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第205話「お兄ちゃわんが世界最強!」

こうして……


アールヴの村を襲っていた、オーガの群れ300体超は、俺の無双で全滅した。


まさに絶体絶命、壊滅の危機が去った村民達があげる大歓声の中、

俺は「すいっ!」と飛翔し、フレデリカの(もと)へ戻った。


「やったぁ!! やったぁ!! お兄ちゃわん!! やった~ぁ!!!」


空中で、万歳三唱!

村民達に劣らず、大歓声をあげるフレデリカ。


俺が近付くと、猛スピードで飛んで来て抱き付いた。

そしてお約束、俺の顔中へ、祝福のキスの嵐。


「おいおいおい」


「うふっ♡ フレッカのお兄ちゃわんは強い!! 世界最強!!」


おお、褒められたぞ。


何度も言うが、この子はホント可愛い。


ボヌール村嫁ズの中には居ない、完璧ともいえる甘えん坊な妹タイプだ。


「おう、フレッカ、俺の戦い方は役に立ったか?」


「うんっ! 魔境の件も含めて、私は全然、まだまだだって分かったよ!」


「おお、そうか? 謙虚なのは大事だぞ。いかに強くても、誇らず驕らず、控えめにだ」


「了解! もう威張ったりしない!」


そう言い切ったフレデリカ。

もう、父への、あの傲岸不遜な態度も、改めてくれるであろう。


俺は更にフレデリカへ、訓話を続ける。


「おお、そうか! 武技だけではなく、魔法も体力が必要だ。だから心身とも、鍛錬を欠かすなよ」


「分かった! メンタルも、スタミナを含めた身体能力も、両方を鍛えるんだね」


「そうだ。身体能力は、身体強化魔法の上達と肉体的な鍛錬の両輪で行くんだ! 剣技と天界拳、それらに伴う体術は、お前の、おじいさんに習えばいい!」


俺はそう言い切ると、軽く息を吐き、更に話を続ける。


「そして魔法は、出来る限り、無詠唱の発動を目指しつつ、発動の円滑さ、そして行使の際の制御(コントロール)、計3つにこだわれ。そして何度も行使出来るよう、体内魔力量も、更に更に増やすんだ」


俺は、一気に告げる形で、アドバイスした。


時間が無いという切迫感からなのか、何故なのか、

そうしなければ、いけない! という気持ちが、ひどく強かったのだ。


対して、フレデリカも嬉しそうに、俺のアドバイスを聞いている。


「もろもろ、了解! 私、身体強化魔法を極め、身体も徹底的に鍛える! そして魔法、そして剣技に体術、天界拳だっけ! 含めて、ぜ~んぶぅ! 一生懸命修行する! だからぁ、これから、もっともっと教えてね、お兄ちゃわ~ん♡」


