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第213話「いきなりランクA……だけど」

リベルテ商会のアルバンさんが手配してくれたのは、

この王都メディウムでも、最高級クラスのホテルだった。


広々とした豪華な部屋でゆっくり(くつろ)ぎ、

ふかふかの高級ベッドで、ぐっすり寝た俺達は、

翌朝……元気良く出発した。


ああ、当然ながら、俺とジュリエットの部屋は別々です、念の為。


意気投合?したからといっても、それ以上関係が深まる事は無く、

当然ながら、エッチな事は全く無く、と~っても健全な夜でした。


さてさて!

朝一番で、出発するのは意味がある。


時間的に、余裕をもって行動する為だ、


そう、冒険者ギルドは、午前8時からの営業開始。


そして、俺達が申し込む予定である、

例の『講座付きランク判定試験』の申し込み締め切りが、

その1時間後の、午前9時なのである。


そんな悠長には、していられないのだ。


え? 意味が分からない?


いえいえ、では論より証拠。


……何となくは、予想していたが、「やっぱり」という感じ。


開門前から並んでいたらしい、老若男女問わず、冒険者の大行列で、

ギルド前は大混雑だった。


さすがのジュリエットも、昨日とは全く違う様子を見て、

驚いて、目が真ん丸、口をあんぐり開けている。


「おいおい、ケン! 一体、何の騒ぎだ、これは?」


怪訝な顔で聞くジュリエット。


冒険者ギルドの『ラッシュアワー』は朝と夕方、それがお約束。

中二病知識が満載な、俺の中では常識。


だから、ジュリエットに教えてやる。


「彼ら彼女達は、全員、ギルド所属の冒険者。で、多分、割の良い仕事を狙って来た連中さ」


「む? 割の良い仕事?」


「ああ、朝から仕事をして、上手くやれば、ケースバイケースだが、午後半ばで、終わる事もある。そして貰った報酬で美味い酒を飲む。ほら、昨日の俺達みたいにさ」


「むうう……成る程、そうなのか」


「ああ、だから、俺には分かるよ、仕事をさっさと終わらせて」


「終わらせて?」


「ジュリエット、お前みたいな可愛い子と、居酒屋(ビストロ)で美味い酒を飲むなんて、冒険者にとって最高の贅沢じゃないか?」


「はぁ? 私みたいな可愛い子? さ、最高の贅沢なのか?」


「うん、贅沢。だって昨夜、俺、凄く楽しかったから! お前も楽しかっただろう?」


「う、ま、まあな……ケン、お前と飲む酒は美味いし、確かに楽しかった」


「よっし! じゃあ今日は、更に気合を入れて、相応のランク認定をして貰おう。そして俺とお前で、高難度の依頼をガンガンクリアして名を売ろう」


「う、うう、了解」


昨日とは打って変わって、今日は俺の方が気合が入っている。


逆にジュリエットの方が押され気味だ。


さすがにズルをせず、並んだので、

少し入るまでに時間がかかったが、

俺達はギルドへ無事入り、ランク認定の受付を済ませたのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


今更だけど、敢えて言おう。


俺は都会……すなわち王都は嫌だけど、冒険者生活自体には憧れていた。

まあ、それって、ラノベや漫画、ゲーム等々の影響なのだけれど。


更には、可愛い女子冒険者と楽しくやるような、昨日の飲み会だけじゃなく、

冒険者ギルドで講習を受け、ランク認定試験を受け、

晴れて、冒険者になる! って『王道な図式』を、ぜひ、体験してみたかった。


なので、結構ワクワクしていたのである。

気合が、相当入っていたのはそのせいだ。


しかし、ジュリエットは、結構根に持つタイプだって分かった。


どうしてかって?


