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第203話「授業再開」

俺とフレデリカは今、広大な大空を飛んでいる。

飛翔魔法を使って、ゆうゆうと。

高さは、ざっと、地上から300m強ってとこだ。


フレデリカの両腕は「しっかり」俺の背中に回されていた。

当然、俺も「がっつり」フレデリカを抱きかかえている。


魔境から、ず~っと続く真っ蒼な大空。

純白の千切れ雲が、あちこちに浮かんでいる。


ふたりの眼下には、濃い緑一面の針葉樹の森が広がる。


そう思ったら森がなくなり、萌黄色の大草原が開ける。


ペン圧が強い人が描いたような、太い線のように流れている川も見える。


川の先には、濃蒼色の湖が横たわっていた。


物凄い速度で飛ぶ俺とフレデリカが見ている、様々な景色が目に入っては、

あっという間に、後方へ飛び去って行く。


その繰り返し。


時間は……少し(さかのぼ)る。


魔境から、帰還方法を、

アールヴの国イエーラへどうやって移動しようかと、

俺は、フレデリカと相談した。


移動手段は、転移門を使用した転移魔法が無難。

そう、来る時に、使った方法だ。

時間的な縛りがかけられており、後、数十分で再使用出来る仕組みである。


しかし、フレデリカが、それでは味気ないと拒否。


仕方なく、俺が行使する転移魔法、もしくは、飛翔魔法を提案した。


これ、一長一短がある。

 

転移魔法ならば、あっという間に戻れる。

だが、俺はこの世界で行使経験に浅く、制御(コントロール)に不安があった。


下手をすれば、まったく未知の場所に出てしまう可能性がある。

つまり慣れていないって事。


一方、飛翔魔法は、時間が結構かかるのが難点。

しかし真っすぐ、南へ向かえば、確実にイエーラには着く。


つまり、超特急と快速くらいの比較って、言えば分かりやすいか。


どうするのか、尋ねたら、フレデリカは即答。


そして、可愛いおねだりも。


「私、断然、飛翔魔法! だって! お兄ちゃわんと大空を飛びたいもの」


「そ、そうか?」


「うんっ、それと、もうひとつ、お願いっ!」


「何? もうひとつ?」


「うん! 私、まだ上手く飛べないし、速くも飛べない。だから……お兄ちゃわんがしっかりと、抱えて飛んでくれる?」


「お、おお、まあ、構わないけど……」


というわけで、俺とフレデリカは抱き合い、身体をぴったり密着させ、

大空を飛んでいるのだ。


俺は、飛びながら苦笑する。


さっきのフレデリカの話は多分……


「フレッカ、お前って、本当は飛翔魔法、得意だろう?」


「うん、得意!」


「こいつぅ、しれっと言うな」


「えへ、御免! でもお兄ちゃわんと、こうやって飛びたかったから」


ぺろっと舌を出すフレデリカ。


うん、大丈夫、許す!

美少女は悪意のない可愛い嘘など、簡単に許されるのだ。


「OK! 問題無し」


「うふふ、ちゅっ♡」


フレッカめ、すぐキスしたがる。

おい、お前はキス魔か? 超甘えん坊め。


でも、可愛いな……この子は。


俺の嫁ズには、居ないタイプ。

リゼットを遥かに超えた、完璧な妹キャラだ。


そうこうしているうちに、猛スピードで飛んだ俺達は、

イエーラの上空へと、入ったのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


そんなこんなで、俺達はフレデリカの家がある、

イエーラの都を目指して飛んでいたが……


ふと、眼下の大地で何か異変を感じた。


幸い、俺の目はスキルによって、地上の細かな部分まで捉えられる。


という事で、目を凝らすと、小さな村があった。


丸太を組んだ簡素な柵により、何とか守られている村。

どことなく、我がボヌール村に似ている……


この村の正門は板張りの粗末なものであるのだが……

今にも破られようとしているのだ。


凶暴な魔物の群れによって。


再度、目を凝らすと魔物が何か分かった!


むう! おなじみのオーガだ!


そもそも、オーガが捕食するのは人間族だけではない。


アールヴ族も含め、エサだと見れば何でも喰らう、

おぞましい魔物であり、その大群だ!


