第54話「エモシオンの町へ到着!」
俺達を、待ち伏せしていた襲撃者は……
結構な数の人間の山賊ども、そして同じく結構な数のオークども。
別々に、待ち構えていたのは、だいぶヤバかった。
襲撃者第一弾の山賊を一旦退け、ホッとひと安心しても、
すぐの連チャンで第二弾のオークどもに襲われたら……
間違い無く、死者も出る大惨事になっていたのは間違いない。
一般人?である商隊の連中も居るので、
俺が本来持つ、レベル99の力を完全には発揮出来ない状況なのも痛い。
そこでクッカと事前に相談して、
この凶暴な2組を作戦『クッカ』で相討ちにさせた。
俺が直接手を下さないのが「ずるい」という非難もありそうだが、
相手は人間の心を捨てた外道と、人間を容赦なく襲い喰らう人外の捕食者。
奴等に情けをかける方が論外という認識であり、
俺は全然、哀れみなど感じない。
こうして、悪党ども、魔物どもを上手く『闇』に葬れたので、
俺達一行は順調に進んだ。
途中で1時間の休憩を挟んで更に進み、妨害無く、
エモシオンの町へ近づいたのである。
ベイヤールに跨り、先頭を並足で行く俺へ、レベッカが馬を駆り傍へ寄せて来る。
道中、何も事件が起きず安心しているような、
それでいて暇を持て余しているような、微妙な笑顔を浮かべている。
「ねぇ、ダーリン。幸い、敵襲が無く、順調で予定通りに進んでいるね。ちょっと拍子抜けだけど」
「あ、ああ……そうだな。皆、無事で何より。安全が第一さ」
「うふふ、だね! でも残念。もし不埒な敵が襲って来たら、私の必殺、百発百中な弓矢の餌食になっていたのにさ」
レベッカは少し頬を膨らませて、背中の弓と矢筒を叩いた。
言葉通り、いかにも残念そうだ。
多分、ひと暴れしたかったのであろう。
ここは、少しフォローしてやる方が良い。
女子と上手くやるには、『まめさ』が肝心だよって。
学生時代のモテ先輩が、笑顔で教えてくれたっけ。
「まあ確かに、そうだ。レベッカの弓矢は百発百中の達人レベルだからな」
「さっすが、ダーリンは分かってるぅ……だけど」
俺が褒めたら、レベッカは嬉しそうな表情になった。
でもさ、だけどって、何?
「だ、だけど?」
思わず突っ込みとは何かを、俺が気にして待っていたら……
レベッカが、首を傾げる。
「もしかしてさぁ……ダーリンは、私達に内緒で、悪党どもをやっつけてない? ここら辺って、大体出るんだよ、山賊や追いはぎがさ、魔物もね」
おおお、す、鋭いっ!
やっぱりウチの、嫁ズの直感は素晴らしい。
俺はちょっと動揺して、つい噛んでしまう。
「や、や、やっつけてないよ。ホラ、俺って、さ。レベッカ、ミシェルとは、ずっと一緒だっただろ」
慌てて否定、且つ、自己弁護する俺を見ても、レベッカはにこにこしている。
「うっふふふ、冗談よ。冗談。慌てて噛んだのが、ほんのちょっと怪しいけど……」
「い、いや、怪しくないぞ」
「うふふ、そうよね。もしも馬に乗ったこの状態で、見えもしない敵とか、または凄く遠くに居る悪党をやっつけられるとしたら、どれだけ超人なのよ」
……ごめん、実は女神様と一緒に、人間の悪党と魔物どもをやっつけてます。
そして、俺は遥かに人間、超えてます。
なんたってレベル99の超人ですから。
いや、超人というより凶悪魔人です。
何も知らずに、人懐こい笑顔を向ける愛する嫁。
心の中で「ごめんね」と俺は詫びを入れたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
俺の秘密は、嫁ズとは、ある程度共有しなければならない。
だが、全てを急にオープンにしたら、やっぱり彼女達のショックは大きいだろう。
とりあえず俺の立ち位置は、遠くから来た、
強くて優しい『ふるさと勇者様』だから。
だけど……
もっと凄い秘密もある。
例えば、俺が一旦死んで転生し、この中世西洋風異世界へ来た経緯とか。
天界の管理神様の存在とか……
俺はレベッカに、若干、強張った笑顔を見せ、
何とかごまかしたのだ。
更に、3時間後……
進行方向に向かって左側に、城壁と思しきものが見えて来た。
あれが、俺達の領主でもある、
クロード・オベール騎士爵様が直接治めるエモシオンの町か。
ちなみにエモシオンとは、確かフランス語で『感動』という意味である。
この中世西洋風異世界で何故フランス語が普及しているのか不思議なのだが……
何でも、現領主オベール様の数代前の当主が、
町を造る時に視察に来て、感動するような町を! と命じたらしい。
その命令が、そのまま町の名前として定着したという。
ふうん、『感動』……ねぇ。
このエモシオンという町で、どのような出来事が待っているだろうか?
良い意味で、感動する体験が出来れば良いけどなぁ……
俺はそう期待して、ベイヤールの歩みを進めた。
更に1時間後……
遂に俺達は、商隊と共にエモシオンの町の正門前へ来た。
正門前は土が円形に踏み固められていて、ちょっとした広場みたいになっている。
プリムヴェール王国南方、辺境の町であるエモシオンは、決して大きくはない。
だが、「ちんまり」した人口約100人のボヌール村と比べれば規模は段違いだ。
聞けば、エモシオンの人口は約1,500人……
改めて見やれば、いかにもファンタジーっぽい中世西洋風の町で、
古ぼけた石造りの壁に囲まれた地方都市という趣き。
町を取り囲む街壁は10m少しくらいで、ほどほどの高さ。
それほど高くはない。
そして、正門前広場には、町へ入場する人々がずらりと並んでいる。
どうやら身分、お金の有無で何列かに振り分けられているらしい。
この異世界は、実にはっきりしている。
何がって……
完全に、王族、貴族から平民へ至るまで、
身分差のある、『格差社会』って事なんだ。
俺は次に、正門脇の詰め所を見た。
ボヌール村でさえ、ガストンさん&ジャコブさんという、
ふたりの門番が居るくらいである。
当然、このエモシオンの町にも屈強な門番達が居た。
それも、8人も居る。
ボヌール村は容易に『よそ者』を入れない為に、
武器の一時預かりなど、ローカルルールが徹底されていた。
だが、エモシオンの町は安全面は勿論だが、
経済的なローカルルールの方が徹底されていた。
そう、経済的なローカルルールとは、税金徴収の徹底である。
オベール様の領民である、ボヌール村の村民はまだ良い。
単にこの町への、『入場税』だけで済むからだ。
本当は仕事で来ているのだから、俺達の分の入場税も、
ジェトレ村の商隊のドケチ親爺が払ってくれても良いと思う。
いわゆる必要経費って奴だから。
しかし親爺が出す気配が無いので、仕方無く、俺達の分は自分で支払った。
こうして……
俺達は自分達の入場税を支払った後に、
ジェトレ村の商隊が入場手続きをするのを、大人しく待っていたのである。
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