第72話「大空屋大盛況」
エモシオンの町を出た俺達はボヌール村への帰途につき、『一見』無事に戻った。
何故、『一見』と強調したのは、理由がある。
理由はシンプル、本当は、無事ではなかったから。
油断したら、帰路も、敵襲が起こりそうだったのだ。
何故なら、俺達と一緒の大きな商隊を狙って、
傭兵崩れらしき一団の数十名がが、待ち伏せしていたからである。
これほど物騒なのに、オベール様は王都へ『偽りの報告』をしている。
我が領地は安全レベルMAXで、治安は最高に良いですよって。
主語が大きくなってしまうが、貴族って、本当に大嘘つき。
それとも……彼ら彼女達って、こんなモノなのか……
良く、見栄と虚飾、そして利害関係に満ちた世界が、貴族社会なのだと、
数多のラノベでは言われていたし。
話を戻そう。
街道脇に潜み、待ち伏せしている傭兵団を、
そのまま放置すれば、商隊が襲撃される事はお約束。
索敵の魔法で事前に奴等の襲撃を察知した俺は、またもや大規模転移魔法、
『作戦名 クッカ』を発動した。
奴等を魔物どもが「うじゃうじゃ」いる森へと送り込み、
奴らを襲わせ、喰い殺させ、因果応報! とばかりに全滅させていたのである。
こうして……行きと同様、帰路も敵の襲撃は密かに闇から闇へと葬られた。
知っているのは俺とクッカ、そして従士達だけ。
まあ、どこかで、見ているであろう管理神様は当然知っているだろうけどね。
俺は最近、弱肉強食、情けは無用、力こそが正義!の、
過酷な、この中世西洋風異世界に、価値観が適応して来ているのかもしれない。
そう! 襲って来る敵に対して「可哀そう」とか、
「やり過ぎだ」とか全く憐憫の情を感じない。
生き残る為には、悪即斬!
情けを交えず、敵を倒す。
手段は選ばず、安全と勝利が最優先。
魔物との戦いを何度か実体験したので、
弱い者は油断すれば、あっという間に殺される。
このひどく非情な世界を骨身にしみるくらい体感したからだ。
帰路の敵は、魔物ではなく人間だが、一切関係無い。
待ち伏せしていた『傭兵崩れども』の心を読んだクッカが、
「奴等は非道な鬼畜」と激怒した。
なので良心が痛むとか、
躊躇う事は、一切無かったのだ。
クッカによれば、この傭兵どもは、
今までに、このような商隊を何度も襲っていたようだ。
傭兵どもは襲った後、証拠が残らないように、男達は全員惨殺、
証拠隠滅の為、死体をどこかへ処分してしまう。
原野の目立たない場所へ運び、魔物の餌とかにしたのであろう。
一方、女はというと、奴らが、さんざん慰み者にした上で、
子供と一緒に、奴隷として、足がつかない遠方の国へ売リ飛ばしていたらしい。
何という、鬼畜で悪逆非道、残酷な奴等だろう。
無残に殺されたり、奴隷として売り飛ばされた挙句、
見知らぬ地で命を失くしたであろう者達の無念、ここに極まれり。
普段は、おっとりしたクッカが、奴らの所業に対し、凄く怒ったのも無理はない。
俺は守護者たる『ふるさと勇者』として、可愛い嫁ズとその家族、
そしてボヌール村全体を守る責任と義務がある。
いずれ、害を為す可能性が高い、
このようなくそ外道どもを、のさばらせておいて、
もし被害があって、後悔してからでは遅い。
災いの原因を断つ為にも、悪党へは絶対に容赦しない。
そんなこんなで……夕方遅くにボヌール村へ帰還した俺達。
村の人達は、俺達の無事を大いに喜んで迎えてくれた。
リゼットとクラリスは俺に飛びついて喜び、
その様子を見守るリゼットの両親、ジョエルさんとフロランスさんも、
にこにこ笑っていた。
留守にしている間に、どうやら……「話は全て通った」ようだ。
俺とリゼットの、『16歳になったら結婚OKの許可』が出たらしい。
レベッカの父ガストンさんと、
ミシェルの母イザベルさんからは既に結婚OKが出ていたし、
クラリスは両親が亡くなってひとり暮らし。
これで、嫁ズとなるであろう村の女子達との結婚の根回しは万全である。
後は……天界の女神様のクッカだけだ。
条件付きという事で、クッカは、俺と恋愛するまでの許可を得たが、
結婚許可の確約は、管理神様から貰っていない。
それゆえ、クッカとの結婚は、何とか頼み込み、許可を得るしかない。
結果が、どうなるのかはまるで分からないが、
俺はクッカが大好きだし、彼女も俺を、心底、慕ってくれている。
人間と女神様の許されない『禁断の愛、そして結婚』かもしれない。
だが、ぜひ何とかしたい。
そんな事を考えながら、俺は帰った日の夜遅くまで、
大空屋で翌日の開店準備をしていたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
翌朝6時……
大空屋開店! の時間。
早朝の弁用販売時を除き、いつもの午前8時より、2時間も早い開店時間だ。
だが、しかし!
