第60話「ミシェルの過去⑤」
俺のビンタで、気絶しているクランリーダーのアホ髭男。
結構きつく叩きのめしたので、普通なら少しは情けをかけるところだが……
俺は絶対に許さない。
何故ならば、念話でこいつの心を読むと、
今回みたいな余罪がたっぷりある。
何だよ、こいつ、あちこちで、無抵抗の女子達を散々「いたぶって」いやがった。
外道クラン大狼の奴らと一緒だ。
となれば、こんなクソ害虫どもは……世の中に不要。
容赦なく抹殺してやるしかない。
俺は、空中に浮かんだ幻影のクッカに問いかける。
『なあ、クッカ……俺が今、何を望んでいるのか、分かる?』
『うふふふふ、わっかりますよ~、こいつらを抹殺する魔法のレクチャーでしょう? 貴方の妻ですから~』
おお、珍しく天界の女神クッカ様の邪悪な笑み。
そういう美悪女なクッカも、俺は結構好み。
これは、相当やばそうな魔法が教授されそうだ。
『ええっと……具体的にどんな魔法かな?』
『はい、去勢の魔法でっす!』
はぁ!? きょ、去勢の魔法だとぉ!!!
さすがに驚いた!
ええと……皆さんはご存知だと思うけど……
補足すると、去勢とは生殖不可能にする事。
種としての保存行為をNGにする事、である。
それって……まさか!?
某ドクターみたいに、すぱっと! いっちゃうの!?
『……な、何? ク、クッカさん、どんな魔法っすか?』
『うっふふふ、文字通り、こいつらは一生、女の子が抱けない身体になります……とはいっても、あれを切り落とすとか、ダイレクトな事はしませんよ、念の為』
『そ、そう! 切ったりはしないのね?』
『はい、しません! 但し! 魔法の精神へ及ぼす効果により、男子としての本能をそぎ落とします!』
『え? 男子としての本能をそぎ落とす? 何か、物騒だね』
『いえいえ、物騒とは思いません。まあ、ズバリ言えば、女子を見ても、男として何も感じなくなるのです』
『え? 女子を見ても男として、何も感じなくなるのか……ときめかないって事かな?』
『それ、近いです! 普通に男としての価値観を持ち、生活はする中で、正直、本能的な欲求に関しては、一切皆無となります!』
『おお、男のままなのに、女子に対し、本能的な欲求が一切皆無、かあ……それって、本人にとっては、寂しく不幸な人生決定だな』
『はい! 決定でっす! まあケン様の言う通り、本人にとっては、ですね』
『じゃあ、他者、第三者から見れば、となると?』
『はい! 他者から見れば、動物に対する普通の去勢同様、ストレスが軽減され、行動が落ち着くようになります。人間ならば悪心も著しく無くなりますから、理性も少しは戻って来るでしょう。念の為、言いますけど、奴らの外見上は、ビフォーアフターで、何も変わりません』
『…………』
『ケン様! 女子の敵は即、天誅でっす! じゃあ、さっさといっときましょうかぁ』
『は、はぁ……』
成る程! さすがに、女神様の使う魔法。
このような魔法があれば、俺の居た前世でも性犯罪など絶対起こらないだろう。
まあ、女子を愛する男としては完全に……詰んでしまうが……
それから俺はクッカの指示に従い、しれっと、
世にも怖ろしい魔法を掛けたのである。
気絶している、クランの奴等3人へ。
うんうん! 確かに……地獄だ。
こいつらは男のままなのに、
これからは、可愛い女子を見ても何も感じないなんて……
あくまで個人的な意見だが、やはり、人生は終わったな。
さあて、最後はカミーユの『始末』……だ。
この間、奴はどうしていたのかと、見れば……
足腰が立たず、芋虫のようにこの場から這って逃げようとしていた。
情けない事に、俺と仲間の戦い振りを見て、腰を抜かしてしまったらしい。
カミーユにも沈黙の魔法を掛けているから、外部に洩れない念話で話す事にした。
『たたた、助けてくれぇ~』
開口一番、カミーユの心から漏れたのは助けを求める声であった。
ミシェルに散々、えらそうに威張り、
俺を散々、下に見て威嚇していた今までの強気はどこへ行ったの?
『おいおい、カミーユ。てめえ、さっきと随分態度が違うね』
『た、助けてくれぇ~』
『びびって、怯えて、助けを求めるだけかよ? まともに俺と話す事も出来ないのか? 情けなく最低最悪な奴だな、てめえは……はっきり言っておくぞ』
『ひええええ』
そう! カミーユの奴、すっかり俺を怖がっていて、まともな会話にならない。
なので、俺は一方的に告げる事にした。
『お前が昔、ミシェルと付き合っていようが、どうでも良い。あいつは今、れっきとした俺の嫁だからな。俺とだけ、愛し合う想い人なんだ!』
『お、お願いだあ! み、見逃してくれぇ! た、頼むから許してくれぇ~』
『お前が、ボヌール村をひどく馬鹿にしようが、あっさり捨てようが、その後に、どこでどう生きようが、俺達には一切関係ない! だがな、ミシェルが大事にしている思い出を穢すのだけは絶対に許さねぇぞ!』
『ひっ、ひええええ!!!』
以上の反応を見る限り、カミーユの耳に俺の言葉など、
ろくに入っていないだろう。
だが俺は、はっきりと言わずにはいられなかった。
人は、故郷を離れる可能性がある。
ずっと住めない場合もある。
それは仕方がない。
各自に、様々な事情があるからだ。
しかし故郷というのは、先祖と一緒で自分のルーツである。
故郷や先祖を馬鹿にし、冒涜するのは、
自分の出自と存在を頭から否定する事に等しいと、俺は思う。
そう、君は誰かと誰かから生まれて来たのだし、生まれた場所もあるんだよと。
何も無い空間から自然にひとり、
勝手に湧いて出て来たなど、絶対に無いのだから。
しかし……故郷や先祖の話に限った事ではないが、
どう丁寧に説明しても、証さえ見せても、
何も分からない、または聞こうとはしない、くそが付く馬鹿はどこにでも居る。
このカミーユも、そのひとりだ。
『うわあああっ、ひいいいいっ』
『こいつはな、ミシェルから、てめえへの餞別だ、感謝して受け取れよ』
ぱんぱんぱんぱんぱんぱんぱ~ん!! ぱんぱんぱんぱんぱんぱんぱ~ん!!
