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第208話「逞しき美少女」

すぐに! ……手放されていた俺の意識が戻った。

気が付いたら、俺は草原の中に通る、街道らしき場所に立っている。


燦々(さんさん)と太陽の光が降り注ぐ快晴の空の下、

北へ真っすぐに伸びる石畳。


目の前には……

ひとりの人間族の少女が「すっく!」と立っている。

背筋をピン!と伸ばして。


濃紺の、頑丈そうな革鎧を身に(まと)い、

真っ赤な鞘に納められた、ショートソードを提げていた。


ああ、成る程……

この子が、ヴァルヴァラ様の言っていた、俺の幼馴染み役の女の子か。


むむ、あのフレデリカを遥かに超える美少女だって?


…………う~ん、「そうだ」と言えばそうだし、「違う」と言えば違う。


何故なら、目の前の少女は、

可愛い妹タイプのフレデリカとは、全く違うタイプだから。


どちらが美人か? の判断はいわゆる『好み』って奴だろう。


ぱっと見、少女の年齢は20歳少し前……18歳くらいだろうか。


身長は、結構高い。

180㎝近くあり、今の俺とほぼ一緒。


体格はといえば、俺よりも鍛えている雰囲気であり、

二の腕なんか「むきっ」と逞しい。

それとは関係無いが、おっぱいも相当で、「どん!」と挑発的に突き出ていた。


ウェーブのかかった、ミディアムの豊かな金髪が風になびく。


抜けるような白い肌で、鼻筋が通った美しい顔立ち、

いわゆる、クールビューティーという雰囲気。


きりり! と引き締っている口元が凛々しい。


ダークブルーの、澄んだ瞳がじっと俺を見つめている。


以上を鑑みて、ひと言!


この子は、どこかの某有名漫画の主人公みたいな男装の麗人——そういうタイプ。


但し、俺は、こんなタイプも嫌いじゃない。


そんな感じで、じっくり観察していたら、彼女が口を開く。


「ふん! いい加減にしろ! 私を、いつまで、じろじろ見ているのだ」


「ああ、すみません、失礼しました」


「ふむ! 成る程! お前がケンか?」


「はい、ケンです」


「うむ! 戦女神(いくさめがみ)ヴァルヴァラ様に命じられ、私が勇者になる為、手助けをする役目を担い、送られて来た異世界の勇者だな?」


おお、滑舌(かつぜつ)がえらく良い。


歯切れが良く、朗々と響く台詞(セリフ)は、

女子が大好きな、某有名劇団の役者みたいな雰囲気。


そして声は、学園ドラマの「きりっ」とした、

委員長風かつ、爽やか系の声優みたいだ。


うん! やはり、コミックのヒロインキャラが、

そのまま現実世界へ現れたみたいな女子。


感動して、思わず噛んでしまう俺。


「そ、その通りだ」


『麗人』は、頭のてっぺんから、足のつま先まで俺を見た後、

納得したように頷く。


「ふむ……確かにヴァルヴァラ様から、お前を差し向けると、私へご神託があった。では、簡単な自己紹介をしたら、さっさと行くぞ! 悠長に話しているのは性に合わん」


おお、結構、せっかちなタイプなのか。


じゃあ、だるそうに生返事をしたり、だらだら、にやにや態度も嫌われる。

打てば響いての、てきぱき、即行動を心がけよう。


という事は、体育会系のノリでOKだな。


但し、幼馴染設定ならば、敬語は不要、フレンドリーに話す。


ならばと、俺は真面目な顔をして、しっかり挨拶。


「分かった! 改めて挨拶しよう。俺はケン・ユウキ、宜しくな」


「うむ、私はジュリエットだ。お前には期待しているからな、絶対に裏切るなよ」


ふ~ん、この子の名は、ジュリエットっていうんだ……


確かに美人だけど、何か、超が付くほど気が強そうな子だ。

もしかしたらクーガーに匹敵するかも。


「裏切るな」とは、期待だけじゃなく、

仲間としての信義を、という意味もあるのだろう。


俺は、ついスキルを発動し、ジュリエットのレベルを見た。


うん、この子は、昨夜のフレデリカと同じ50くらいか。

と、なれば結構な実力者だ。

 

大抵の魔物には負けない。

みなぎる自信も、そこから来るのだろう。


でも……今まで、どこで、どうやって、誰と修行したんだろうか?


