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第280話「泣いた勇者」

心の底から、嬉しそうに笑う元魔王はさておき、話を紙芝居へ戻すと…… 


乗っていた竜から投げ出され、魔王は……本当に泣いていた。


手下の魔物にも見捨てられ、「自分は孤独だ……」と、

大いに嘆き、慟哭(どうこく)していたのだ。 


そんな魔王に対し……俺の子供達は、とても優しい子ばかり。


加えて、リゼットの上手い語り口が、魔王の孤独をリアルに表していた。


今まで「倒せ」とか「やっつけろ」と言っていたのに……

友達皆無、ボッチの魔王に同情、180度変わって気の毒となったらしい。


「なんか……まおうかわいそう……」

「うん、そうだね……」

「ひとりぼっちの……ぼっちって、さびしぃ」


「うんうん! 勇者様もみんなと同じだぁ! 魔王が可哀そうになったんだぁ!」


リゼットも同感だと、笑顔で言う。


子供達は、勇者がどのような対応をするのか、気になるようだ。


「それで、それで」

「ゆうしゃさまは、なんていったのぉ」

「おしえて、おしえてぇ」


またもやせがむ子供達へ、リゼットは微笑む。


おお、敢えて言えば、慈母の微笑み。

つい甘えたくなる……最高の癒し笑顔だ。


「あのねぇ、勇者様はねぇ、優しいのよぉ。そして女神様も同じくらい優しいの。だから、可哀そうな魔王と友達になってあげるよって。もう悪い事をしないならねって言ってあげたの!」


子供達の期待を……勇者は裏切りはしなかった。


悪い事をした魔王だが、ちゃんと反省するならばと、

条件付きで許してあげたのだ。


「おお、やった! ゆうしゃさま、やさしい」

「それで、まおうはぁ?」

「ねぇ、やくそくしたのぉ?」


子供達が早くと、答えをせがむ。

当然、ハッピーエンドを望んでいる。


リゼットったら、今度は悪戯っぽく笑って、ウインクする。


「魔王は、勇者様としっかり約束したよぉ! もう二度と悪い事はしませんってねぇ。だから勇者様は神様にお願いしたぁ!」


どんどんどん!


「勇者様が一生懸命頼んだのでぃ、神様も魔王を許してあげたぁ! 勇者様の仲間になった魔王は一緒に人々を魔物からぁ、守ってくれるようになりましたぁ!」


どんどんどん! どんどんど~ん!


「すごい~、まおうがなかま?」

「わぁ、ゆうしゃさま、もっとさいきょうだぁ!」

「ゆうしゃさまぁ、だいすきぃ!」


期待した通りのハッピーエンドに、子供達は満面の笑みを浮かべる。

本当に、嬉しそうにしていた。


「こうしてぇ、村には平和が戻り、人々はず~っと幸せに暮らしましたとさ……おしまい……」


子供達の笑顔と声援を受けながら、リゼットは最後の紙芝居絵をめくり、

パタン!と木枠の扉を閉めた。


「「「「「わあああああっ」」」」」


湧き上がる歓声。

大きな拍手。


子供だけではない、年配者も大人も、この場に居た村民全員が一緒に喜んでいた。

 

と、その時。

俺の心に、クッカの念話がまたも聞こえて来た。


見れば、彼女は傍らで俺をじっと見つめ、優しく微笑んでいる。 


『旦那様、本当に本当にありがとう! 私達は皆、貴方に感謝しています。この、お芝居は、ほんのお礼なのですよ、私達妻からの』


『え? お礼?』


『はい! ふるさと勇者は秘密の裏仕事……ボヌール村の人達は、頑張る旦那様の日々の苦労を誰も知らない……』


『い、いや! 俺の苦労って……』


『ええ! 旦那様が勇者になった理由を含めて、村民全てに教える事は絶対に出来ない。だから、仕方がないけれど……こうして内容を変えて、紙芝居にすれば後世には残る……少しは苦労が報われますよ』


『後世に残る? 少しは報われる? 俺のやった事が?』


じゃあさっき嫁ズが叫んだ、勇者への声援って……

日々、家族と村の為に働く、俺を奮い立たせようとする応援。


そして、温かい感謝もこもった熱い声援だったんだ。

 

このおとぎ話は、嫁ズから贈られた俺へのエール。

嫁ズの優しい思いやり、……俺への深い愛だった……

 

おいおいおい! 何だよ!


俺に内緒で、嫁ズがこんな凄いサプライズを用意してくれていたなんて。


最高に嬉しいや。

 

ああ! 俺、もう駄目だ……


嬉し過ぎて、胸が一杯になって……涙が出て来た。


いや、出て来たなんてもんじゃない。

溢れて来たよ!


許されるのなら、思いっ切り、「ありがとう」って大声で叫びたいよ!!!


そしてクッカの、俺への話は……まだあるようだ。 


『ねぇ、旦那様。この紙芝居は旦那様の頑張りだけじゃない。数奇(すうき)な運命に翻弄(ほんろう)されたケンとクミカが……この世界で生きた(あかし)も入っていると思うの』


『お、俺とクミカの……』


『ええ、ケンとクミカ、ふたりの愛と思い出が……素敵なおとぎ話となって私達の子供達へ、孫達へ、その先の未来へと伝わって行く……ふるさと勇者の物語って、凄く大切だと思うから……この村の人達に、絶対に忘れられてはいけないわ』


俺とクミカの愛が……思い出が……


絶対に、忘れられないようにだって!?

 

ああ! だから駄目だって、クッカ。


そんな事を言われたら……


俺の涙は、もう止まらない


「どばどば」流れ落ちて、何か……どこかの滝みたいになっている。


「ねぇ、パパ!」


クッカと念話で話していたら、娘のタバサが割り込み、抱きついて来た。


大泣きしている俺を見て、心配しているようだ。


「どうしたの? めがまっか、すごくないてるよ、パパ」


「あ、ああ、良い話だったからな、感動したんだ……」


俺が泣きながら答えると、タバサは苦笑していた。

まだまだ幼いのに………とても大人っぽい表情だ。


おしゃまなタバサに、微笑ましくなる……

子供って、日々成長しているんだなと感じる。

 

ああ、複雑な感情が俺を襲って来る……


泣きながら笑ってしまう……俺の表情を見て、タバサは叱る。


まるで、弟達の面倒を見る、しっかり者の姉のように。


「もう、だめじゃない、しっかりして。ママもあたしも、ないていないのに、パパったら、なきむしだよ」


「お、おお、タバサ、御免な。俺は、もっとしっかりするよ」


「うん! やくそく! パパ、これからもたよりにしてるっ、だいすきっ!」


タバサは、俺に抱きついた手に力を入れる。

「きゅっ」と優しく……


うん! 俺もタバサが可愛い!


超大好きだぞ!


それに、ちゃんと約束する。


俺はもっと、もっと強くなる。

気持ちも、身体も……

 

大事な大事なお前達、愛する家族をしっかり守りたいから。 


そして、第二の故郷……

心のふるさとである、この素晴らしいボヌール村の平和を守る為にも……


改めて、決意した俺も、優しく優しくタバサを抱きしめていたのであった。


※『昔に帰ろう2』編はこれで終了です。


ご愛読ありがとうございました。


次話からは新章が始まります。


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