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流刑のロト  作者: 野山日夏
日本編(新学期)
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25/34

そうして春休みは終わりを告げて

 春休み最後の数日間は慌ただしく過ぎていった。ロトは仕事を覚えるため、と文字通り毎日繁華街へと出かけていったし、晴海もまた新学期が近づいてくるにつれ、始業式提出のもの、具体的にはロトの出現以降ほとんど手をつけられていなかった宿題の消化などに追われることとなった。

 昼食や時によっては夕食もそちらで済ませてきてしまうため、ロトは家をほとんど空ける形となっている。晴海としては家で怪奇現象を引き起こされないためロトが家を空けているのは助かるのだが、何せ散々家では魔法を行使して、晴海を驚嘆させてくれたロトである。

 ほとんど屋敷内におらず家で惨事を引き起こさない代わりとばかりに、バイト先で何かおかしなことをやらかしていないかだとか、そもそもバイト先へ行くまでの間とて何かやらかしてやいないか、だとか色々な点に晴海は若干どころでなくかなり本気で心配している。

 だが、

「何か変なことやらかしてないわよね?」

「大丈夫だ」

 などと、問いかけてもロトからの返答は大丈夫の一点張りであるし、事実二、三日しても辞めさせられた様子はなく毎日いそいそと出かけていくロトに、まぁこの様子では大丈夫なのだろう、と判断するしか晴海に選択肢は与えられていない。そうして事実関係の追及に至っていないため、その仕事ぶりは未だ確認できないままだ。

 とはいえ、ロトが今すぐ辞めさせられる訳でもないのなら、いずれその仕事を見る機会もあろう、と捨て置いて、晴海はひたすらシャープペンシル片手に宿題と格闘していく。

 成績自体は優秀の部類に入るので問題自体は晴海にとって大したものではないのだが、如何せんその量が馬鹿にならない。ロトが現れた騒ぎで数日ほったらかしにしていた上に日常的に家事の大部分を自分でしなければならない晴海には時間が足りないのだから当たり前といえば当たり前なのかもしれないが、まだ晴海が手をつけていない宿題は山のごとく高く積まれている。

 晴海は少しばかりこんなに大量の宿題を出した教師に、文句の一つも言いたくなった。大体先生が一番問題を解かせたいと思っているメンバーなど、晴海が予想するにただひたすら巻末の答えを写して終わりにするか、そもそも解いてくること自体しないかの二者択一の予感しかしないのだが。

 結局、その山のような宿題が片付いたのは始業式の前日になって漸く、である。問題を解き終え筆記具を置き、晴海はほぅ、と息をついた。片付いた宿題を鞄に入れ、ついでに明日の予定を確認する。

 明日は九時過ぎに学校に行って、始業式があり、その後はやれ委員会だなんだを決める予定らしい。勿論、望んでやりたがる者など余りいないものだから、基本的には仕事の押し付け合いになるだろう。すぐに終わるはずもなく、帰路につくのはどうせ毎年恒例のことだが十二時前後になることだろう。まさに昼時である。それでも授業があるときに比べれば、早く学校から帰ることが出来る。折角なので学校帰りに真由達とどこかへ食べにでも行こうかと考えたところで、晴海はぽんと手を叩いた。

「あぁ!」

 それはちょうど素晴らしい案を思いついたからなのだが、その喜びが声にまで滲み出ている。

 折角の機会だ。晴海は真由達と食事をするのに、ロトの働く喫茶店に向かうのはどうだろうか、と思いついたのだ。今まで挑戦したことのない店に入るのはわくわくするし、その上そこがロトの働く店だとすれば、見よう見ようと思っていたその仕事ぶりも見られてまさに一石二鳥である。あのがらがらの店内に女子高生四人組という客が入ることを思えば、一石三鳥か。

 晴海は己の浮かべた名案を実行するがため、携帯を手に取り友人三人の携帯に明日の放課後という件名でメールを送信した。すぐに返ってくる了解の文面に、明日への期待を胸の内に膨らませながら晴海はもう一度忘れ物の確認をすべく鞄を開けた。



 そうして晴海の予想通り、学校を出たのは十二時少し前だ。どのクラスも同じぐらいの時間に終わり、学校の正門は同じ服装の学生でごった返している。その中に、晴海達四人の姿もまた存在していた。

「よかったよかった、仕事押し付けられなくて」

「本当にねー。特にないちゃんは委員会とか入ったら家事に委員にって大変なことになるところだったよね」

「うん、本当よかった」

 クラス分けの結果、四人のクラスは見事なまでに分かれたが、クラスが分かれたからといってその先交友がなくなるわけでもない。一緒に帰る約束をしていたこともあり、当然のように四人で待ち合わせて彼女達は校門を出た。

 それから互いに委員会に任ぜられなかった喜びを分かち合う。放課後に委員会だ何だとあったり、普段でも何かしらの仕事があるとどうしても委員会をしていない人間より忙しさが増してしまう。そんな窮地を回避できるのは、学校など特に問題がなければよいくらいに思っている学生にとっての喜びである。

 そんな三人の喜びに水を差すように、すぐ傍から暗い声があがる。

「……自分達が委員にならなかったからってぇ……」

 勿論、その声の主は先程声を上げた三人に入れなかった夏帆である。

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