受付してくれたのが、偶然、昨日と同じ男性職員だったのだ


「おい! お前! よくも昨日、私の事を散々馬鹿にしたな! お前の目がいかに節穴か、思い知らせてやる!」


などと、『口撃』したのだ。


いやいや、これって筋違いだろう。


だって、職員さん、全然悪くない……

ギルドの規約に則り、普通に対応&指導したに過ぎないから。


対して、当の職員は苦笑いしていたが、

すかさず俺がフォローしたのは、言うまでもなかった。


話を戻せば、まあ、ひとつ聞けて良かったのは、良い前例があった事。


このランク認定試験で、過去にランクAとなった冒険者が居たらしい。


であれば、俺達もランクAは行けるかも……


ランクAの依頼をいくつかこなせば、すぐに有名になるのは間違いないだろう。


このような流れになれば、俺が、この世界に居る間に、

ジュリエットをある程度、助ける事が出来る。


そんなこんなで……午前10時から開始された冒険者の基礎講義は面白かった。


内容は冒険者の心構えから始まり、ギルドの規約や魔物への簡単な対処等。


中二病の俺が、知っている事は勿論たくさんあったが、知らない事も若干あった。


という事で、俺は学ぶべきスキルもあったから、どんどん知識が吸収出来た。


後の生活でも、今回得た、この知識は役立つだろう。


片や、ジュリエットはといえば……ひどく退屈そうだった。


全く、興味ナッシングって感じ。


まあ、彼女にとって冒険者は、

所詮、勇者になる為のステップ&手段に過ぎないだろうからね。


講義の後、昼食をはさんで約1時間の小休止。


午後になって、戦いの基礎訓練。


これも大楽勝だった。


そして、いよいよクライマックス。


ランク認定試験の実技。


すなわち、ギルド所属の教官との模擬試合。

 

が、これもやはり、大が付く楽勝


だって、俺、相手が……止まってみえたもの。

止まっている相手を倒すなんて、本当に簡単でっす。


俺が戦った男性教官はランクAの猛者らしい。

でも、完全に子供扱い。


ジュリエットの相手は、同じくランクAの女性教官だが、やはり圧倒。


事前にやり過ぎないようにと、彼女には念を押していたので、

良い感じで、合格する事が出来たのである。


そんな俺とジュリエットの実力に、大いにびっくりしたのがギルド側。


即、サブマスターが駆けつけ、

最終的には、いきなりギルドマスターとの面談となった。


という事で俺達が、今居るのは、ギルドマスター専用応接室。


少し待たされたので、その間に別室において、内々の相談があったみたい。


その結果……


「協議した結果……特例で、おふたりにはランクAを与えます」


「あ、ありがとうございます!!」


おお、やったあ!!

冒険者ギルドのランクA!!


ランクB以上が、ランカーと呼ばれる一流冒険者。

更に上のランクAは、超一流冒険者である。


未登録から、いきなりランクA、これはヤバいくらい、凄いだろう!


俺は素直に喜んだが……

片や、ジュリエットは、大いに不満そうである。


「むう、ギルドマスターよ、今まではランクAが、ランク認定試験結果の最高だと聞いた」


「まあ、そうですが」


「だが、前例は前例。今回のランク認定試験で、私達はランクAの教官達を圧倒した。それゆえ、文句なく、レジェンドと称される最高峰、ランクSの実力がある!」


きっぱり言い放つジュリエット。

とんでもなく強い目力(めぢから)が、何とギルドマスターを圧倒する。


「う、うむ、まあ、そうだが……」


「では! 迷う事などない! 私達が前例となる! Sにしろ!」


「がばっ」と、思いっきり身を乗り出して迫るジュリエット。


うお! 凄い迫力だ。


ああ、百戦錬磨のギルドマスターが……思わず引いている。


ここで傍らのサブマスターが、耳打ちをする。


聞こえないように小さい声で話していたが……聴覚が常人の数十倍の俺には無駄。


ばっちり内容が聞こえた。


成る程、そう来たか……という、俺には納得の内容。


その内容とは……ギルドマスターが告げてくれる。


「では、とあるランクAの依頼を受けて頂き、見事クリアして下さい。それで、あなた方をランクSと認定しましょう」


おお! いきなりギルドからランクAの依頼。


それをクリアすれば、Sへ、ランクアップの確約付き。


ただ、このようなパターンだと、依頼が高難度なのは間違い無しだろう。


しかし、俺達ならば、多分イージーモード、問題はナッシング。


ランクSに王手! もしくはリーチ! という感じだ。


俺とジュリエットは顔を見合わせ、大きく頷いたのである。

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