先ほど魔境で、俺達を囲んだ奴等よりも、断然多い。


軽く、3倍の300体以上は居る!


破られまいと、門を支えているのは、ほんの僅かなアールヴの戦士達である。

急がないと、彼等戦士は……いや、村民が全滅だ。


「緊急事態だ! フレッカ! あの村を救うぞっ!」


「はいっ! お兄ちゃわん!」


ここからは、俺の授業、第2時限目の開始。


そう、次のテーマは、クッカ直伝、

究極たる魔法剣士の戦い方を、フレデリカへ教授するのだ。


『良いか、フレッカ、ここからは念話で行く。お前に戦い方を教えるが、最初に言った通り、見て盗め。俺がこれから行う実戦でな』


『はいっ!』


『お前は、このまま空で待機しろ。周囲に注意しながら、防御に徹し、上空から見守ってくれ。俺が、単独で戦う! 戦い方は通常以外に、至近距離での属性攻撃魔法の連発を入れる』


『至近距離で!? 属性攻撃魔法の連発!?』


『ああ、そうだフレッカ。俺は遠近の魔法、剣技に加え、天界拳を使える』


『天界拳?』


『ああ、全知全能たる創世神様の教える拳法だ。先ほど、古代竜を拳一発で気絶させたのも天界拳だ』


『え、えええ!!?? あ、あのパンチが!!??』


『ああ、もしかしたら、お前のおじいちゃんが、知っているかもしれない』


『分かった! 天界拳、今度聞いてみるよ!』


『だな! 天界拳は、お前が武器を持たない素手の際、護身術には最適だし、強くなる為には、習得しておくのが、お薦めだ。俺がこの世界から去ったら、習えよ』


『え? さ、去るって!? な、何!? お、お兄ちゃわん!!』


『落ち着け! フレッカ! 時間が無いから、話を続けるぞ! 遠近両方の神速魔法、剣聖の剣技、そして無敵の天界拳、この3つを組み合わせての無双スタイル。これこそが、俺の認める「完璧な魔法剣士の戦い方」なんだ』


これって、ほぼクッカの受け売りだが、構わないだろう。


そもそも、魔法剣士は魔法剣を携えて戦う。


剣の刀身に属性魔法を付呪(エンチャント)し、

どのような相手とも戦える万能の戦士なのだ。


フレデリカは、まさにそれ。


愛用のミスリル剣に、行使可能な3種類の属性魔法を宿し、戦う。


但し、これは近接戦限定。


もうひとつの武器である、攻撃魔法は、逆に遠距離攻撃のみ。


そう、フレデリカが遠距離攻撃魔法のみ行使するのは理由がある。


通常の術者の場合、魔法発動には少々の時間がかかる。


まず言霊の詠唱を開始し、詠唱が完了。

そこから魔法が放たれるまで若干のタイムラグが生じるのだ。


更に高難度な魔法には、予備動作も加わるから、尚更、時間がかかる。


敵からしてみたら、隙だらけで、絶好の攻撃チャンスである。

見逃すはずがない。


だから、フレデリカは近距離で攻撃魔法を使わないのだ。


しかし俺は、剣技&格闘技を自在に使いつつ、無詠唱、神速で魔法を行使可能。

加えて魔法は、連発出来るから、ノープロブレム。


当然、近接戦も遠距離戦も、どちらもOK。


そんな超が付く万能戦士で無敵キャラの俺は、

愛する嫁クッカの指導により、生まれた。


だから今度は俺が、愛弟子となったフレデリカを、育てる番である。


『完璧な魔法剣士!!』


『ああ、フレッカ、見ていてくれ。これから俺は、火と風の魔法を果断なく連発し、剣技と天界拳を組み合わせて戦う』


『りょ、了解! フレッカ、お兄ちゃわんの戦いを、しっかりとこの目に焼き付けます!』


『ああ、目だけではなく、心へも、しっかり刻んでおけよ!』


『はいっ! (おぼ)えておきますっ!』


オーガの大群が居る上空約50m……フレデリカは自ら飛翔魔法を発動する。


小柄な身体が俺から離れ、ふわっと宙に浮く。 


俺はフレデリカへ手を振ると、回り込み、

オーガどもの背面へ降りて行ったのである。

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