼女の手を強く引き、そのまま胸の中へと抱き寄せた。

 腕の中に収まる、華奢な体。

 

 生きてる。

 ちゃんと、ここにいる。


「おーい。感動の再会はいいが、その前にあれ片付けろ」


 現実をぶち壊す、皇帝の無遠慮な一言。

 俺はハッとして顔を上げる。

 周りを見回すと、そこには見慣れた連中が揃っていた。


「来るなり、うちの隊長に何手出してんのよ」

 

 呆れ顔のアリス。


「た、たいちょぉぉぉぉ~っ!!」

 

 滝のように泣くトビー。

 腰を抜かしたまま固まっているクラリス。

 無表情で手を振るジンクス。

 カルアの耳元からはホッジの絶叫。


『隊長キター! 隊長キター!!』


 ……ほんと、こいつらは。

 苦笑しながら、カルアの肩を抱き寄せたままゆっくりと後ろを振り返る。


 後方では──。

 さっきの無茶苦茶なドライブのせいで、ラスクとルクス、それにツナグが車から這い出てきて、地面に突っ伏していた。


「げぇぇ……」

 

 完全にダウンしている。


 ──しまらねぇ。

 だけど、最高に頼もしい奴らだ。


「さ、片付けるぞ」

 

 俺がそう言うと、腕の中の彼女は力強く、こくんと頷いた。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