表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
68/229

第68話「ステファニーの事情」

『うう、駄目ぇ!! ケン!! ケン!! もう離さないでえ!! 絶対に私を離さないでぇ!!』


領主オベール様の娘ステファニーは、心の声で叫びつつ、必死に俺へしがみつく。

彼女の顔を良く見ると、完全に化粧は剥がれ落ち、素顔が露わとなっていた。


意外と言ったら失礼だが……

『険』が取れた素顔のステファニーは、

貴族の娘らしく凛とした品があり、且つ可憐だった。


おお! とんでもなく美しい、フランス人形と化している!


俺は、彼女の品と可憐さについ感動してぽつりと言う。


『ステファニー……お前、素顔の方が何倍も、いや何十倍、何百倍も可愛いぜ』


『え!?』


俺の褒め言葉を聞いて、しがみつくステファニーの腕から力が消えた。

 

おお、丁度良いタイミングだ。

脱力したステファニーを抱えたまま、俺は彼女と共に、ゆっくりと立ち上がった。


「ぽかん」としているステファニー。

俺は優しく離して、彼女と向き合う。


『安心しろ。あと1分後には喋れるようになる。同時に、お前の従士達も魔法が解ける筈さ』


『え!?』


『ステファニー、もう俺の事は忘れてくれ……だが、さっきの約束は守ってくれよ』


『は、はい……』


『お前は可愛くて綺麗だし、本当は凄く良い子だ』


『え!?』


『絶対に幸せになれよ……じゃあ、さよならだ』


俺との抱擁を解かれたステファニーは、呆然としたまま立ち尽くしている。

 

虚脱状態のステファニーへ手を振りながら(きびす)を返すと、

俺はレベッカ達が待っている店へ戻って行った。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


こうして……俺は嫁ズの待つ店へ無事に戻った。

 

席へ着くと、レベッカとミシェルは身を乗り出して来た。


俺がどうやってステファニーの魔手から逃れたか、知りたいらしい。


「まあ、それはここではなく、場所を変え、落ち着いてからな。トラブルは何も起きないだろうから、それだけは安心してくれ」


俺は、澄ました顔でお茶を濁す。


ここで顛末を詳しく話すと、驚いた嫁ズの声が大きくなるのは確実だからだ。


下手に誰かに聞かれでもしたら、大騒ぎになる。


そうなると、話は自然にステファニーの生い立ちや現在の事情へと変わった。


まあご領主様の娘の話だって、やたらに大声で喋って良いわけがない。


当然ながら、声のトーンを極力押えた口調となる。

 

ステファニーの事を詳しく知っているのはミシェルなので、

俺とレベッカが聞き役となった。


「あの子はね……本当に可哀想な子なのよ」


「え?」

「本当に可哀想って、何?」


俺とレベッカは、ミシェルの意外な切り出し方に驚いた。

あの高慢で、我儘し放題のステファニーが本当に可哀想って、

一体どういう事だろう?


「あの子……ステファニー様のお母様が、数年前にお亡くなりになってね。しばらくは父と娘、ふたりで仲良く暮らしていたの」


ふ~ん……

ステファニーのお母さん……もう亡くなっていたんだ。


「ふんふん」と頷く俺とレベッカを見て、ミシェルは話を続けた。


「去年の話……16歳になったステファニー様に、婿を取ろうという話が持ち上がったわ。オベール家の寄り親にあたる、王都のさる上級貴族のご子息という噂だったのよ」


へえ、ステファニーの縁談? 婿取り?

って、去年16歳ならば、今のステファニーは17歳で、俺よりも2歳上か……


俺はそう詳しくはないが、貴族の結婚って、多分、

利害関係ありきの政略結婚だろう。


こういうのって、一度も会った事無い、全く見知らぬ相手と、

いきなり夫婦になる事が多い、というイメージがある。


貴族の男=傲慢という微妙なイメージも、俺にはある。


であれば、ステファニー、……大変だな。


俺達の反応を見て、ミシェルは際どい話に踏む込んで行く。


「だけどね、驚いた事に、王都から来たのは、ステファニー様のお婿さんではなかったのよ」


「え? お婿さんとは違うって?」

「一体、誰が来たの?」


「それがね、ステファニー様と同じ貴族の娘……それもバツ2の23歳だったの」


おいおい、それって!? 百合?


いや、違うだろ!

 

王都から来た貴族娘の『結婚相手』はステファニーじゃない。


まさか! ステファニーの縁談じゃないって事?