ふと、そんな事を考えていたら、ジュリエットは俺に出発を促す。


「さあ、さっさと行くぞ。王都メディウムまでは、もうすぐだからな。何か、不明な点があったら、歩きながらの質問を許可する。但し、簡潔に願いたい」


「りょ、了解!」


こうして……俺は、麗人ジュリエットと共に、

王都メディウムへ赴く事となったのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


お言葉に甘え、道すがらジュリエットに聞いたところ……


今、俺達が居る場所はプリムヴェール王国王都メディウムまでは、

歩いて2時間くらいの場所だという。


最初はしかめっ面で、とっつきにくそうな雰囲気だと思ったジュリエット。


話して行くうちに、竹を割ったような、

さっぱりした性格だと分かり、結構打ち解けた。


さて、話題の中心は、やはりジュリエットが目指す誉れ高き勇者に関して。

彼女によれば、まずは王都の冒険者ギルドで、

ランクA以上の上位ランカーとなるのが目標だという。


そして、評判を聞きつけた王様から、呼び出されるというパターンを狙うらしい。


そんなジュリエットが実績を積む為の、幼馴染のサポート役がこの俺という設定。

 

よし! 了解!

ミッションは完全に理解致しました。


俺はジュリエット様の為に、全力を尽くしま~す。


なんて、思い切りふざけて言ったら、怖い目で睨まれた。

ちゃんと真面目にやれと。


話していて分かるが、やはりというか、

ジュリエットの基本的な性格はクーガーに酷似。


はっきり言えば、ウチの嫁たるクーガーを、

『究極の真面目キャラ』にしたらジュリエットになる。


普段クーガーと話している俺は、

ジュリエットと、上手く話すコツを分かっていたのだ。


話しているうちに思う。


表向きジュリエットは凄く美人で魅力的な少女なのだが、

あまり『女』を感じさせない。


女として見れないよ……なんて言えば確実に殺されるから言わないが……

さっぱりした同性の『親友』という感じだ。


良くいるでしょ、そんなタイプの女子。


ジュリエットの綺麗な顔と、迫力のあり過ぎる胸を見れば、

それは、やはり錯覚なのだと現実に引き戻されるが……


そんなこんなで、自分の事をいろいろ話してくれたジュリエットではあったが、

彼女自身の出自に関してだけは、決して教えてくれなかった。


まあ、あまりしつこく聞くと怒りそうなので、俺も深追いはしない。


でもさ、ズルイぞ。

何故ならば、逆に、俺の家族構成や現在の暮らし振りを、

ジュリエットは、根掘り葉掘り聞いて来たモノ。


特にクッカとの事を、念入りに念入りに聞かれた


……不思議な事に、何となく羨ましそうだ。

……まあ、良いけどさ。


と、その時。

俺の索敵に反応があった!


距離はこの先、約1㎞。

荒々しい気配が伝わって来る。


魔物が数十体、正体は、すぐに確認出来た。


これは……結構なオークの群れだ、50体ほど居る。


片や、襲われているのは、騎馬と馬車が含まれた十数名の集団。


ああ、これは……そうか!


間違いない!

どこかの商人達か、旅人達が、奴等に襲われているのだ。


「おい! ジュリエット! 行くぞ!」


俺が声を掛けたら、ジュリエットも『敵』を察知していたみたい。


爽やか笑顔で返して来る。


「おう! ケン! 早速、私の勇者としての初仕事だな」


俺とジュリエットは、顔を見合わせ頷くと、街道を全速で走り出したのである。

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