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第215話「陰謀」

翌朝、俺とジュリエットは早く起きた。

ちなみに、ヴァルヴァラ様から貰った金があるので、昨日のホテルに連泊である。


さっさと支度をすると、ホテルの豪華なバイキング形式の朝食を食いながら、

他者には聞かれないよう、念話で『最終の打合せ』を行った。


昨夜は、あの後、居酒屋(ビストロ)勇者亭で飲みながら、

やはり念話で、じっくり打合せをしたのは言うまでもない。


それだけ今回の事情は、複雑で入りくんでいるから。


打合せの内容は少し重かったけど、

ジュリエットと、ふたりで飲む酒はやはり楽しかった。

調子に乗って、少々飲み過ぎたかもしれない。


閑話休題。


昨日ギルドマスターから引き出した情報によれば、

ラウル王子は、まだ15歳の少年だそうだ。


15歳といえば、俺が転生し、この中世西洋風異世界へ来た時に、

適当とはいえ、管理神様が設定した年齢。


ほんの少しだけ……懐かしい。


そして午前9時少し前……


俺とジュリエットは、王宮へ赴いた。


何と! 話はバッチリ通っていて、すぐに門番に中へ通され、

数人の騎士が付き添い、ラウル王子へと引き合わされる。


そのまま案内されたのは、ラウル王子の私室。


跪いてチラ見すれば、15歳のラウル王子は、身長170㎝くらい。

素直で真面目そうな、金髪碧眼の少年だった。


身体は、ある程度鍛えているかもしれないが、全体的にまだ細身で華奢。


内緒でレベルを見たら、まだ『15』くらい。


むむ、一応、それなりには戦えるけど……


どこからどう見ても、いきなり竜みたいな強大な魔物を、

単独で倒せる戦士とは思えない。


あっさり、返り討ちに遭うのが落ちだ。


「おはよう! 私がラウルである。この度はご苦労、世話をかける」


ラウル王子が名乗られたので、俺達も挨拶。

あくまでも、主役はジュリエットなので、当然彼女が先。


「おはようございます! 私はジュリエット! ランクAの冒険者です! 今回、王子の供を致します!」


相変わらず、はきはきしていて凛とした声。

ラウル王子の視線が、ジュリエットへ向けられる。


そうしたら何と!

ラウル王子ったら、トマトのように赤くなっている。


どうやら……ジュリエットの美しさに、ひとめぼれしてしまったらしい。


まあ、金髪麗人の綺麗なお姉さんは好きですか? って感じだものね。

俺だって、嫁ズが居なければ、惚れていたかもしれないし。


ああ、いかん。

続いて、俺も挨拶しなきゃ……


「お、俺は……「成る程! そなたはジュリエットと申すか! 頼むぞ!」ケンと……」


ああ、ラウル王子ったら、俺のあいさつをさえぎり、

身を乗り出してすっごい気合。


ジュリエットを熱く見つめている。

完全に、ベタ惚れだ。


一方の俺は、完全にオマケ扱い。

まあ……構わないけど。


ラウル王子に挨拶した後、大広間へ移動し、

午前10時から、彼の父であるプリムヴェール王国の国王様に謁見。


ここは当然、ラウル王子が主役。


「おお! 我が息子よ! 誉れ高き勇者として、我が王国に害を為す竜を倒せ!」


と父親の王様から、厳かな声で言われている。


対する王子は、少年らしく、きびきびした声で、


「はい! 父上! 勇者として、私は全力を尽くします!」とか言っている。


王子の背後に控える俺達は単なるお供だから、何も言わず跪いていただけ。


まあ、こんなモノだろう。


そして俺とジュリエットの視線は、さりげなく第一王子のアダンへ注がれていた。


アダンの年齢は、ラウル王子より3つ上の18歳、栗毛の巻き髪。

底意地の悪そうな目で実弟を見て、ニヤニヤ笑っていた。


俺は軽く息を吐き、ラウル王子へと視線を戻したのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


1週間分の食糧、そして馬3頭。

俺達に与えられたのは、それだけ……武器防具も自前。


ギルドマスターの話通り、討伐メンバーは王子と俺達の計3人のみ。

王族だというのに、騎士の護衛さえつかない。


やっぱり、これは……

ラウル王子を抹殺する為の陰謀だ。


領地を荒らす竜を、巧く倒せれば儲けもの。

ラウル王子が死ねば、表向きは名誉の戦死として、真の目的を達成する。


買収された冒険者ギルドのマスターの心の中にあったのは、

この非道な依頼が、実兄の第一王子、アダンが仕組んだ陰謀という事だった。


実はラウル王子は、兄アダンとは腹違いの弟。


ラウルはといえば、王様が王宮の侍女に手を付け、産ませた子なのだ。

母の侍女は、ラウルを産むと同時に亡くなったという。


時が流れ、ふたりの王子は成長した……


正室である王妃が生んだ長兄アダンに比べ、

次男のラウル王子は戦士としての素質が遥かに高い上、性格も温厚であった。


その為、ラウルは王宮どころか、国中の人望まで集めて行く。

最近は巷で、『未来の勇者』なんて称えられているようだ。


兄のアダンは、当然、それが面白くない。


正室たる王妃の子で、父から直々に指名された皇太子だから、

王位を継げるのは確実。


なのに、自分より『良く出来た弟』を疎ましく思ったのだ。


片や、ラウルは自分の出自をよ~く理解していて、大それた野心はない。

純粋な気持ちのみで、将来は近しい王族として、兄の為に尽くそうと思っている。


しかし、兄の被害妄想はどんどん膨らんで行き……

終いには、「父の王がラウルに継承権を与えるのではないか?」

と思い込んでしまった。


アダンは、腹黒い王宮魔法使いを巻き込み、偽の予言を行わせ、

ラウルを勇者として、竜退治に行かせるよう父に働きかけた。


それも、護衛の騎士無しの単独でと。


良く言えばお人好しの、悪く言えば暗愚な父は、

長男アダンの言う事を、真に受けてしまう。


しかしアダンにも、良心の欠片(かけら)くらいは残っていたらしい。

ラウルを単独で行かせるのを、さすがに思いとどまったのだ。

 

かといって、大事な家臣である、自分の騎士が犠牲になるのはNG。


なので御付きが冒険者ならば、あとくされなく、しかも使い捨てになると考えた。

その為、冒険者ギルドのマスターを未来の地位と多額の金により、買収したのだ。

 

買収されたマスターは『カモの冒険者』が来るのを待っていた。


しかし冒険者だって、馬鹿じゃない。

誰もが、死ぬと分かっている依頼を受けなかった。


そんな時、何も知らない、俺とジュリエットが来たという次第。

それでチャンス! とばかりに依頼を振ったのだ。


ランクSに昇格という『餌』をちらつかせて……


ここまで真実を知ってしまった俺とジュリエットは、いろいろ相談した。


哀れな運命を背負ったラウルへ、どう事実を告げたら良いのか、

または、その後どうするのか?


熟考、議論の末、出た結論は……ラウルの意思を尊重しようというものだった。 


という事で、王都を出て、馬に揺られて1時間。


もう、結構来たから、そろそろひと休み。

本当は、無理にひと休みしなくても、良いのだけれども……


そう! ここはラウル王子と腹を割って話す必要がある。


当然、休憩を持ちかけるのはジュリエットの役回りだ。


「王子、ここいらで、少し休まないか?」


「ああ、分かった!」


案の定。

ラウル王子は、ジュリエットの誘いに大きく頷き、OKを出したのである。

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