第214話「怪しい依頼」
「では、とあるランクAの依頼を受けて頂き、見事クリアして下さい。それで、あなた方をランクSと認定しましょう」
という、冒険者ギルドのマスターから、提案があった。
提案を聞いた、俺とジュリエットは顔を見合わせ、大喜び。
多分、高難度の依頼であろうが、
今の俺達ふたりなら、イージーモードとなるだろうから。
「では、明日午前8時、おふたりともこのギルドマスター室へ来て下さい。詳しい話はその時に……」
そう言われた俺達であったが、ふと俺に、嫌な予感が。
はっきりとはしないが、何か、危機回避のスキルが働きかけている……
う~む。
何かが、引っかかる。
よくよく考えると、話がうますぎるし。
加えて、雰囲気もだいぶ怪しい。
何故ならば、俺達は、超が付く実力を認められたとはいえ、
ギルドマスター達にとっては、見ず知らずの冒険者、つまり未知数だ。
それを、いくらジュリエットが凄い目力で迫ったとはいえ、
たったひとつの依頼クリアで、即座に、レジェンドたるランクSにするだろうか?
もう少し、詳しく話を聞く必要がある。
だが……ジュリエットは? と見れば、
何の疑いも無く、速攻で部屋を出ようとしている。
「おい、ケン、どうした? 何をグズグズしている。もう行くぞ」
「おい、どうした?」じゃないよ、ジュリエット。
話の流れを読み、お前も少しは疑えって。
良~く考えたら、すっごく胡散臭い話じゃないか。
俺が訴える眼差しのアイコンタクト攻撃をしても、
ジュリエットは、ノーリアクション。
挙句の果てには……
「さあ! ケン! 昨日の店に行くぞ! 私は冷えたエールを、きゅっと飲んで、早く、ひと息つきたい」
なんて抜かす始末。
おいおい、駄目だったら。
俺は、急かすジュリエットを華麗にスルーし、ギルドマスターへ尋ねる。
「あの……ギルドマスター、ちょっと、宜しいですか?」
俺が、少し鋭い視線でギルドマスターを見つめると……
ギルドマスターは動揺。
「な、な、何ですか?」
ああ、やっぱりだ。
不自然に噛んでいる、すなわち動揺している。
……もう少し説明して貰おう。
「マスター、明日なんて、言わないで、今すぐに依頼内容を説明して下さい」
「な、何を言っているんだね、君は?」
「そうだ! 所属冒険者の癖に、トップ上司であるマスターに失礼だろう、君はぁ!」
いきなりのお願いに、ギルドマスター&サブマスターが怒ったが……
正義は我にあり。
「いえ、ちゃんと説明して頂かないと、依頼をお受け出来ないと、言っているんです」
「むむむ!」
俺の勘では……今回の依頼は、俺達に断られると、まずい依頼だ。
多分、いわく付きの依頼で、俺達以外に受ける者は居ない。
と、いう事は、ある程度は説明してくれる筈。
「ねぇ、お願いしますよ」
更に俺は、極めて軽度レベルで『戦慄のスキル』を発動した。
希望は、あくまでも平和的な解決だ。
いくら俺が『よそ者』の異世界人とはいえ、
ここで暴れたら女神ヴァルヴァラ様に迷惑がかかる。
「わ、分かった。依頼の概要だけ教えよう……」
概要だけ?
構わないっす。
裏技の念話を使い、あなた方の本心を、バッチリ読みますから。
「う、うむ、明日の依頼はな……」
以下、ギルドマスターが語った事を要約する。
依頼は討伐系で、王都から少し離れた魔の森に潜む、
凶悪な竜討伐。
討伐期限は無期限。
竜を討ち取った時点で依頼終了。
報酬は金貨5,000枚
倒す方法は、武器か魔法、毒は不可。
明日から、早速、依頼へ入って欲しいが、もうひとり、その討伐に参加する。
ふうむ、依頼内容は分かった。
だが問題は、気になるのは……「もうひとり居る」という参加者だ。
ラノベでは、たまにある展開なのだが、
魔物の最強クラスたる、ドラゴンの討伐という超高難度な依頼で、
見ず知らずの相手と、いきなり組むって、どうなのよ。
「成る程。竜討伐ですか。ちなみに、俺達が、組む相手って、冒険者ですか?」
「い、いや、違う」
「違うって、では、どこの誰ですか?」
「あ、ああ、討伐に参加する、いや、お前達と組まれる……いや、お前達を、お供にされるのは王族だ」
「お供? え? 王族ぅ!」
思わず俺の声が大きくなった。
さすがのジュリエットも部屋を出ず、厳しい表情で腕組みをしながら、
俺と、ギルドマスターの話を聞いていた。
討伐に参加し、対等に組むって話が、
いつの間にか、俺達が家来になるような、ありえない話へ変わっている。
まあ良いや、とりあえず話だけは聞こうか。
「明日朝の9時、お前達はギルドへは寄らず、まっすぐ王宮へ行け。そこでお前達が、お供をする方がお待ちだ」
「王宮ですか、で、どなたなんです?」
「現国王リシャール様のご子息、第二王子のラウル様だ。武勇に優れ、いずれは勇者間違いなしと評判のお方だ」
「えっ、王子?」
「うむ、王子様だ。明日は、国王陛下の御前で謁見後に、すぐ竜の居る魔の森へ出発する。お前達は、ラウル王子をまず守れ! 竜は、王子の手で、直接倒す事になっている。成功すれば、約束の報酬だけでなく、お前達にも勇者と同等の名誉が与えられる」
「…………」
俺は、思わず黙り込んでしまう。
それって……すっごく高難度な依頼だ。
待ち受けているのが単に竜で、それを倒すだけなら……
多分、俺とジュリエットにとっては楽勝だ。
しかし!
実力が全く分からない王子に、竜を倒すという大手柄を立てさせる。
というのは、ホント難しい。
それに……
「念の為に言っておくが、ラウル王子の代わりに、お前達が竜を倒すのは厳禁だ。もしもそんな事をしたら、王子に付けた監視用の魔法腕輪ですぐ分かる。契約不履行で、お前達は死罪となる、まあ中央広場で斬首刑ってところだな」
死罪? 斬首刑?
いきなり、何じゃあ、そりゃ!
とんでもなく、無茶苦茶だ!
「あの、それってどんな状況でも? もしも王子様が戦う最中、命にかかわる危ない状況で、助けようとして……つい竜を倒しても……ですか?」
「うむ、どんな状況でも、絶対に駄目だ、死罪、死罪」
きっぱりと言い放ったギルドマスター。
それも死罪って、何度も繰り返しやがって。
むむむ、何じゃあ~、そりゃ。
俺達の表情など気にせず、ギルドマスターはますます絶好調。
「そして、これは当然だが、万が一、ラウル王子を守れなくて、ちょっとでもお怪我をさせたら、やはり、お前達は死罪だ!」
おお、凄いや。
ここまでアホな話なら、呆れて、怒るのさえ忘れるくらいだ……
しかし、俺のスキルは真実を照らし出した。
とんでもない『真実』をギルドマスターは知っていた。
この依頼には、やはり『ウラ』があったのだ。
どうやら、俺同様にジュリエットもギルドマスターの波動を読んで?
隠された『真実』を知ったらしい。
複雑な表情で俺を見ると、仕方無さそうに渋面で頷いたから。
あまりにも馬鹿げたウラ事情を知った俺達は、
結局……この『依頼』を受けたのである。
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