俺は、クランの奴等と同じ様にカミーユの頬を張った。
完全に意気地をなくしていたカミーユは……呆気なく気を失う。
更に俺は、カミーユへも去勢の魔法を掛ける。
もうこいつは『女子を求める男』ではない……
第二のミシェルが出て来る事は無いだろう。
こうして、カミーユ達の始末は終わった。
カミーユ達の『処理』は、人けの無い通りにおいて、
静かに隠密裏に行ったので、衛兵が来ないのは勿論、誰にも気付かれなかった。
最後には、クラン全員へ、俺達の記憶を消す為の忘却の魔法、
そして不本意ながらも、怪我を治癒する回復魔法を行使し、『最終処理』とした。
これで奴等が意識を取り戻しても、俺達とは何も関わりがないということになる。
その上、去勢魔法の威力で、おとなしくなり、
二度と女性へ悪さは出来ないだろう。
……肩をすくめた俺は、
ミシェル達の待つ居酒屋ルイーズへ戻った。
そんなこんなで、何事もなく無事に、手を軽く振りながら戻って来た俺に、
レベッカは当たり前という満足そうな顔。
片や、ミシェルは安堵と辛さで泣きそうな顔になっている。
見やれば、頼んだ料理がそのままの状態で、
テーブルの上に溢れそうになっていた。
ふたりとも、食べずに俺を待っていてくれたらしい。
凄く嬉しくなった……
「ミシェル、カミーユの奴さ、お前に宜しくってさ。元気でな……って言ってたよ」
うん、嘘も方便。
カミーユ達へは、明日の朝早く、このエモシオンから出て行き、
『遥か遠くへ行くよう、促す魔法』もかけたから、
もう二度と会う事は無いだろう。
「ケン……様」
ああ、ミシェルったら……
俺に「私の過去の事を何も聞かないのか?」って顔してるね?
ああ、聞くものか!
俺は、今のお前が好きなの! 大好きなの!!
だから、ノープロブレム!
「おう! ふたりとも、待たせてごめんな。さあ! 飯、食べようぜ。可愛い嫁さん達!」
俺は重い空気を吹き飛ばすべく、ミシェルとレベッカへにっこり笑う。
そして元気良く「失礼!」と椅子へ座り、
ふたりの愛する嫁ズへ、食事を始めようと促したのである。
いつもご愛読頂きありがとうございます。
※当作品は皆様のご愛読と応援をモチベーションとして執筆しております。
宜しければ、下方にあるブックマーク及び、
☆☆☆☆☆による応援をお願い致します。
東導号の各作品を宜しくお願い致します。
⛤『魔法女子学園の助っ人教師』
◎小説書籍版既刊第1巻~8巻大好評発売中!
《紙版、電子版、ご注意!第8巻のみ電子書籍専売です》
(ホビージャパン様HJノベルス)
※第1巻から8巻の一気読みはいかがでしょうか。
◎コミカライズ版コミックス
(スクウェア・エニックス様Gファンタジーコミックス)
既刊第1巻~5巻大好評発売中!
《紙版、電子版》
何卒宜しくお願い致します。
コミックスの第1巻、第3巻、第4巻は重版しました!
皆様のおかげです。ありがとうございます。
今後とも宜しくお願い致します。
また「Gファンタジー」公式HP内には特設サイトもあります。
コミカライズ版第1話の試し読みも出来ます。
WEB版、小説書籍版と共に、存分に『魔法女子』の世界をお楽しみくださいませ。
マンガアプリ「マンガUP!」様でもコミカライズ版が購読可能です。
お持ちのスマホでお気軽に読めますのでいかがでしょう。
最後に、
⛤『外れスキルの屑と言われ追放された最底辺の俺が大逆襲のリスタート! 最強賢者への道を歩み出す!「頼む、戻ってくれ」と言われても、もう遅い!』《連載中》
⛤『冒険者クラン新人選択希望会議でドラフト1位指名された無名最底辺の俺が、最強への道を歩みだす話!』《完結済み》
⛤『頑張ったら報われなきゃ!好条件提示!超ダークサイドな地獄パワハラ商会から、やりがいのあ
る王国職員へスカウトされた、いずれ最強となる賢者のお話』《完結》
⛤『異世界ゲームへモブ転生! 俺の中身が、育てあげた主人公の初期設定だった件!』《完結》
も何卒宜しくお願い致します。