開店1時間前の、午前5時から予想外の長蛇の列。
そう! 村民の皆様が殺到したのだ。
1人、2人、3人と順番に数えてみたら、何と84人……
村の住人の8割以上である。
成る程ねえ、凄いねえと、行列に並ぶお客様達の顔を見たら、
皆、期待感に目をキラキラ、うるうるさせていた。
これは、嬉しい悲鳴ではなく、却って、凄~く、嫌な予感。
案の定、当たっては欲しくない、嫌な予感は大当たり。
店を開けたと同時に、彼等彼女達はどっ!!と押し寄せて来たのだ。
まるで押し合い、へし合い、通勤時間のラッシュ状態。
溜まりに溜まった購買欲を爆発させ、
まるで鬼神のように、商品を買い求める村民達を見て、俺は改めて感じた。
どの時代、どの世界でも、
やはり人間は『買い物』という行為が大好きなのだ、と。
俺、ミシェル、イザベルさん。
この3人だけでは到底、接客し切れる筈もなかったが、
俺はふっと思い付き、機転を利かせた。
隣接する宿屋の1階も、仮店舗として使い、
その上で『入場制限』を行ったのである。
しかし、日本のラーメン屋の如くひたすら並ぶような行列と、
待つ事にも慣れていない村民達は、大いに不満な表情を見せた。
そこで俺は、ひたすら低姿勢でのお願いをする事に。
更には! エモシオンの市でも見せた最強のディベートが炸裂し、大説得。
終いにはSOS!を聞いて、急きょ手伝いに来てくれた、
レベッカ、リゼット、クラリスの爽やかな笑顔で何とか収集。
そんなこんなで、……約2時間後
大空屋の商品はといえば、新規で仕入れた商品は当然ながら、
常備していた商品までも綺麗に『完売』してしまっていた。
ああ、店内はすっからかん!
売る物が全く無い店は、営業など不可能。
当然ながら、ひとまず閉店という事となってしまう。
むむ、困った! 本当に困った!
村で手配出来る商品以外を、
またも、エモシオンの町まで再び仕入れに行かないとならない。
売れ筋はといえば、当然、村では手に入らない商品だから。
と、いう事で! 俺と嫁ズは、大空屋の宿屋の食堂で緊急会議を行う。
店主のイザベルさんが所用で出かけたので、
『ぶっちゃけ話』が出来るのは幸いだ。
予想外の展開に、ミシェルは悩んでいる。
茶化すと怒られるから、俺は絶対に言わないが、悩める乙女も魅力的。
「あ~あ……久々の入荷というのは確かにあるけれど……ここまで売れちゃうなんて全くの予想外だわ……どうしようか……」
しかし! 悩みに悩むミシェルに対して、
ここで、素晴らしい提案が為されたのである。
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