第67話「貴族令嬢の素顔」
ぱん、ぱん、ぱん、ぱん、ぱあああん!!
俺は、ステファニーの小さなお尻を10回は叩いたであろう。
そりゃ、手加減は、当然した。
レベル99的に言えば、「そよそよ」と触るか、「触らないか」というくらい。
こう言うと、『ど』が付くHで、トンデモなく嫌らしいスケベ親爺のようだが、
本当に、そんな力加減なのだ。
『沈黙』の魔法で声も出せない、『束縛』の魔法で身動きも取れない……
加えて俺にしっかりと抱えられ、どうする事も出来ないステファニー。
痛みと屈辱と恥ずかしさに、ただただ泣き崩れている。
うん……もうそろそろ、許してやるか。
俺は頃合と見て、ステファニーの尻を叩くのをやめた。
あまりこの場に長居して、誰かに見られてもヤバイ。
高貴なる貴族領主様のご令嬢に、S男のように、
尻たたきでお仕置きをする、どが付く平民。
常人の第三者が見れば、とんでもなく畏れ多い事である。
もしも誰かに見つかったら、即、通報され、衛兵がすっ飛んで来るだろう。
そうしたら捕縛され、入牢、即、中央広場で公開死刑の斬首。
絶対に、間違いない!!
空中に浮かんだ幻影のクッカも、小さく頷く。
どうやら、俺と同じ考えのようだ。
『ステファニー』
『…………』
俺の呼び掛けに反応せず、ステファニーは俯いて黙っている。
さっきも言ったように尻を叩く際に充分、手加減した。
直接的な痛みというよりも、誇り高いプライドを完璧に破壊された、
ショックの方が大きいに違いない。
黙っているステファニーに対して、俺は構わず告げて行く。
『今後は、父親の権力を使い、領民を無理矢理、下僕にするなんて絶対にやめてくれよ』
俺の呼びかけに対して、ステファニーは相変わらず無言だ……
『…………』
間違い無くステファニーは、生きている。
屍ではないのに、返事が無かった。
だが、ここはちゃんと返事を貰わなくてはならない。
俺は、子供に対して促すように、答えを求める。
『おいおい、ステファニー、返事は?』
『…………』
『ほら、返事! 謝罪も!』
『……は、はい……ご、ご、ごめんなさい……』
俺が再度促すと、ステファニーは、
噛みながらも、か細い声ながら何とか返事と謝罪をしてくれた。
反省しているようだし、相手は女子。
もう、許してやろう。
スペシャルサービス付きで。
『ようし、それが聞きたかった』
俺は、ステファニーを抱きかかえて正面に座らせると、
即座に回復魔法を発動した。
治癒、回復、全快、慈悲、奇跡……全部で5段階ある習得した回復魔法のうち、
大サービスで『全快』の魔法をステファニーに掛けてやったのだ。
全快の魔法を使ったのは、
俺の勘=内なる声が「そうしろ」と言ったせいもある。
何となくだが、ステファニーの尊大で苛々した態度の一因が、
彼女のメンタル面のストレスから来る、
体調不良にあるかもしれないと思ったのである。
まあ、あくまで素人の個人的な意見だが。
葬送魔法の眩い光ほどではないが、俺の手が淡く光るのを見て、
ステファニーは、再び目を見開いて丸くし、驚きの色を浮かべた。
もしかしたら、この町では魔法が珍しいのかもしれない。
驚いたステファニーも、俺の発した強い光が、
自分の身体をに向けられて全身を満たすと、ぴくぴく身体を波打たせた。
『どうだい?』
『あああ、あ、あれ? ……へ、変! な、何、これ!? ど、どうして!!??』
先程から、驚きっ放しのステファニー。
尻の痛みが無くなっただけでなく、
身体が優しく癒された事に戸惑っているようだ。
『ステファニー、気分はどうだい? お尻……痛くなくなったか?』
俺が優しく尋ねると、ステファニーからは怯えが消え、笑顔が戻って来る。
『うん、うん、うんっ! お尻が痛くないっ、痛くないよ~っ、それどころか気分がすっごく良いの!! 身体もすっごく軽いのっ!!』
『おお、それは良かったな』
俺はここで束縛の魔法を解除してやった。
心が発する波動で、
もうステファニーが抵抗して暴れたりしないと分かったからだ。
なので、笑顔で応えてやる。
『はは、俺の魔法が効いたみたいで、良かったな』
『えええ!? ここ、これって魔法!? ケン……貴方って一体……』
ステファニーは、驚きの目で俺を見ている。
少なくとも、『ただの小僧』とは思わなくなったのだろう。
しかし、俺は単なる『ボヌール村の小僧』で構わない。
だから、はっきりと言ってやる。
『俺はケン。お前の父の領民でボヌール村の村民、ただそれだけさ。たまにこの町へ来るかもしれないが、俺はボヌール村で嫁達と暮らす。お前とはもう、こうして話す事も無いだろう』
俺がそう言うと、ステファニーは少しはにかみ、甘えたい、という表情になる。
『え~? 話す事が無いって……でも私、貴方のせいで、お嫁に行けない身体にされちゃった』
はあ? お嫁に行けない?
責任を取れってか?
お仕置きで、お尻を「ぺんぺん」軽く叩いたくらいなのに?
俺は苦笑しながら、話を続ける。
『おいおい、馬鹿言え。軽くお尻を叩いただけだろう? それにお前の従士達は、俺の存在など忘れるような魔法を掛けてある』
『え? 忘れるって……』
『ああ、だから、ステファニー。お前のお尻を叩いたのは、俺とお前、ふたりだけの秘密さ』
『ケンと私……ふたりだけの……秘密?』
ふたりだけの秘密と聞き、ステファニーは、目を「うるっ」とさせた。
ああ、リゼットの時もそうだが、この台詞は、本当にやばい。
『悪魔の囁き』と言って良い、背徳の響きがある。
ステファニーは、じっと俺を見つめていた。
俺と会った時、放っていた波動が全く変わっている。
生意気で我儘な波動から、
何か、こう寂しげな、切なげな優しい波動に……
さらさら長い金髪に、美しいブルーサファイアのような碧眼。
健康女子の金髪碧眼のミシェルとは、趣きが違う。
ミシェルが向日葵のような明るい大輪の美少女ならば、
ステファニーは、ちょっとだけ派手だが、まるで可憐なフランス人形だ。
そしてレベッカとはひと味違う、ツンデレ美少女の大変身。
そう考え、俺は少しだけ、ドキッとする。
この子も、凄く魅力的な子だなって……
『あ、ああ、本当はお前の記憶も消したいけどな。忘却の魔法を掛けると、俺とのやりとりで生じた、今のお前の気持ちもリセットされてしまう』
『え? リセット……される?』
『おう! 俺の事だけじゃなくて、折角、反省した気持ちまで消えてしまうんだ。そうなると、また会った時、「私の下僕になれ」って言われるだろう? それは嫌だからな』
俺が言うと、ステファニーは、いきなり俺に飛び付いた。
そして両腕を回し、「ぐっ」と強くしっかりと、抱きついたのである。
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