俺とレベッカは、顔を見合わせた。


「そう! 今、旦那様とレベッカが思った通りよ。もう少し補足説明するとね」


「…………」

「…………」


「寄り子のオベール様を直属の部下として、もっと深く取り込みたい……王都の上級貴族にはそんな思惑(おもわく)があったらしいの』


「…………」

「…………」


「上級貴族の次男とステファニー様の縁談は一応は進んでいたの。だけど、たまたまその上級貴族には、嫁ぎ先から離縁された23歳の長女が居たのよ」


「…………」

「…………」


「上級貴族はね、予定していた次男をステファニー様の婿として送るより、この長女をオベール様の再婚相手として送り、オベール様を自分の義理の息子にした方が全然良い。自分の思惑が叶った上で、上手く(まと)まる、と思ったみたい」


うお! 凄いな! それ!


利害のみで考える結婚、ここに極まれりって奴だ。


王都で育った上級貴族の娘ならば、

こんな遠くの田舎へイヤイヤ来たのが目に浮かぶ。

 

ステファニーにしろ、その上級貴族の娘にしろ、

この世界の上流階級女性って……親とか兄弟とか、男の都合で単なる駒にされる。


ホント、気の毒だなぁ……

 

俺が「つらつら」考える間も、ミシェルの話は続いている。


「最初はひどく戸惑ったオベール様だったけれど、このバツ2娘が、とても美しかったからすぐ夢中になっちゃったの。即、年の差結婚、つまり再婚して、43歳のオベール様が、今や、20歳年下の、この新しい若奥様にベタ惚れなのよ」


何だよ、それ……良くある童話みたいになって来たぞ。

 

まあ、洗練された都会の若い女性にコロッと参ったんだろうなぁ……

ここのご領主オベール様は。


「そうなると、ステファニー様は全然面白くないわよね。母と言うよりも自分の姉のように若い、新しいお母様とも全く馴染まなかったようだし……そのうちに、自分に仕える者を手駒にして対抗しようとしたの」


成る程! 義母と娘の確執か。


でも、したの……って、過去形だな。


「だけど……その新しい若奥様は結構なやり手だった。ステファニー様の側につく、従士達を逆に取り込んでしまったのよ」


ミシェルは、ふうと息を吐き、話を続ける。


「結局、味方として残ったのはさっき居たあの3兄弟だけ……3兄弟は子供の頃からステファニー様へ仕えていたから、若奥様の懐柔工作も通じなかったらしいわ」


そうか……それでか。


ようく、分かった。

話が、見えた。

 

だからステファニーは下僕という名の『部下』で俺を欲しがったのか。

ちょっと可哀想だな、あいつ。

 

だけど……ご領主オベール騎士爵家、内部の権力争いなんて、

単なる領民で、平民の俺が出て行っても仕方がない。


下手にかかわって、そんな面倒ごとに巻き込まれるなど真っ平御免だ。


ボヌール村へ変な影響が出る可能性もあるし。


俺は気分を重くしながら、冷めた料理を口に運んだのである。

いつもご愛読頂きありがとうございます。


※当作品は皆様のご愛読と応援をモチベーションとして執筆しております。

宜しければ、下方にあるブックマーク及び、

☆☆☆☆☆による応援をお願い致します。


東導号の各作品を宜しくお願い致します。


⛤『魔法女子学園の助っ人教師』

◎小説書籍版既刊第1巻~8巻大好評発売中!

《紙版、電子版、ご注意!第8巻のみ電子書籍専売です》

(ホビージャパン様HJノベルス)

※第1巻から8巻の一気読みはいかがでしょうか。


◎コミカライズ版コミックス

(スクウェア・エニックス様Gファンタジーコミックス)

既刊第1巻~5巻大好評発売中!

《紙版、電子版》

何卒宜しくお願い致します。

コミックスの第1巻、第3巻、第4巻は重版しました!

皆様のおかげです。ありがとうございます。

今後とも宜しくお願い致します。


また「Gファンタジー」公式HP内には特設サイトもあります。

コミカライズ版第1話の試し読みも出来ます。


WEB版、小説書籍版と共に、存分に『魔法女子』の世界をお楽しみくださいませ。


マンガアプリ「マンガUP!」様でもコミカライズ版が購読可能です。

お持ちのスマホでお気軽に読めますのでいかがでしょう。


最後に、


⛤『外れスキルの屑と言われ追放された最底辺の俺が大逆襲のリスタート! 最強賢者への道を歩み出す!「頼む、戻ってくれ」と言われても、もう遅い!』《連載中》


⛤『冒険者クラン新人選択希望会議でドラフト1位指名された無名最底辺の俺が、最強への道を歩みだす話!』《完結済み》


⛤『頑張ったら報われなきゃ!好条件提示!超ダークサイドな地獄パワハラ商会から、やりがいのあ

る王国職員へスカウトされた、いずれ最強となる賢者のお話』《完結》

⛤『異世界ゲームへモブ転生! 俺の中身が、育てあげた主人公の初期設定だった件!』《完結》

も何卒宜しくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