甘えて、鼻すりすりのフレデリカ。


でも、やる気も満々。

放つ波動で分かる。


俺の勘だが、この子は素晴らしい素質がある。


怖がりも徐々に直るだろうし、

このまま頑張って行けば、祖父に匹敵する才能が、開花するだろう。


時間さえ許すならば、俺も教えられる事はたくさん教えてやろう……


そう俺が思った時。


いきなり! 何もない空中に、ひとりのアールヴが現れた。


俺の索敵も、全然、役に立たなかった。


となれば、こんな事が可能なアールヴ族は、ただひとりしか居ない。


「ふむ、ふたりともご苦労だった」


宙に浮きながら、にこにこ笑う老齢のアールヴは……


やっぱり、エルネスティ・ラハナスト

フレデリカの祖父で現ソウェル。

7千年もの長き時を生き抜いた、存在イコール、アールヴの伝説。


多分……


転移&飛翔&気配察知無効云々……

様々な魔法やスキルを、全部一度に発動しているのだろう。


それも余裕しゃくしゃくで。


こんな人物に出会うと、

俺のレベル99&オールスキルなんて、まだまだだと思うし、

世界は、本当に広い! と感じてしまうのだ。


敬愛する祖父が来たと知って、びっくりしたフレデリカ。


その後、嬉しそうな顔、そして、気まずそうな顔にどんどん変わる。


俺には、フレデリカの気持ちが分かる。


笑顔の祖父に褒めて貰いたいのはやまやまなのだが……心配するのも無理はない。


俺が、「大丈夫だ」とは言ったが、祖父から受けた「魔境に行け」という命令を、

無視してしまったと思い込んでいるのだ。


ここは、俺が責任を持つと言って魔境を出た手前、

絶対にフォローしなければならない。


「あ、あの実は……」


頭を掻いた俺が言いかけたその時、またもエルネスティが口を開く。


「ははははは、ふたりとも、本当に良くやったぞ!」


「え? お祖父様、褒めてくださるの?」


恐る恐る聞くフレデリカ。


対して、エルネスティは、きょとんとしている。


「む、どうした?」


「い、いえ、あ、あのフレッカ達……勝手に、魔境を出ちゃったから」


恐る恐るフレデリカが言えば……エルネスティは面白そうに笑う。


「ははははは! フレデリカよ、何を言っておる」


「え? お祖父様……」


「いやいや、大丈夫だ。お前の事は、ケン様にお任せするつもりだったし、今回は、賢明なご判断とご指導をして頂いたよ」


「え? で、では!」


「うむ! どうやらお前は、(ことわり)から来る恐怖を克服したようだ」


「は、はい! ケン様にもそう言われました!」


「うむ! そして、今の戦いは、お前自身が行ったものではないが、召喚したケン様のお力で、よくぞ村を救った。よって今回のオーガ退治、特別にAの評価を付けてやろう」


「Aの評価!? ほ、本当!? お祖父様」


「ああ、本当だ。あの村民達の嬉しそうな顔を見よ。まあ少し、フレデリカ、いや、フレッカへは身びいき過ぎるかもしれんがな。ははははは」


「やったぁ!」


ああ、良かったぁ。

やっぱり俺の判断は間違っていなかった。


それどころか、フレデリカは充分に評価をして貰ったみたい。

ホッとしたその瞬間、今度は俺の心へ聞き覚えのある声が聞こえて来た。


その声は……俺をこの世界へ送った、女神マトレーナ様、の声である。


『ケン、良くやったぞ! では、仕上げだ、お前の持つその黄金の神剣を、褒美としてフレデリカへ渡すが良い。私からの神託と告げてな』


『は、はい』


む、仕上げ?


これって……何?

何か、とんでもない事が起こる予感がする。


「なあ、フレッカ、ちょっと……」


「何? お兄ちゃわん」


「この神剣を、褒美としてお前に渡すようにって……マトレーナ様からのご神託だ」


「え!? マトレーナ様が!? 貰って良いの? この黄金製の神剣を? 私が?」


フレデリカが、俺から黄金の神剣を受け取った瞬間。


ぴいいいいいいいん!!!


辺りに、何か鋭い金属音的な音がした。


何だろう?と、見れば俺の身体が輝き始めていた。


眩い白光が身体を徐々に包み込んで行き、その輝きをどんどん増している。


あ、ああ、これは……

話の流れからして……俺が……

女神様から与えられた使命を果たした(あかし)じゃないのか?


やるべき事を終えた俺は、遂に、この世界を去る時が来たのだ。


そんな事を考えていたら、またもマトレーナ様の声が響く。


『ああ、お前の考えている通りだ、ケン』


『マトレーナ様』


『ふむ、よくぞ、我が使命を果たした。今渡した黄金剣は、お前の伝説と共に、長きにわたりアールヴ族に伝えられるだろう。そしてお前を遣わした感謝の念が、私に対する信仰心を上げるのだ』


『成る程、そうですか……』


『何だ、浮かない顔をするな。これでクッカを始めとした、大勢の家族の下へ帰れるのだぞ』


『…………』


『ちなみに、あの神剣は強力だが、とりあえず縛りを設け、フレデリカ以外は使えない、安心しろ』


『はぁ……』


生返事をした俺であったが、

こうなったら、フレデリカへは、しっかり別れを告げねばならない。


ふと、エルネスティの視線を感じたので見ると、

何も言わず、俺に対して深くお辞儀をしている。


どうやら「俺が、この世界から去る」と、察しているようだ。


しかし、フレデリカは、そうはいかない。

 

俺の身に起こっている、『何か尋常ではない様子』を感じ取り、

半狂乱になっていたのである。

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