表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
200/294

第200話「魔境」

俺の居る異世界同様、……この世界にも存在する、遥か北方にある魔境。


以前、魔王の記憶を持つクーガーに、俺は聞いた事がある。


一体、魔境とはどんな場所なのかと。


果たして彼女の答えは……

「この魔境こそが、全ての始まりの地である」というものだった。


全ての始まりの地とは、何ぞや?


更に詳しくと、聞いたら、

「かつて(いにしえ)には、創世神様の使徒が降臨し、精霊が集いし地」

だと教えてくれた。


更にクーガーは丁寧に、分かりやすく説明してくれた。


……すなわち、魔境とは『原初の地』なのだそうだ。

もしかしたら、かの有名なエデンも、この地に存在していたのかもしれないと。


ちなみに……現在の魔境は、神の使徒と精霊は既に去り、

代わりに魔族、魔物、魔獣等々が跋扈(ばっこ)している、

混沌(カオス)の地だという。


さて、話を戻そう。


フレデリカの住んでいるラハナスト家の屋敷には、

俺が呼び出された召喚の間と、同じように専用の転移の間がある。


そこから、俺とフレデリカは魔境へと転送された。

彼女へ与えられた『ランクSに匹敵する試練』を乗り越える為に。


転送された先の到着地点は、魔法の障壁で守られたロッジタイプの小屋であった。


到着して3時間以上経たないと、転移門は、再び使用する事が出来ない決まり。


どうしても帰還する時は、自らの転移魔法等々で戻らなければならない。


転送された瞬間、俺は感じた。

小屋……ロッジの外は取り囲む『敵』の気配で一杯だと。

いわゆる魔物の気配で、ビンビン伝わって来る。


しかし、今回の俺は本当に幸運(ラッキー)


何故ならば、少し前に、あちらの世界で魔境に行ったから勝手は分かっている。


来て感じたが、魔境で感じる雰囲気、気配は、あちらの世界とほぼ一緒だ。


時間軸の違う世界だけど、さして違いはない筈。


「ケ、ケン様!」


む、フレデリカが怯えている。


俺にしがみつき、「ぴったり」くっついて離れない。


何か、魔境で辛い経験でもしたのだろうか?

いつもは超が付く、強気で元気な美少女の筈なのに。


「おいおい、フレッカ、どうした?」


「こ、怖い……外の気配が、迫って来る圧が凄い、凄すぎる……そしてまた来るわ、あいつが」


フレデリカが窓から外を見ているので、俺も見る。


すると……このロッジを取り囲むオーガの群れ。


大群といって良いかもしれない。

軽~く100体近くは居る!

 

ふうむ……そうか。


このロッジは、転送されたアールヴ族が、たまに現れるとオーガは知っている。


奴等はここが、自分達の『餌場』だと認識して待ち受けているのだ。


あと……また来るって、何がだ?


「そうか、でも、とりあえずは、ここに居れば大丈夫そうだぞ。俺にも分かる、強力な魔法障壁が張られているから」


「ええ、最低限の安全だけは確保されているの」


そう、俺は感じる。


この魔法障壁の波動。


フレデリカの祖父たるソウェル、エルネスティ・ラハナストが作った魔法障壁だ。

ならば、とりあえずは安心出来る。


「…………」


恐怖で身体が強張り、黙り込んだフレデリカへ、俺は努めて明るく言う。


「フレッカ、丁度良い、これからの打合せをしよう」


「え? う、打合せ?」


「ああ、そうさ。俺には……いや、俺とフレッカには、あまり時間が無いからな」


「ケン様と私には、あまり時間が無い……う、ううう……」


「おいおい、少しは落ち着け、フレッカ、大丈夫さ」


「う、うん……」


「そうだ! また念話で話そう。その方が早い」


小さく「こくり」と頷いたフレデリカ。


ここで会話は、念話へと切り替わり。


『俺が、お前に教えられる事は何かと考えたんだ。確か、お前は魔法剣士だよな?』


『そ、そうです』


『昨夜、話したけれど、念の為に確認だ。フレッカは、遠距離攻撃魔法及び、剣に属性魔法を付呪(エンチャント)させて戦うタイプなんだな』


『は、はい、そう……です』


更に詳しく聞けば、フレデリカは火・風・水という3つの属性魔法を使いこなす

複数属性魔法使用者(マルチプル)の魔法剣士。


そうか、 素晴らしい才能の持ち主だ。

ならば、彼女の祖父と父が、ソウェル後継者候補にするのも納得。


『で、相手の弱点を見極めながら、違う属性で戦い分ける。その認識で構わないな?』


『そうです』


『ならば、俺が、お前を想定した上で、今まで経験した戦い方をこの魔境で行う。まずは、しっかりと見ていてくれ』


『え? 見るのですか? ただ見ろと……』


『そうだ。時間の関係上、お前に手取り足取りは教えていられない。だから、俺の戦い方をしっかりと見て、学ぶ以上に盗むんだ。そして、全てではなくとも、全く構わない。自分のスタイルに合うとか、上手く加えられると思ったら、取り入れてくれ』


『…………』


『随時、教えて欲しいモノを申告してくれれば、出来る限り手解きしよう』


『あ、ありがとうございます』


念話で話してみて分かった。


フレデリカの記憶が見えたのだ。

 

詳しい話はして貰えなかったが、フレデリカがオーガ数体を倒したのは……

周囲が『おぜん立て』してくれた状況の中である。


そして、こんなにも怯えているのは……


以前、祖父エルネスティとふたりきりでこの魔境へ来た時に、

古代竜(エンシェントドラゴン)が、そのオーガを、

あっさりと簡単に捕らえて喰った。


それをストレートに、目の当たりにしたからだと分かった。

 

成る程、と思い、俺は考える。


お嬢様の、この子は箱入りで、とても大事に育てられ、

今まで、常に大勢の配下達に守られていた。


だから、祖父エルネスティはフレデリカへ、自立を自覚させる為、

とんでもない試練を与えた。

 

自分は、この小屋で待機して……


魔法障壁に守られているとはいえ、

凄く間近な距離で、フレデリカがたったひとりきりで……

竜が、オーガを餌として捕食する様子を見せたのだ。


その時、受けたショックが、フレデリカにはトラウマとなってしまっている。


成る程ね。


話は大体分かった。


でも、フレデリカの奴、完全に委縮してしまっている。


だから、少しでも雰囲気を変えよう。


『お~い、フレッカ。お前って何かさ、俺に対する態度っていうか、雰囲気が、えらく変わったぞ』


わざとおどけた言い方で、俺が尋ねると、


『だ、だって! ケン様が、本当に尊敬出来る、凄い方だって、分かったから……』


先ほど、俺が悪魔や竜を倒した事を言っているのだろう。


フレデリカは俺を上目遣いで見た。


金髪で長髪。

深みのある菫色の瞳を持つ、端麗な憂い顔。


やっぱ可愛いな、コイツ。


俺は優しく頭を撫でてやる。


『良いよ、ケン様なんて呼ぶな。俺は、お前のお兄ちゃわんだろう?』


本来は、王族、貴族女子の頭を、軽々しく撫でるなんて、許されない行為だろう。


しかし、この場合は特別。

俺に頭を撫でられたフレデリカは、だいぶリラックスしたようだ。


『ううう、お兄ちゃわん、じゃ、じゃあ! ひとつ、お願いしても……良い?』


『ああ、お兄ちゃわんが……ホントはしたら駄目な事か?』


『うんっ! それ! キスして♡』


フレデリカが返事をした瞬間。

俺は「ぐいっ」と彼女を抱き寄せ、熱いキスをしていたのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


俺がキスをして、しばしフレデリカと抱き合った後……


1㎞ほど先からとんでもなく大きな気配が近寄って来る。


ああ、これは分かる。

何故なら、戦った事があるから。

コイツはハイドラゴン……で、古代竜(エンシェントドラゴン)だと。


そうか! 分かったぞ。


俺とフレデリカの気配を餌と認識し、オーガの大群が集まって来た。

更にそのオーガを喰らいに、竜が来るんだ。


フレデリカは以前も、ほぼ同じ体験をした。

この魔境で竜の捕食を目撃し、精神的なトラウマになってしまった。


ランクSクリア云々ではなく、

エルネスティは、愛する孫娘に『本当の試練』を乗り越えさせたいのだ。


凄い課題と言うのは『それ』だったんだ。


自分の跡を継ぐべく、

『冷静沈着さと豪胆さを兼ね備える』立派なソウェルになって貰う為に……


ならば、俺はその思いに応えよう。


『おい、フレッカ、大型の竜が来たぞ』


フレデリカは索敵というか気配読みは出来るが、俺ほどの能力はない。


来襲するであろう、竜をまだ、キャッチしていないようだ。


『え!? えええっ!? 竜!? ま、まさか、あいつが!? またぁ!?』


『ああ、お前はここに居ろ。そこの窓から、見えるだろう?』


『え? な、何?』


『俺が、お前の悩みを、きれいさっぱりと払しょくしてやる、しっかり見るんだ』


そう告げて、俺は腰から提げた剣を軽く叩くと、小屋の扉を開けたのである。

いつもご愛読頂きありがとうございます。


※当作品は皆様のご愛読と応援をモチベーションとして執筆しております。

宜しければ、下方にあるブックマーク及び、

☆☆☆☆☆による応援をお願い致します。


東導号の各作品を宜しくお願い致します。


⛤『魔法女子学園の助っ人教師』

◎小説書籍版既刊第1巻~8巻大好評発売中!

《紙版、電子版、ご注意!第8巻のみ電子書籍専売です》

(ホビージャパン様HJノベルス)

※第1巻から8巻の一気読みはいかがでしょうか。


◎コミカライズ版コミックス

(スクウェア・エニックス様Gファンタジーコミックス)

既刊第1巻~5巻大好評発売中!

《紙版、電子版》

何卒宜しくお願い致します。

コミックスの第1巻、第3巻、第4巻は重版しました!

皆様のおかげです。ありがとうございます。

今後とも宜しくお願い致します。


また「Gファンタジー」公式HP内には特設サイトもあります。

コミカライズ版第1話の試し読みも出来ます。


WEB版、小説書籍版と共に、存分に『魔法女子』の世界をお楽しみくださいませ。


マンガアプリ「マンガUP!」様でもコミカライズ版が購読可能です。

お持ちのスマホでお気軽に読めますのでいかがでしょう。


最後に、


⛤『外れスキルの屑と言われ追放された最底辺の俺が大逆襲のリスタート! 最強賢者への道を歩み出す!「頼む、戻ってくれ」と言われても、もう遅い!』《連載中》


⛤『冒険者クラン新人選択希望会議でドラフト1位指名された無名最底辺の俺が、最強への道を歩みだす話!』《完結済み》


⛤『頑張ったら報われなきゃ!好条件提示!超ダークサイドな地獄パワハラ商会から、やりがいのあ

る王国職員へスカウトされた、いずれ最強となる賢者のお話』《完結》

⛤『異世界ゲームへモブ転生! 俺の中身が、育てあげた主人公の初期設定だった件!』《完結》

も何卒宜しくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